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After Story2 ー夢のようなプロポーズー
祝福の旋律ー10
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最後に、薫子と悠を見送る。
「ウィーンには、どのぐらい滞在できるの?
せっかく来てるんだし、みんなに案内したいところがたくさんあるの。家にも招待したいし」
美姫の申し出に、悠は申し訳なさそうに眉を下げた。
「俺たちもゆっくりしたかったんだけど、この後商談でロンドンに飛ばなくちゃいけないんだ。
でも夏休みになったら、家族でこっちに遊びに来るつもりでいるから」
「そっか……今回は残念だけど、また夏に会えるのを楽しみにしてるね。しーちゃんとかーくんが楽しめそうな場所も、調べてみるよ」
薫子が笑顔で頷いた。
「うん、楽しみにしてるね」
詩織はじーっと秀一を見つめた後、ボソッと呟いた。
「ピアノ、聴きたかったな……」
薫子が腰を屈め、詩織の高さに視線を合わせた。
「さっき、秀一さんが弾いて下さったでしょう?」
秀一は詩織の目の前に座り、頬に手を寄せた。
「詩織さんの好きな曲を弾いて差し上げる約束でしたね。
何が、いいですか」
詩織はパッと顔を上げ、目をキラキラさせた。美姫は、こんな表情は幼児の時そのままだな、と温かい気持ちになった。
「ディズニープリンセスの歌がいい!」
「ディズニープリンセス、ですか……分かりました」
え……ディズニープリンセスの曲なんて、秀一さん弾けるの?
美姫は不安になったものの、秀一に動揺は見られない。落ち着いた様子でピアノの前に座り、すっと姿勢を正した。
細く長い指先が、白い鍵盤に触れる。
ピアノの音が響いた途端、詩織が興奮で声を大きくした。
「わぁー、アラジンだ!」
美姫もまた、詩織と同じように興奮で胸を膨らませた。
凄い!秀一さん、こんな曲も弾けるんだ。
オリジナルの曲に秀一独自のアレンジが加わり、よりドラマティックな曲になっていた。
演奏が終わり、詩織は手が赤くなるんじゃないかと心配になるぐらい大きな拍手をした。
「すごーい、上手!」
「フフッ、ありがとうございます」
秀一はピアノから立ち上がり、丁寧にお辞儀した。
美姫の元へと戻った秀一に、美姫は小声で話しかけた。
「秀一さんがアラジンの曲を弾けるなんて、思いませんでした」
「えぇ、私もです」
秀一の言葉に、「ぇ……?」と美姫は小首を傾げた。
「昔、美姫と見たディズニー映画の曲がこんな感じだったなと思いまして。
あやふやな部分は即興で誤魔化しました」
そ、そうだったんだ……
そんな遠い昔の記憶から辿って、ここまで弾けちゃうなんて、やっぱり秀一さんって凄い……
美姫は脱帽した。
ここに来た時は固かった詩織の表情はすっかり解れて柔らかくなり、笑顔で手を振るまでになっていた。
「じゃあねー、バイバイ!」
美姫と秀一も笑顔を浮かべ、可愛い天使に手を振り返した。
薫子は一瞬チラッと秀一を見上げてから、緊張した面持ちで美姫の顔を見つめた。
「あのね、美姫……」
すると、悠斗が薫子のドレスの裾を引っ張った。
「ママー、おしっこ……」
「えっ、おしっこ?」
薫子が悠斗を連れ行こうとすると、悠がそれを制した。
「大丈夫。俺が連れて行くから……ほら悠斗、行くよ」
詩織も声を上げる。
「パパー、私も一緒に行く!」
悠は扉を開くと、手洗いの場所を探して左右を見た。
「私が案内しましょう」
「ありがとうございます」
秀一の申し出に悠が頭を下げ、子供を連れて立ち去った。
薫子の雰囲気から秀一が気を利かせて出て行ったのだろうと感じ、美姫は秀一に対して申し訳なく思った。
「ウィーンには、どのぐらい滞在できるの?
せっかく来てるんだし、みんなに案内したいところがたくさんあるの。家にも招待したいし」
美姫の申し出に、悠は申し訳なさそうに眉を下げた。
「俺たちもゆっくりしたかったんだけど、この後商談でロンドンに飛ばなくちゃいけないんだ。
でも夏休みになったら、家族でこっちに遊びに来るつもりでいるから」
「そっか……今回は残念だけど、また夏に会えるのを楽しみにしてるね。しーちゃんとかーくんが楽しめそうな場所も、調べてみるよ」
薫子が笑顔で頷いた。
「うん、楽しみにしてるね」
詩織はじーっと秀一を見つめた後、ボソッと呟いた。
「ピアノ、聴きたかったな……」
薫子が腰を屈め、詩織の高さに視線を合わせた。
「さっき、秀一さんが弾いて下さったでしょう?」
秀一は詩織の目の前に座り、頬に手を寄せた。
「詩織さんの好きな曲を弾いて差し上げる約束でしたね。
何が、いいですか」
詩織はパッと顔を上げ、目をキラキラさせた。美姫は、こんな表情は幼児の時そのままだな、と温かい気持ちになった。
「ディズニープリンセスの歌がいい!」
「ディズニープリンセス、ですか……分かりました」
え……ディズニープリンセスの曲なんて、秀一さん弾けるの?
美姫は不安になったものの、秀一に動揺は見られない。落ち着いた様子でピアノの前に座り、すっと姿勢を正した。
細く長い指先が、白い鍵盤に触れる。
ピアノの音が響いた途端、詩織が興奮で声を大きくした。
「わぁー、アラジンだ!」
美姫もまた、詩織と同じように興奮で胸を膨らませた。
凄い!秀一さん、こんな曲も弾けるんだ。
オリジナルの曲に秀一独自のアレンジが加わり、よりドラマティックな曲になっていた。
演奏が終わり、詩織は手が赤くなるんじゃないかと心配になるぐらい大きな拍手をした。
「すごーい、上手!」
「フフッ、ありがとうございます」
秀一はピアノから立ち上がり、丁寧にお辞儀した。
美姫の元へと戻った秀一に、美姫は小声で話しかけた。
「秀一さんがアラジンの曲を弾けるなんて、思いませんでした」
「えぇ、私もです」
秀一の言葉に、「ぇ……?」と美姫は小首を傾げた。
「昔、美姫と見たディズニー映画の曲がこんな感じだったなと思いまして。
あやふやな部分は即興で誤魔化しました」
そ、そうだったんだ……
そんな遠い昔の記憶から辿って、ここまで弾けちゃうなんて、やっぱり秀一さんって凄い……
美姫は脱帽した。
ここに来た時は固かった詩織の表情はすっかり解れて柔らかくなり、笑顔で手を振るまでになっていた。
「じゃあねー、バイバイ!」
美姫と秀一も笑顔を浮かべ、可愛い天使に手を振り返した。
薫子は一瞬チラッと秀一を見上げてから、緊張した面持ちで美姫の顔を見つめた。
「あのね、美姫……」
すると、悠斗が薫子のドレスの裾を引っ張った。
「ママー、おしっこ……」
「えっ、おしっこ?」
薫子が悠斗を連れ行こうとすると、悠がそれを制した。
「大丈夫。俺が連れて行くから……ほら悠斗、行くよ」
詩織も声を上げる。
「パパー、私も一緒に行く!」
悠は扉を開くと、手洗いの場所を探して左右を見た。
「私が案内しましょう」
「ありがとうございます」
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薫子の雰囲気から秀一が気を利かせて出て行ったのだろうと感じ、美姫は秀一に対して申し訳なく思った。
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