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初めてを捧げた人 ー美姫過去編ー
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羽鳥 大和。
私の初めてを捧げた相手……
大和とは、有名企業の御曹司や令嬢、金持ちの子供が通う幼稚舎から大学までの一貫の私立青海学園にて、割とクラスが一緒になることが多くて自然と仲良くなった幼馴染だった。
一言で言えば、爽やかイケメン男子。
国会議員の父を持ちながら気さくで飾らなくて、誰にでも分け隔てなく接する彼の明るくて陽気な性格は周りを照らし出し、そんな光に誘われるように彼の周りには男女問わず人が集まっていた。
大和はいつも私の側にいて優しく見守ってくれていて、私もそんな彼に心を許し、気がおけない友人として大切に思っていた。
大和の他にもう二人、私たちはいつも行動を一緒にしていた。
同性である私の親友、櫻井 薫子。
彼女とは幼稚舎から小等部、中等部と全て同じクラスで何をするにも一緒。お互い、何でも話せる仲。
そして、私が秀一さんを好きだということを知っている唯一の人物でもある。
内向的なところはあるけれど、とても優しくて気配りのできる私の大好きな親友。美人で儚げな印象から常に男子から告白を受けていたが、いつも丁寧に断っていた。
三大財閥である来栖財閥と肩を並べる、櫻井財閥の令嬢でもある。
それから、風間 悠。
悠は帰国子女で、中等部からの転入生だった。
王子様のような顔立ちに加えて寡黙でミステリアスな雰囲気が女子には魅力的らしく、いつも遠巻きにファンが見つめていた。
大和と波長が合うらしく一緒に行動することが多かった為、自然と私と薫子とも遊ぶようになった。
悠は、三大財閥のもうひとつである風間財閥の御曹司だ。
実は、薫子のお父様と悠のお父様は、薫子のお母様を奪い合った過去があるらしく、それ以来、二つの財閥は犬猿の仲となっている。
それでも、そんな親の事情とは関係なく私達4人は共に楽しい時間を笑って過ごし、キラキラと輝く青春を謳歌していた。
それが、エスカレーター式の学園で受験することなく高等部へと進み、その環境にも徐々に慣れてきた5月、 薫子の一言で今までの4人の関係が音を立てて崩れることとなった。
明るく暖かな太陽の陽射しが降り注ぎ、爽やかな風が時折そよぐ都心に建つとは思えないほど広い屋上。
大和、薫子、悠、私の4人は点在するうちの一つである白い鉄製の蔦の絡まるデザインがほどこされた華奢な作りのテーブルと椅子に腰掛け、ランチを食べていた。
テーブルや椅子が設置されているものの殆どの生徒はランチルームでお昼を取るため、ここに来る生徒はあまりおらず、大抵私たち4人で独占していた。
なぜなら、高いビルに囲まれ眺めがいいとは言えない屋上よりも、有名空間アーティストがデザインしたというお洒落なランチルームの方が居心地も気分も格段にいいからだ。
だが、4人でいるといつも注目されてしまう私たちにとって、人が大勢集まるランチルームは一挙手一投足まで見られているようで居心地が悪く、天気が良く、暖かい日は決まって屋上に集まってランチを食べていた。
お弁当と言っても、大抵は全員お手伝いさんに用意してもらったもので、私はたまにお母様に作って頂くことはあったけれど、それも年に数える程だった。
大和は、時折コンビニで買ったおにぎりやパンを持ってくることもあった。薫子と悠は豪華に彩りよく詰められたお弁当を毎日持参していた。
いつもならお弁当を囲んで賑やかな時間。
ーーけれど、薫子だけはお弁当に手を付けないどころか蓋すら開けようとせず、何か言いたそうに私を見つめていた。
「薫子? どうしたの?」
お弁当を食べていた手を止め、薫子を見つめ返す。
薫子の二つに分けた三つ編みのおさげ髪が揺れた。
中等部に入ってから薫子は、学校に来る時はずっとヘアスタイルをおさげ髪にしている。それが彼女の清楚で儚げな印象を更に高めていた。
薫子は深呼吸をした後、彼女を見つめていた悠に頷くと、私と大和を見た。
不安が心を掠める。
「美姫、大和......私と悠、付き合うことになったの」
「え......」
あまりの突然の一言に、固まってしまう。
悠が薫子に続いて説明する。
「実は、昨日......俺から薫子に告白したんだ」
薫子はその時の様子を思い出したのか、雪のように白く美しい肌が一瞬で紅く染まった。
「そ、そうなの……それで、付き合おうっていうことになって」
二人がお互い想い合っていることは、ずっと前から知っていた。
薫子が小等部卒業式の日に偶然会った悠に一目惚れしたこと。それからずっと想い続けていたこと。両家の対立に思い悩んでいたことは、逐一薫子から聞いていた。
私はそんな薫子を心から励まし、応援していた。
自分のことについてあまり話さない悠から薫子への想いを聞くことはあまりなかった。けれど、他の女子に対する態度との明らかな違いや優しい目線を見ていれば、薫子を大切に想っていることは伝わってきた。
薫子の幸せを、ずっと願っていた。
でも......
私は、心のどこかで、この4人の楽しい関係がずっと続いていくんじゃないか。
いや、続いて欲しいと願っていた気がする。
それでも、二人のために祝福しないと……
心の葛藤と闘う私とは対照的に、大和はその言葉を聞いた途端、
「悠、やったな! 二人共おめでとう、俺まで嬉しくなっちまった」
心からの笑顔で祝福していた。
私も、精一杯の笑顔を二人に向けた。
「薫子、悠、おめでとう。よかったね、二人とも......」
薫子はその言葉を聞いて涙ぐみながら、私の肩に顔を寄せた。
「美姫。ありが、と......」
ずっと悠のことが好きで。でも、家のこともあるし、悩んでて。
それでも好きな気持ちは止められなくて……
悠の告白を受け止めて、二人で新たな一歩を進む決心をしたんだね。ちゃんと祝福してあげないと、いけないんだよね。
「薫子、泣くなら俺の胸で泣いて?」
真顔で言う悠に、大和が
「おいおい、もう見せつける気かよ」
呆れたように言う。
「薫子……悠と付き合っても私達変わらないよね?今まで通り遊べる、よね?」
「うんっ、もちろんだよ! 私達、ずっと一緒だったもん。これからだって、そうだよ」
薫子は涙の溜まった瞳を優しく細めると、微笑んだ。
ーー私も、そう信じていたかった。
私の初めてを捧げた相手……
大和とは、有名企業の御曹司や令嬢、金持ちの子供が通う幼稚舎から大学までの一貫の私立青海学園にて、割とクラスが一緒になることが多くて自然と仲良くなった幼馴染だった。
一言で言えば、爽やかイケメン男子。
国会議員の父を持ちながら気さくで飾らなくて、誰にでも分け隔てなく接する彼の明るくて陽気な性格は周りを照らし出し、そんな光に誘われるように彼の周りには男女問わず人が集まっていた。
大和はいつも私の側にいて優しく見守ってくれていて、私もそんな彼に心を許し、気がおけない友人として大切に思っていた。
大和の他にもう二人、私たちはいつも行動を一緒にしていた。
同性である私の親友、櫻井 薫子。
彼女とは幼稚舎から小等部、中等部と全て同じクラスで何をするにも一緒。お互い、何でも話せる仲。
そして、私が秀一さんを好きだということを知っている唯一の人物でもある。
内向的なところはあるけれど、とても優しくて気配りのできる私の大好きな親友。美人で儚げな印象から常に男子から告白を受けていたが、いつも丁寧に断っていた。
三大財閥である来栖財閥と肩を並べる、櫻井財閥の令嬢でもある。
それから、風間 悠。
悠は帰国子女で、中等部からの転入生だった。
王子様のような顔立ちに加えて寡黙でミステリアスな雰囲気が女子には魅力的らしく、いつも遠巻きにファンが見つめていた。
大和と波長が合うらしく一緒に行動することが多かった為、自然と私と薫子とも遊ぶようになった。
悠は、三大財閥のもうひとつである風間財閥の御曹司だ。
実は、薫子のお父様と悠のお父様は、薫子のお母様を奪い合った過去があるらしく、それ以来、二つの財閥は犬猿の仲となっている。
それでも、そんな親の事情とは関係なく私達4人は共に楽しい時間を笑って過ごし、キラキラと輝く青春を謳歌していた。
それが、エスカレーター式の学園で受験することなく高等部へと進み、その環境にも徐々に慣れてきた5月、 薫子の一言で今までの4人の関係が音を立てて崩れることとなった。
明るく暖かな太陽の陽射しが降り注ぎ、爽やかな風が時折そよぐ都心に建つとは思えないほど広い屋上。
大和、薫子、悠、私の4人は点在するうちの一つである白い鉄製の蔦の絡まるデザインがほどこされた華奢な作りのテーブルと椅子に腰掛け、ランチを食べていた。
テーブルや椅子が設置されているものの殆どの生徒はランチルームでお昼を取るため、ここに来る生徒はあまりおらず、大抵私たち4人で独占していた。
なぜなら、高いビルに囲まれ眺めがいいとは言えない屋上よりも、有名空間アーティストがデザインしたというお洒落なランチルームの方が居心地も気分も格段にいいからだ。
だが、4人でいるといつも注目されてしまう私たちにとって、人が大勢集まるランチルームは一挙手一投足まで見られているようで居心地が悪く、天気が良く、暖かい日は決まって屋上に集まってランチを食べていた。
お弁当と言っても、大抵は全員お手伝いさんに用意してもらったもので、私はたまにお母様に作って頂くことはあったけれど、それも年に数える程だった。
大和は、時折コンビニで買ったおにぎりやパンを持ってくることもあった。薫子と悠は豪華に彩りよく詰められたお弁当を毎日持参していた。
いつもならお弁当を囲んで賑やかな時間。
ーーけれど、薫子だけはお弁当に手を付けないどころか蓋すら開けようとせず、何か言いたそうに私を見つめていた。
「薫子? どうしたの?」
お弁当を食べていた手を止め、薫子を見つめ返す。
薫子の二つに分けた三つ編みのおさげ髪が揺れた。
中等部に入ってから薫子は、学校に来る時はずっとヘアスタイルをおさげ髪にしている。それが彼女の清楚で儚げな印象を更に高めていた。
薫子は深呼吸をした後、彼女を見つめていた悠に頷くと、私と大和を見た。
不安が心を掠める。
「美姫、大和......私と悠、付き合うことになったの」
「え......」
あまりの突然の一言に、固まってしまう。
悠が薫子に続いて説明する。
「実は、昨日......俺から薫子に告白したんだ」
薫子はその時の様子を思い出したのか、雪のように白く美しい肌が一瞬で紅く染まった。
「そ、そうなの……それで、付き合おうっていうことになって」
二人がお互い想い合っていることは、ずっと前から知っていた。
薫子が小等部卒業式の日に偶然会った悠に一目惚れしたこと。それからずっと想い続けていたこと。両家の対立に思い悩んでいたことは、逐一薫子から聞いていた。
私はそんな薫子を心から励まし、応援していた。
自分のことについてあまり話さない悠から薫子への想いを聞くことはあまりなかった。けれど、他の女子に対する態度との明らかな違いや優しい目線を見ていれば、薫子を大切に想っていることは伝わってきた。
薫子の幸せを、ずっと願っていた。
でも......
私は、心のどこかで、この4人の楽しい関係がずっと続いていくんじゃないか。
いや、続いて欲しいと願っていた気がする。
それでも、二人のために祝福しないと……
心の葛藤と闘う私とは対照的に、大和はその言葉を聞いた途端、
「悠、やったな! 二人共おめでとう、俺まで嬉しくなっちまった」
心からの笑顔で祝福していた。
私も、精一杯の笑顔を二人に向けた。
「薫子、悠、おめでとう。よかったね、二人とも......」
薫子はその言葉を聞いて涙ぐみながら、私の肩に顔を寄せた。
「美姫。ありが、と......」
ずっと悠のことが好きで。でも、家のこともあるし、悩んでて。
それでも好きな気持ちは止められなくて……
悠の告白を受け止めて、二人で新たな一歩を進む決心をしたんだね。ちゃんと祝福してあげないと、いけないんだよね。
「薫子、泣くなら俺の胸で泣いて?」
真顔で言う悠に、大和が
「おいおい、もう見せつける気かよ」
呆れたように言う。
「薫子……悠と付き合っても私達変わらないよね?今まで通り遊べる、よね?」
「うんっ、もちろんだよ! 私達、ずっと一緒だったもん。これからだって、そうだよ」
薫子は涙の溜まった瞳を優しく細めると、微笑んだ。
ーー私も、そう信じていたかった。
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