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僕の優しい貴公子
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ロイヤルは後処理まで怠らない。情事の後は必ずシャワーですみずみまで綺麗に洗って、お風呂に一緒に入って甘やかしてくれる。
お風呂から上がると、ダイニングテーブルには温かい食事が用意されていた。シーツ類は全て新しいものに取り替えられ、脱ぎ散らかされた白濁に塗れた衣類は回収されていた。
この屋敷には使用人が住んでいて、僕と5人の雑事をこなしている。
大抵彼らは僕がその部屋にいない時や寝ている時に現れて、掃除をしたり、シーツを交換したり、洗濯物を届けにきたり、食事の用意をする。
もちろん、僕が部屋にいて起きている時に彼らが部屋に来ることもあるけれど、僕たちは会話を交わすことはない。
僕は、彼らにとって空気。
ーー存在するけれど、見えない存在。
彼らは僕を視界に入れることなく、入っていても見えないかのように、淡々と自分たちの仕事をして帰っていく。
食事が欲しい時や何か必要なものがある時には、5人のうちの誰かに頼めば、僕の代わりにそれを伝えてくれる。大抵その役目はダリアかロイヤルで、たまに直に頼むこともある。勝太は聞いてるのか聞いてないのか分からないし、間違っても創一様にはそんな煩わしいことはさせられない。
あとはね、もうひとつ方法がある。
独り言を呟くんだ。なるべく大きな独り言。
そうすると、魔法のランプのように望んだものが与えられる。
フフッ……不思議でしょう?
食事を終えると、ロイヤルは残念そうに瞳を伏せた。
『もう交替の時間だから、行かなくちゃ……』
僕にはそれがいつ来るのか、事前に教えてもらうことはない。
それに、ローテーションで5人それぞれが僕との時間を持てるようになっているとはいえ、決まった順番があるわけではない。3日と空けずに会う日もあれば、1週間以上会わない日もある。それぞれの持ち時間が決まってるわけでもなく、長い時もあれば短い時もある。
いつも突然、別れと再会を繰り返す。
『そっか……』
ナフキンで唇を拭い、睫毛を伏せた。
僕の隣に座っていたロイヤルは、僕を抱き寄せて頭の上にそっと口づけを落とす。
「I love you, Yuki(愛しているよ、ユーキ)」
ロイヤルは毎回、今生の別れのような哀しみの表情を浮かべる。けれど決して、ふたりだけでどこか別の世界に逃げようとは言わない。
僕がそれを望んでないことを、知っているから。
そして、彼にとってもここで暮らすのが最良の選択だと、分かっているから。
「So do I.(僕もだよ)」
ロイヤルの頬を手で引き寄せて、キスを強請る。
激しい熱の消えた、でも穏やかで愛情に満ちた口づけが与えられる。
『僕の熱を決して忘れないで……』
名残惜しそうに、ロイヤルは部屋を出て行った。
優しい僕の貴公子、ロイヤル。
僕をいつも甘やかし、溺愛してくれる……僕に初めて、性の悦びを教えてくれた人。
彼に愛される時、僕は幸せに満たされる。切なくなる。罪悪感に打ち拉がれる。
苛々し、冷酷な言葉を投げつけたくなる……
愛しい、愛しい……僕の、ロイヤル。
お風呂から上がると、ダイニングテーブルには温かい食事が用意されていた。シーツ類は全て新しいものに取り替えられ、脱ぎ散らかされた白濁に塗れた衣類は回収されていた。
この屋敷には使用人が住んでいて、僕と5人の雑事をこなしている。
大抵彼らは僕がその部屋にいない時や寝ている時に現れて、掃除をしたり、シーツを交換したり、洗濯物を届けにきたり、食事の用意をする。
もちろん、僕が部屋にいて起きている時に彼らが部屋に来ることもあるけれど、僕たちは会話を交わすことはない。
僕は、彼らにとって空気。
ーー存在するけれど、見えない存在。
彼らは僕を視界に入れることなく、入っていても見えないかのように、淡々と自分たちの仕事をして帰っていく。
食事が欲しい時や何か必要なものがある時には、5人のうちの誰かに頼めば、僕の代わりにそれを伝えてくれる。大抵その役目はダリアかロイヤルで、たまに直に頼むこともある。勝太は聞いてるのか聞いてないのか分からないし、間違っても創一様にはそんな煩わしいことはさせられない。
あとはね、もうひとつ方法がある。
独り言を呟くんだ。なるべく大きな独り言。
そうすると、魔法のランプのように望んだものが与えられる。
フフッ……不思議でしょう?
食事を終えると、ロイヤルは残念そうに瞳を伏せた。
『もう交替の時間だから、行かなくちゃ……』
僕にはそれがいつ来るのか、事前に教えてもらうことはない。
それに、ローテーションで5人それぞれが僕との時間を持てるようになっているとはいえ、決まった順番があるわけではない。3日と空けずに会う日もあれば、1週間以上会わない日もある。それぞれの持ち時間が決まってるわけでもなく、長い時もあれば短い時もある。
いつも突然、別れと再会を繰り返す。
『そっか……』
ナフキンで唇を拭い、睫毛を伏せた。
僕の隣に座っていたロイヤルは、僕を抱き寄せて頭の上にそっと口づけを落とす。
「I love you, Yuki(愛しているよ、ユーキ)」
ロイヤルは毎回、今生の別れのような哀しみの表情を浮かべる。けれど決して、ふたりだけでどこか別の世界に逃げようとは言わない。
僕がそれを望んでないことを、知っているから。
そして、彼にとってもここで暮らすのが最良の選択だと、分かっているから。
「So do I.(僕もだよ)」
ロイヤルの頬を手で引き寄せて、キスを強請る。
激しい熱の消えた、でも穏やかで愛情に満ちた口づけが与えられる。
『僕の熱を決して忘れないで……』
名残惜しそうに、ロイヤルは部屋を出て行った。
優しい僕の貴公子、ロイヤル。
僕をいつも甘やかし、溺愛してくれる……僕に初めて、性の悦びを教えてくれた人。
彼に愛される時、僕は幸せに満たされる。切なくなる。罪悪感に打ち拉がれる。
苛々し、冷酷な言葉を投げつけたくなる……
愛しい、愛しい……僕の、ロイヤル。
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