92 / 108
愛の為に
3
しおりを挟む
かつて自分の部屋であった扉の前に立ち、僕は緊張で喉を鳴らした。
この中では、いったい誰が僕を待っているんだろう……
軽くノックし、扉を開けると、ゆっくりとこちらを振り返った瞳と視線が重なった。
「やぁ、夕貴。待ってたよ」
穏やかな笑顔を僕に向けたのは、直貴だった。僕は、今まで主人格としてコントロールしてきた創一様がいるんじゃないかって半ば予想していたので、内心驚いた。
「調子は、どう?」
なんて声をかけていいか分からなくて、曖昧な言葉しか出てこない。
「うん。薬の影響もあって眠れなかったり、不安になったりしてるけど……なんとか、やってる」
そう言われてみれば、直貴の表情に疲れの色が見えていた。
この前会った時は直貴からの愛の告白を聞いて興奮状態だったのに、今はなんとなくぎこちない雰囲気だった。直貴は落ち着かせるように深呼吸すると、僕を見つめた。
「今までさ、記憶がなくなってたり、曖昧だったりしても、それを認めようとしない自分がいたんだ。
前に、夕貴に僕の中に別の人格がいるって言われた時も……そんなこと信じられないし、信じたくないって気持ちが大きかった」
「うん……」
「でも、夕貴が撮った僕の中にいる別人格のビデオをカウンセラーの人から見せてもらって、ビックリした。ほんとに、いるんだって」
「うん……」
この先、直貴が何を言おうとしているのか、不安で仕方がない。僕はドキドキしながら、直貴の言葉を受け止めていた。
「夕貴は……どう、思った?」
「ぇ?」
突然問いかけられて、僕は間抜けな声を上げた。
「見た目は僕なのに、それぞれ別の人格を持つ彼らに会って、夕貴は……どう思ったのかなって」
直貴は、僕に何を求めてるんだろう。どんな答えを、言って欲しいんだろう。
「嬉しかったよ」
「嬉し、かった……?」
「うん。もちろん最初は驚いたけどさ。直と会って喋るうちに、すごく楽しくて、気持ちが癒されるのを感じた。勝太とはいつも軽口ばっか叩き合って、ふざけててさ。学生寮で過ごした、あの時みたいなワクワクした気持ちにさせられるんだ。ロイヤルは僕を甘やかしてくれて、大切にしてくれる。ダリアは冗談とか言うけど、僕のこといつも気にかけてくれて、母親みたいに感じることもある。
創一様は……全てを委ねられる、絶対的存在なんだ」
「不思議だな。彼らは僕の中にいるのに、僕は彼らのことを全く分かってなくて、夕貴の方が彼らのことをよく知ってるなんて……
それに、彼らは僕の知らない夕貴を知ってるのかもしれないと思うと……嫉妬する」
嫉妬するなんて直貴に言われて、僕の胸がトクンと震えた。
直貴は、僕の瞳を覗き込んだ
「夕貴……僕に、彼らのことを教えてくれないか。夕貴と過ごした彼らの思い出を、僕も共有したいんだ。
それと同時に、失われた僕の記憶を取り戻したい……」
僕は直貴に微笑んだ。
「うん。分かったよ……」
この中では、いったい誰が僕を待っているんだろう……
軽くノックし、扉を開けると、ゆっくりとこちらを振り返った瞳と視線が重なった。
「やぁ、夕貴。待ってたよ」
穏やかな笑顔を僕に向けたのは、直貴だった。僕は、今まで主人格としてコントロールしてきた創一様がいるんじゃないかって半ば予想していたので、内心驚いた。
「調子は、どう?」
なんて声をかけていいか分からなくて、曖昧な言葉しか出てこない。
「うん。薬の影響もあって眠れなかったり、不安になったりしてるけど……なんとか、やってる」
そう言われてみれば、直貴の表情に疲れの色が見えていた。
この前会った時は直貴からの愛の告白を聞いて興奮状態だったのに、今はなんとなくぎこちない雰囲気だった。直貴は落ち着かせるように深呼吸すると、僕を見つめた。
「今までさ、記憶がなくなってたり、曖昧だったりしても、それを認めようとしない自分がいたんだ。
前に、夕貴に僕の中に別の人格がいるって言われた時も……そんなこと信じられないし、信じたくないって気持ちが大きかった」
「うん……」
「でも、夕貴が撮った僕の中にいる別人格のビデオをカウンセラーの人から見せてもらって、ビックリした。ほんとに、いるんだって」
「うん……」
この先、直貴が何を言おうとしているのか、不安で仕方がない。僕はドキドキしながら、直貴の言葉を受け止めていた。
「夕貴は……どう、思った?」
「ぇ?」
突然問いかけられて、僕は間抜けな声を上げた。
「見た目は僕なのに、それぞれ別の人格を持つ彼らに会って、夕貴は……どう思ったのかなって」
直貴は、僕に何を求めてるんだろう。どんな答えを、言って欲しいんだろう。
「嬉しかったよ」
「嬉し、かった……?」
「うん。もちろん最初は驚いたけどさ。直と会って喋るうちに、すごく楽しくて、気持ちが癒されるのを感じた。勝太とはいつも軽口ばっか叩き合って、ふざけててさ。学生寮で過ごした、あの時みたいなワクワクした気持ちにさせられるんだ。ロイヤルは僕を甘やかしてくれて、大切にしてくれる。ダリアは冗談とか言うけど、僕のこといつも気にかけてくれて、母親みたいに感じることもある。
創一様は……全てを委ねられる、絶対的存在なんだ」
「不思議だな。彼らは僕の中にいるのに、僕は彼らのことを全く分かってなくて、夕貴の方が彼らのことをよく知ってるなんて……
それに、彼らは僕の知らない夕貴を知ってるのかもしれないと思うと……嫉妬する」
嫉妬するなんて直貴に言われて、僕の胸がトクンと震えた。
直貴は、僕の瞳を覗き込んだ
「夕貴……僕に、彼らのことを教えてくれないか。夕貴と過ごした彼らの思い出を、僕も共有したいんだ。
それと同時に、失われた僕の記憶を取り戻したい……」
僕は直貴に微笑んだ。
「うん。分かったよ……」
0
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる