38 / 108
異変
3
しおりを挟む
小等部から中等部へと上がると、僕に対して松ノ内コンツェルンの後継者としての自覚を持つよう、家族からのプレッシャーが強くなった。
両親もそうだけど、お祖父様は特に酷かった。
「お前は松ノ内の本家の一人息子であり、松ノ内コンツェルンの跡継ぎなんだ。遊んでばっかりいないで、勉強せい! 貴之のようには、絶対になるなよ!」
それが、お祖父様の口癖だった。
お祖父様は長男であるうちの父さんよりも、次男である貴之叔父さんの方を可愛がってた。松ノ内コンツェルンの後継者も、本当は父さんではなく、貴之叔父さんにしたかったんだと思う。
そんな可愛がってた息子が家出して、しかも男と駆け落ちしたと知り、お祖父様は激昂した。可愛さ余って憎さ100倍ってやつだね。
小さい時にはそんな大人の事情が絡んでたなんて知らなかったけど、この歳になると、色々と耳に入ってきちゃうんだよね。噂好きの人が多いから……
だから、直貴の母親はゲイを拒絶し、親の仇のように憎んでる。
直貴は幼い頃から母親に、『男同士の恋愛なんてありえない』だの、『気持ち悪い』だの、『頭がおかしい』だの言われて育てられてきた。
そして最後には、
『いい? あなたは絶対にお父さんみたいになるんじゃないわよ!』
この一言で終わるのだ。
だから直貴には、普通の人よりもゲイに対しての拒絶意識が遥かに強かった。
それなのに……僕は、直貴を好きになっちゃったんだ。
どうして直貴を好きになったのか、明確な理由なんて分からない。守ってあげたくて、笑顔が見たくて、ずっと傍にいてあげたくて……そう思っていた。
でもいつしか、それは従兄弟や友達に対するような感情以上のものだってことに気づいたんだ。
それは、恋愛。実ることのない、僕の初恋。
それを知ってるから、僕は従兄弟であり、友達であるポジションを死守しようとした。
親が分家の人間である直貴と仲良くしているのを良く思ってないことを知ってるから、小等部の時以上に成績を落とさないように勉強もした。学業だけじゃなく、習い事にも力を入れ、水泳やピアノでは数々のコンクールで賞をもらった。
お祖父様はそんな僕を誇りに思い、『さすがわしの孫だ』、『本家の跡継ぎに相応しい』、と褒めてくれた。
松ノ内コンツェルン会長として多くの従業員を従え、『鬼の松ノ内』と呼ばれているお祖父様だけど、僕にとっては頼めば何でも買ってくれ、言うことを聞いてくれる孫に甘いお爺ちゃんでしかない。
直貴の隣にいられること。
それが、僕の幸せなんだって思ってたんだ。
ほんと、健気でしょ?
あの頃の僕……
でも、僕が愛情の片鱗を見せれば見せるほどに、直貴は遠ざかっていく。
僕は、その理由を知ることになった。
僕が学業や習い事を頑張れば頑張るほど、さすが本家の人間だと褒められ、持て囃される。一方、直貴は僕の成績には遠く及ばず、水泳でもピアノでも才能を開花させることはなかった。
ただでさえ父親が男と駆け落ちして肩身の狭い思いをしているというのに、僕の我儘のせいで直貴は学校どころか習い事にも付き合わされ、その能力の違いを見せつけられる。それに、習い事の資金の出所は祖父からだから、ますます直貴の母親に対して親戚からの風当たりが強くなっていたのだ。
僕は、それでも直貴を手放せない。それに、直貴だって僕から離れられることなんて出来ないんだ。
物理的には遠ざかれないよ?
だって、母親と同じく直貴も本家の人間である僕を無下にすることは出来ないからね。
もう中学生になった直貴は、それを痛いほど自覚してるから……
でも、心が拒絶していることを感じるんだ。僕を怯えたように見つめ、昔のように笑わなくなった。
僕は、寂しく笑うしかなかった。
両親もそうだけど、お祖父様は特に酷かった。
「お前は松ノ内の本家の一人息子であり、松ノ内コンツェルンの跡継ぎなんだ。遊んでばっかりいないで、勉強せい! 貴之のようには、絶対になるなよ!」
それが、お祖父様の口癖だった。
お祖父様は長男であるうちの父さんよりも、次男である貴之叔父さんの方を可愛がってた。松ノ内コンツェルンの後継者も、本当は父さんではなく、貴之叔父さんにしたかったんだと思う。
そんな可愛がってた息子が家出して、しかも男と駆け落ちしたと知り、お祖父様は激昂した。可愛さ余って憎さ100倍ってやつだね。
小さい時にはそんな大人の事情が絡んでたなんて知らなかったけど、この歳になると、色々と耳に入ってきちゃうんだよね。噂好きの人が多いから……
だから、直貴の母親はゲイを拒絶し、親の仇のように憎んでる。
直貴は幼い頃から母親に、『男同士の恋愛なんてありえない』だの、『気持ち悪い』だの、『頭がおかしい』だの言われて育てられてきた。
そして最後には、
『いい? あなたは絶対にお父さんみたいになるんじゃないわよ!』
この一言で終わるのだ。
だから直貴には、普通の人よりもゲイに対しての拒絶意識が遥かに強かった。
それなのに……僕は、直貴を好きになっちゃったんだ。
どうして直貴を好きになったのか、明確な理由なんて分からない。守ってあげたくて、笑顔が見たくて、ずっと傍にいてあげたくて……そう思っていた。
でもいつしか、それは従兄弟や友達に対するような感情以上のものだってことに気づいたんだ。
それは、恋愛。実ることのない、僕の初恋。
それを知ってるから、僕は従兄弟であり、友達であるポジションを死守しようとした。
親が分家の人間である直貴と仲良くしているのを良く思ってないことを知ってるから、小等部の時以上に成績を落とさないように勉強もした。学業だけじゃなく、習い事にも力を入れ、水泳やピアノでは数々のコンクールで賞をもらった。
お祖父様はそんな僕を誇りに思い、『さすがわしの孫だ』、『本家の跡継ぎに相応しい』、と褒めてくれた。
松ノ内コンツェルン会長として多くの従業員を従え、『鬼の松ノ内』と呼ばれているお祖父様だけど、僕にとっては頼めば何でも買ってくれ、言うことを聞いてくれる孫に甘いお爺ちゃんでしかない。
直貴の隣にいられること。
それが、僕の幸せなんだって思ってたんだ。
ほんと、健気でしょ?
あの頃の僕……
でも、僕が愛情の片鱗を見せれば見せるほどに、直貴は遠ざかっていく。
僕は、その理由を知ることになった。
僕が学業や習い事を頑張れば頑張るほど、さすが本家の人間だと褒められ、持て囃される。一方、直貴は僕の成績には遠く及ばず、水泳でもピアノでも才能を開花させることはなかった。
ただでさえ父親が男と駆け落ちして肩身の狭い思いをしているというのに、僕の我儘のせいで直貴は学校どころか習い事にも付き合わされ、その能力の違いを見せつけられる。それに、習い事の資金の出所は祖父からだから、ますます直貴の母親に対して親戚からの風当たりが強くなっていたのだ。
僕は、それでも直貴を手放せない。それに、直貴だって僕から離れられることなんて出来ないんだ。
物理的には遠ざかれないよ?
だって、母親と同じく直貴も本家の人間である僕を無下にすることは出来ないからね。
もう中学生になった直貴は、それを痛いほど自覚してるから……
でも、心が拒絶していることを感じるんだ。僕を怯えたように見つめ、昔のように笑わなくなった。
僕は、寂しく笑うしかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます
トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。
魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・
なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️
エブリスタにも、掲載しています。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる