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異世界漂流編
姉の行方
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――魔女怖ぁッッッッ!!!
第一印象がやばすぎる魔女は何事もなかったように食後のコーヒーを出してくれる。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
苦いコーヒーに角砂糖を入れている彼方に聞いてくる。
「あ、そうだな。それじゃ一つだけ。俺たちの元の世界では俺たちはどういう扱いになっているんだ?」
人差し指を立てて自分達の処遇を確認する。
「それは多分、行方不明者として扱われていると思いますよ」
行方不明者と聞いて彼方は何か考えたのか難しい顔をする。非常に苦しそうな顔だ。
「な、なぁ、俺の姉とその友達が一年前に行方不明になったんだよ。知らないか?名前は桜井 飛鳥、西川 嘉 、石川 愛亜っていうんだが」
するとディアメルは顔に出るくらいの動揺を露わにしてから、露骨に嫌そうな顔になる。
やはり知っているのだろうか?彼方は期待を湧き上がらせる。
「彼女たちは前に勇者として召喚されたました。確か二代目だったはずです。だから彼方さんたちは三代目ですね。けど彼方さんは勇者ではなくて魔王様なので二代目の魔王になりますね」
すると彼方は顔を寄せ早口で喋り出す。
「それじゃ、王国に行けば姉ちゃんたちに会えるんだな。よし、今から行くぞ!一年ぶりの再会だ!」
席から立ち上がりドアに走り寄る。ドアノブに手を掛けようとし――景色が変わり元いた席に着く。
「アレッ??」
(瞬間移動をした気分だ。いや本当にしたのかもしれない。ディアメルの魔法だろうか?やっぱりこの世界は魔法ってあるんだ。)
簡単に納得できる彼方は少し頭のネジが外れているのだろう。
目の前ではディアメルが先程よりも機嫌が悪そうな顔でこちらを睨んでいる。
「言いましたよね!この家から逃げられると困るって!私は彼方さんを思って言っているんですよ!それを破るとは何事ですか!!」
手に持つコーヒーをかき混ぜていた木のスプーンがへし折れる。か弱い女性とは遠くかけ離れている。
「もう信用なりません!私が出かけている間地下室で待っていてもらいます!」
そう叫ぶと彼方の腕を掴み部屋を出て地下室に通じる階段へと降りていく。やはり握力はか弱い女性とは程遠かった。腕がミシミシと鳴る。今にも折られそうだ。まさに赤子の手を捻るよう、とか呑気なことを考えている彼方は本物の馬鹿であろう。
階段は酷く長く奈落の底へ向かうようであった。
「はい、着きました。この檻に入ってください錠を掛けますので」
地下室は薄暗くランプが一つ灯されているだけである。中は正方形で半分の所で檻が立っている。仕切りの様だ。
錠を掛けると聞き、本気(マジ)かと顔を疑った彼方だったが、ディアメルは至って真面目な顔付きであった。さっきの勢いのある声ではなく、いつもの声の調子に戻っている。
「まっ、待っ「待ちません早く入ってください。言うこと聞かないとメッですよ」」
可愛いいことをこんな拷問ショーの始まりみたいな場所で言われても、心は全然ときめかない。寧ろ萎えてしまう。
「あれだよ。ディアメルが居ない時、誰かが来て俺の紋章見られたらやばいじゃん!だから一緒に行くよ、ねっ、ねっ?連れてってください!!」
彼方は打開策を考えてみたが、思いついたのは日本人の究極奥義DOGEZAだった。
「なにをやっているんですか、彼方さん?早く手を出してください。後、紋章は私の魔法で隠しておきますので誰にもバレませんよ」
異世界で土下座は知られていないらしい。彼方の策は虚しく散っていった。
ディアメルが手を翳(かざ)すと彼方の胸にある紋章が見る見る消えてゆく。
「この檻に触れますと電気が流れますので注意してくださいね。それでは行ってまいります。きちんと待っていてくださいね」
彼方の意向をバッサリと斬り捨ててディアメルは階段を駆け上がっていく。
彼方はディアメルがいなくなることを確認すると一言呟く。
「……暇だ!!!」
第一印象がやばすぎる魔女は何事もなかったように食後のコーヒーを出してくれる。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
苦いコーヒーに角砂糖を入れている彼方に聞いてくる。
「あ、そうだな。それじゃ一つだけ。俺たちの元の世界では俺たちはどういう扱いになっているんだ?」
人差し指を立てて自分達の処遇を確認する。
「それは多分、行方不明者として扱われていると思いますよ」
行方不明者と聞いて彼方は何か考えたのか難しい顔をする。非常に苦しそうな顔だ。
「な、なぁ、俺の姉とその友達が一年前に行方不明になったんだよ。知らないか?名前は桜井 飛鳥、西川 嘉 、石川 愛亜っていうんだが」
するとディアメルは顔に出るくらいの動揺を露わにしてから、露骨に嫌そうな顔になる。
やはり知っているのだろうか?彼方は期待を湧き上がらせる。
「彼女たちは前に勇者として召喚されたました。確か二代目だったはずです。だから彼方さんたちは三代目ですね。けど彼方さんは勇者ではなくて魔王様なので二代目の魔王になりますね」
すると彼方は顔を寄せ早口で喋り出す。
「それじゃ、王国に行けば姉ちゃんたちに会えるんだな。よし、今から行くぞ!一年ぶりの再会だ!」
席から立ち上がりドアに走り寄る。ドアノブに手を掛けようとし――景色が変わり元いた席に着く。
「アレッ??」
(瞬間移動をした気分だ。いや本当にしたのかもしれない。ディアメルの魔法だろうか?やっぱりこの世界は魔法ってあるんだ。)
簡単に納得できる彼方は少し頭のネジが外れているのだろう。
目の前ではディアメルが先程よりも機嫌が悪そうな顔でこちらを睨んでいる。
「言いましたよね!この家から逃げられると困るって!私は彼方さんを思って言っているんですよ!それを破るとは何事ですか!!」
手に持つコーヒーをかき混ぜていた木のスプーンがへし折れる。か弱い女性とは遠くかけ離れている。
「もう信用なりません!私が出かけている間地下室で待っていてもらいます!」
そう叫ぶと彼方の腕を掴み部屋を出て地下室に通じる階段へと降りていく。やはり握力はか弱い女性とは程遠かった。腕がミシミシと鳴る。今にも折られそうだ。まさに赤子の手を捻るよう、とか呑気なことを考えている彼方は本物の馬鹿であろう。
階段は酷く長く奈落の底へ向かうようであった。
「はい、着きました。この檻に入ってください錠を掛けますので」
地下室は薄暗くランプが一つ灯されているだけである。中は正方形で半分の所で檻が立っている。仕切りの様だ。
錠を掛けると聞き、本気(マジ)かと顔を疑った彼方だったが、ディアメルは至って真面目な顔付きであった。さっきの勢いのある声ではなく、いつもの声の調子に戻っている。
「まっ、待っ「待ちません早く入ってください。言うこと聞かないとメッですよ」」
可愛いいことをこんな拷問ショーの始まりみたいな場所で言われても、心は全然ときめかない。寧ろ萎えてしまう。
「あれだよ。ディアメルが居ない時、誰かが来て俺の紋章見られたらやばいじゃん!だから一緒に行くよ、ねっ、ねっ?連れてってください!!」
彼方は打開策を考えてみたが、思いついたのは日本人の究極奥義DOGEZAだった。
「なにをやっているんですか、彼方さん?早く手を出してください。後、紋章は私の魔法で隠しておきますので誰にもバレませんよ」
異世界で土下座は知られていないらしい。彼方の策は虚しく散っていった。
ディアメルが手を翳(かざ)すと彼方の胸にある紋章が見る見る消えてゆく。
「この檻に触れますと電気が流れますので注意してくださいね。それでは行ってまいります。きちんと待っていてくださいね」
彼方の意向をバッサリと斬り捨ててディアメルは階段を駆け上がっていく。
彼方はディアメルがいなくなることを確認すると一言呟く。
「……暇だ!!!」
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