37 / 108
異変
2
しおりを挟む
初めて直貴に痣があるのを発見したのは、まだ僕たちが小等部に入る前だったと思う。
「なおき……それ、どうしたの!?くろくなってる!!あ、ここにもある!」
直貴が腕まくりをした時に痣を見つけ、それからズボンを捲ってみると、そこにも痣があった。
直貴は慌てて袖を元に戻し、僕が捲ったズボンの裾を下ろした。
「ころんだ……」
「え、どこで?」
「おうちの、まえ……」
「そうなんだ。あぶないなー、きをつけてよね」
「うん……」
その時の僕は単純に、直貴が言うならそうなのかと信じていた。
直貴はそれから、長袖長ズボンの服しか着ず、腕まくりをすることはなくなった。
僕たちが小等部に上がり、7歳になった年。
突然、直貴のお父さんがいなくなった。それは、松ノ内家で大事件となり、親戚一同が集まっての大騒ぎとなった。
直貴のお母さんは涙を流し、土下座して、ひたすらお祖父様や僕の両親に謝り続けた。お祖父様が貴之叔父さんのことを『松ノ内家のつらよごしだ』なんて言ってたけど、幼かった僕には『つらよごし』の意味なんて分からなかった。
ただ、直貴が寂しそうにしているのが耐えられなくて。その笑顔が見たくて。
直貴の傍に、ずっと寄り添っていた。
父親の失踪後、直貴は今まで以上に人に気を遣い、おどおどと人の顔色を見るようになった。松ノ内家での集まりでは、なるべく目立たないように壁の隅に立ち、嵐が過ぎ去るのを待っている。直貴のお母さんはいつも所在なさげにしながら、会う人会う人に深く頭を下げていた。
直貴には、せめて僕の前ではそんな顔をさせたくなくて、学校では常に一緒に行動した。
それでも足りなくて、僕はお祖父様に、直貴も僕と同じ習い事をさせて欲しいと頼んだ。
『たとえ分家であっても、松ノ内家の人間である以上、教養は必要だ』
って言って納得させた……なんて、正直必死だったからよく覚えてないけど、たぶんそんなこと言って説得したんだと思う。
塾、ピアノ、水泳、英会話……そうすれば、習い事に行っても直貴と一緒にいられる。
僕は、いつでも直貴の傍にいたかった。そうすることが、直貴を守ることになると思ってたんだ。
勉強はみんなより出来、なんでも器用にこなせてた僕は、それまで努力なんてしたことがなかった。でも、直貴にかっこいいところを見せたい一心で、学校の勉強や習い事に熱心に取り組むようになった。
直貴はそんな僕を、手放しで褒めてくれた。
「夕ちゃんすごい! 本当に夕ちゃんってなんでも出来てかっこいいね!」
そう言ってもらえるのが、何より嬉しかったんだ。
「なおき……それ、どうしたの!?くろくなってる!!あ、ここにもある!」
直貴が腕まくりをした時に痣を見つけ、それからズボンを捲ってみると、そこにも痣があった。
直貴は慌てて袖を元に戻し、僕が捲ったズボンの裾を下ろした。
「ころんだ……」
「え、どこで?」
「おうちの、まえ……」
「そうなんだ。あぶないなー、きをつけてよね」
「うん……」
その時の僕は単純に、直貴が言うならそうなのかと信じていた。
直貴はそれから、長袖長ズボンの服しか着ず、腕まくりをすることはなくなった。
僕たちが小等部に上がり、7歳になった年。
突然、直貴のお父さんがいなくなった。それは、松ノ内家で大事件となり、親戚一同が集まっての大騒ぎとなった。
直貴のお母さんは涙を流し、土下座して、ひたすらお祖父様や僕の両親に謝り続けた。お祖父様が貴之叔父さんのことを『松ノ内家のつらよごしだ』なんて言ってたけど、幼かった僕には『つらよごし』の意味なんて分からなかった。
ただ、直貴が寂しそうにしているのが耐えられなくて。その笑顔が見たくて。
直貴の傍に、ずっと寄り添っていた。
父親の失踪後、直貴は今まで以上に人に気を遣い、おどおどと人の顔色を見るようになった。松ノ内家での集まりでは、なるべく目立たないように壁の隅に立ち、嵐が過ぎ去るのを待っている。直貴のお母さんはいつも所在なさげにしながら、会う人会う人に深く頭を下げていた。
直貴には、せめて僕の前ではそんな顔をさせたくなくて、学校では常に一緒に行動した。
それでも足りなくて、僕はお祖父様に、直貴も僕と同じ習い事をさせて欲しいと頼んだ。
『たとえ分家であっても、松ノ内家の人間である以上、教養は必要だ』
って言って納得させた……なんて、正直必死だったからよく覚えてないけど、たぶんそんなこと言って説得したんだと思う。
塾、ピアノ、水泳、英会話……そうすれば、習い事に行っても直貴と一緒にいられる。
僕は、いつでも直貴の傍にいたかった。そうすることが、直貴を守ることになると思ってたんだ。
勉強はみんなより出来、なんでも器用にこなせてた僕は、それまで努力なんてしたことがなかった。でも、直貴にかっこいいところを見せたい一心で、学校の勉強や習い事に熱心に取り組むようになった。
直貴はそんな僕を、手放しで褒めてくれた。
「夕ちゃんすごい! 本当に夕ちゃんってなんでも出来てかっこいいね!」
そう言ってもらえるのが、何より嬉しかったんだ。
0
あなたにおすすめの小説
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる