831 / 1,014
狡い女
3
しおりを挟む
熱く湯を張ったバスタブの上からシャワーを流す。膝を抱えて座り、頭で水圧を受け止めると、目の前に水のカーテンが落ちていく様が見えた。
大和を愛せないと拒絶する一方で、夫婦であることを必死に守ろうとしている。
それは......
世間体のため?
両親のため?
財閥のため?
それとも、大和に縋られることで、自分の存在意義を見出せるから?
大和を傷つけたくないから、なんて綺麗事。
---結局私は......どちらも手放したくないんだ。
大和を『夫』にもつ安心感も。
秀一さんから与えられる愛欲も。
どちらも欲しい。
だから、どちらの心も縛っているんだ。
狡い、女......
そう......狡猾で残酷な女だ、私は。
この恋に、決着はつくのかな......
背中越しに聞いた秀一の言葉が耳に余韻を残して響いた。
『美姫が全てを捨てる覚悟をし、私を心から欲した時、
私は貴女を迎え入れましょう」
全てを捨てることなんて、出来ない。
出来るはず、ないよ......
たとえ、秀一さんを心から欲し、迎え入れて欲しいと思っていても。
膝を抱えて背を丸めた。
ザァーッと落ちてくるシャワーの水流は、雨に打たれているかのようだった。
大和を愛せないと拒絶する一方で、夫婦であることを必死に守ろうとしている。
それは......
世間体のため?
両親のため?
財閥のため?
それとも、大和に縋られることで、自分の存在意義を見出せるから?
大和を傷つけたくないから、なんて綺麗事。
---結局私は......どちらも手放したくないんだ。
大和を『夫』にもつ安心感も。
秀一さんから与えられる愛欲も。
どちらも欲しい。
だから、どちらの心も縛っているんだ。
狡い、女......
そう......狡猾で残酷な女だ、私は。
この恋に、決着はつくのかな......
背中越しに聞いた秀一の言葉が耳に余韻を残して響いた。
『美姫が全てを捨てる覚悟をし、私を心から欲した時、
私は貴女を迎え入れましょう」
全てを捨てることなんて、出来ない。
出来るはず、ないよ......
たとえ、秀一さんを心から欲し、迎え入れて欲しいと思っていても。
膝を抱えて背を丸めた。
ザァーッと落ちてくるシャワーの水流は、雨に打たれているかのようだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
329
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる