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異世界漂流編
疑念の連鎖
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ここは地球じゃないのか?いただきますなんてどこの国でも使うんじゃないのか?
――落ち着け。
焦っていては何も分からないと心に言い聞かせる。そもそも食事の挨拶をしない国だってあるはずではないか、と。
彼方は心のどこかでそうであって欲しくないと思っているのである。
「いただきますって言うのは食べ物や作ってくれる人に対してのお礼や感謝みたいなもんだよ」
するとディアメルは数秒ポカンとしてから嬉しそうにはにかむ。
「そうですか、彼方さんは私に感謝してくれてるんですか」
真剣に受け止められるとこちらも恥ずかしい。彼方にとっては当たり前のことをしたまでだ。
気まずくなり目が会うと二人して笑い合う。
「さっきの質問の答えの続きを聞かせてもらっていいか?」
当初の課題をすませなければいけないことをすっかりと忘れていた。
「ハイ、そうですね。二個目まで答えましたので次は彼方さんの知り合いの方々の消息ですね?」
ディアメルがそこまで話すと顔付きを少し変える。
「あなた方は勇者として召喚されましたのです。そこを私が彼方さんだけ攫ってしまったんです。だから今頃、彼方さんの知り合いの方々は王国でウフフキャハハしてると思います」
「今コイツ、サラッと攫ったって言ったぞ!」とそんな爆弾発言に対しての追求を胸に押し留める。
ここで話を脱線しているといつまでも結論にたどり着かなさそうだからだ。
相槌だけ打ち、話を続けてもらう。
「どんどんいきますね。えっと四個目の質問については心配いりません。魔女の家を襲う愚か者の魔物は居ませんからね。上下関係が分かっているんですよ。で、最後の答えは否です。まぁ、一言付け足すならばですね。身も心も彼方さんの物ですよ、とだけ言っておきましょう」
(やばいよ、この人!!会って間もないのに突拍子のないことばっか言いだすよ!ツッコミたい!というか、最後だけ聞いて、ハッピーエンドで桜井 彼方の物語は終わりで良いんじゃないか!?)
彼方の頭がスパークを起こす。状況にまるでついていけない。
結論を急がせる。答えはなんだ。彼女はなんだ?この世界はなんだ?俺はなんで攫われたんだ?場合によってはすごい状況かもしれない。
彼方は取り敢えず纏まった答えを彼女に突き付ける。
「分かった!!あなたはこの世界の悪者で勇者である俺を攫って王国とやらを脅すつもりなんだなっ!!」
ドヤ顔で彼方はディアメルに向かって指を指す。
「違いますよ」
違ったらしい。
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。
私が彼方さんを攫っていないと、今頃訳も分からない拷問にかけられて殺されてしまってたかもしれないんですよ!」
彼方の予想は掠るどころか振ることも出来ていなかったらしい。
彼方はディアメルの答えを聞いて身を震わす。
「王国怖っっ!!」
彼方の心の叫びを聞いて向かいの彼女が誇らしそうに胸を張る。ちなみに食事はいつのまにか食べ終わってしまっている。
「ふふ~ん、私は救世主様なんですよ!もっといただきますって言ってくれても良いですよ!」
「いや、使い道間違ってるよ。あれは食事に関することだけだ。でも、ディアメルの話が本当なら救われたみたいだな。ありがとう」
「その言葉を聞けただけで私は十分です。こちらこそお礼を申し上げなければいけません。ご迎えに行くのが遅くなり申し訳ありません。そして、よくぞ戻って来て下さいました、魔王様(・・・)」
――爆弾発言はまだまだ続くらしい。
――落ち着け。
焦っていては何も分からないと心に言い聞かせる。そもそも食事の挨拶をしない国だってあるはずではないか、と。
彼方は心のどこかでそうであって欲しくないと思っているのである。
「いただきますって言うのは食べ物や作ってくれる人に対してのお礼や感謝みたいなもんだよ」
するとディアメルは数秒ポカンとしてから嬉しそうにはにかむ。
「そうですか、彼方さんは私に感謝してくれてるんですか」
真剣に受け止められるとこちらも恥ずかしい。彼方にとっては当たり前のことをしたまでだ。
気まずくなり目が会うと二人して笑い合う。
「さっきの質問の答えの続きを聞かせてもらっていいか?」
当初の課題をすませなければいけないことをすっかりと忘れていた。
「ハイ、そうですね。二個目まで答えましたので次は彼方さんの知り合いの方々の消息ですね?」
ディアメルがそこまで話すと顔付きを少し変える。
「あなた方は勇者として召喚されましたのです。そこを私が彼方さんだけ攫ってしまったんです。だから今頃、彼方さんの知り合いの方々は王国でウフフキャハハしてると思います」
「今コイツ、サラッと攫ったって言ったぞ!」とそんな爆弾発言に対しての追求を胸に押し留める。
ここで話を脱線しているといつまでも結論にたどり着かなさそうだからだ。
相槌だけ打ち、話を続けてもらう。
「どんどんいきますね。えっと四個目の質問については心配いりません。魔女の家を襲う愚か者の魔物は居ませんからね。上下関係が分かっているんですよ。で、最後の答えは否です。まぁ、一言付け足すならばですね。身も心も彼方さんの物ですよ、とだけ言っておきましょう」
(やばいよ、この人!!会って間もないのに突拍子のないことばっか言いだすよ!ツッコミたい!というか、最後だけ聞いて、ハッピーエンドで桜井 彼方の物語は終わりで良いんじゃないか!?)
彼方の頭がスパークを起こす。状況にまるでついていけない。
結論を急がせる。答えはなんだ。彼女はなんだ?この世界はなんだ?俺はなんで攫われたんだ?場合によってはすごい状況かもしれない。
彼方は取り敢えず纏まった答えを彼女に突き付ける。
「分かった!!あなたはこの世界の悪者で勇者である俺を攫って王国とやらを脅すつもりなんだなっ!!」
ドヤ顔で彼方はディアメルに向かって指を指す。
「違いますよ」
違ったらしい。
「人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。
私が彼方さんを攫っていないと、今頃訳も分からない拷問にかけられて殺されてしまってたかもしれないんですよ!」
彼方の予想は掠るどころか振ることも出来ていなかったらしい。
彼方はディアメルの答えを聞いて身を震わす。
「王国怖っっ!!」
彼方の心の叫びを聞いて向かいの彼女が誇らしそうに胸を張る。ちなみに食事はいつのまにか食べ終わってしまっている。
「ふふ~ん、私は救世主様なんですよ!もっといただきますって言ってくれても良いですよ!」
「いや、使い道間違ってるよ。あれは食事に関することだけだ。でも、ディアメルの話が本当なら救われたみたいだな。ありがとう」
「その言葉を聞けただけで私は十分です。こちらこそお礼を申し上げなければいけません。ご迎えに行くのが遅くなり申し訳ありません。そして、よくぞ戻って来て下さいました、魔王様(・・・)」
――爆弾発言はまだまだ続くらしい。
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