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異世界漂流編
神懸かりの切り札
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「おいおい、ここにあった家はどうしたんだ!」
お姫様抱っこ状態から解放され、カレナに肩を貸してもらいながら先程より切羽詰まった声で問う。
「ん?魔女がいるかもしれへんからな。先制攻撃を仕掛けたんや。そしたら簡単に吹き飛んでもうてやな、地下室の階段だけが攻撃に晒されへんかったんや。少年がこの家に居なくて良かった。もしかしたら死んでたかもしれへんからな」
狂気の沙汰じゃない、と彼方は戦慄する。人質がいるかもしれないのにこの武装者達は平然と攻撃を仕掛けてきたのだ。地下に居て心底良かったと思う。
瓦礫の向こうには箒に乗ったおっちょこちょいそうなメガネの少女や、無口なそうな武人など多数の人がこの家を囲っている。それぞれ違う格好だが、同じマントを羽織っているのだけは共通している。
「お前らがすんげぇー遠慮のないのは分かったよ。で、お前ら何者なんだよ?一攫千金のために大者狙った盗賊とかじゃねぇんだろ?」
素人の眼からでも彼女らが盗賊ではないことは一目瞭然だ。
高貴な服を着た如何にも貴族そうな青年が乗っている白馬が「盗賊」と聞き気高い囀りをする。威嚇でもしているのだろう。
個性豊かな団体さんだ、と彼方は素直に思う。
魔女に囚われていたというのにこの図太さ、彼方も十分突飛いていることに気がついていない。
「うちらは泣く子も気絶する神憑りの切札、騎士団や」
意気揚々にそう告げる。ドヤ顔している所で悪いが、彼方はこの世界の知識がからっきしなので、どう反応していいか分からないのだ。
ポカンと口を開けている彼方に、
「おい、まさかうちらのこと知らへゆのかい?悪さと大雑把さと破損被害の多さで有名な団なんやで!少年はどんな田舎から来たんや?てか、名前なんやねん?少年って呼んどると親近感が感じれへんやろ!」
彼方の肩に押しかかりカレナが不平を並べる。重くて鬱陶しい。
嫌味混じりで自己紹介をする。
「俺の名前は桜井 彼方だ。親近感湧きたいなら親しみを込めて彼方様と呼んでいいぞ」
「彼方様と呼べば親しくなれるのか?!よし、これからよろしゅうな、彼方様!」
「いや、冗談だよ!なにその恥ずかしいの!もう彼方でいいよ。よろしくな」
カレナは脳筋であったらしい。
出身地が、田舎どころか異世界から来たことを話そうか悩んでいると先に地下室を出たセリアが毛布と水を持ってやって来た。
「お待たせ、団長!そっちの方は怪我などしてないか?」
元気な女の子、というイメージを持つセリアは小走りで彼方の身体を見て回る。彼方は絶命寸前ではあったが怪我などは全くしていない。精々腹と背骨がくっついているぐらいだろう。
「怪我は大丈夫だから、水をくれないか?何日か閉じ込められていて口になにも入れていないんだ」
一瀉千里に渡された水をたらふく飲む。口から零れて服が濡れてしまうのも気にしていられない。それほどまでに苦しい時間をあの暗闇の中で過ごしていたのだ。
「フフフ、水は一杯あるから落ち着け。今までよく耐えたな」
カレナが彼方の頭を近づけて撫でる。その様子はまるで近所のお姉さんに慰められる子どものようであった。
「食いしん坊さんだな~」
セリアが手を頭の後ろに組みながらはにかむ。
ハリスが地下室から上がってきたところでここにいる神憑りの切札のメンツが集合する。
おっちょこちょいそうなメガネの少女、白馬に乗っていた高貴な青年、麦の三角帽を持った武士、腰の辺りからチラつく鱗が特徴的な女性、ナイフでお手玉をする猫男、ハリスやセリア、そしてカレナ。愉快なメンバーだ。
少年、彼方はこの時心に感じる。
――異世界パネェッッ!!!
お姫様抱っこ状態から解放され、カレナに肩を貸してもらいながら先程より切羽詰まった声で問う。
「ん?魔女がいるかもしれへんからな。先制攻撃を仕掛けたんや。そしたら簡単に吹き飛んでもうてやな、地下室の階段だけが攻撃に晒されへんかったんや。少年がこの家に居なくて良かった。もしかしたら死んでたかもしれへんからな」
狂気の沙汰じゃない、と彼方は戦慄する。人質がいるかもしれないのにこの武装者達は平然と攻撃を仕掛けてきたのだ。地下に居て心底良かったと思う。
瓦礫の向こうには箒に乗ったおっちょこちょいそうなメガネの少女や、無口なそうな武人など多数の人がこの家を囲っている。それぞれ違う格好だが、同じマントを羽織っているのだけは共通している。
「お前らがすんげぇー遠慮のないのは分かったよ。で、お前ら何者なんだよ?一攫千金のために大者狙った盗賊とかじゃねぇんだろ?」
素人の眼からでも彼女らが盗賊ではないことは一目瞭然だ。
高貴な服を着た如何にも貴族そうな青年が乗っている白馬が「盗賊」と聞き気高い囀りをする。威嚇でもしているのだろう。
個性豊かな団体さんだ、と彼方は素直に思う。
魔女に囚われていたというのにこの図太さ、彼方も十分突飛いていることに気がついていない。
「うちらは泣く子も気絶する神憑りの切札、騎士団や」
意気揚々にそう告げる。ドヤ顔している所で悪いが、彼方はこの世界の知識がからっきしなので、どう反応していいか分からないのだ。
ポカンと口を開けている彼方に、
「おい、まさかうちらのこと知らへゆのかい?悪さと大雑把さと破損被害の多さで有名な団なんやで!少年はどんな田舎から来たんや?てか、名前なんやねん?少年って呼んどると親近感が感じれへんやろ!」
彼方の肩に押しかかりカレナが不平を並べる。重くて鬱陶しい。
嫌味混じりで自己紹介をする。
「俺の名前は桜井 彼方だ。親近感湧きたいなら親しみを込めて彼方様と呼んでいいぞ」
「彼方様と呼べば親しくなれるのか?!よし、これからよろしゅうな、彼方様!」
「いや、冗談だよ!なにその恥ずかしいの!もう彼方でいいよ。よろしくな」
カレナは脳筋であったらしい。
出身地が、田舎どころか異世界から来たことを話そうか悩んでいると先に地下室を出たセリアが毛布と水を持ってやって来た。
「お待たせ、団長!そっちの方は怪我などしてないか?」
元気な女の子、というイメージを持つセリアは小走りで彼方の身体を見て回る。彼方は絶命寸前ではあったが怪我などは全くしていない。精々腹と背骨がくっついているぐらいだろう。
「怪我は大丈夫だから、水をくれないか?何日か閉じ込められていて口になにも入れていないんだ」
一瀉千里に渡された水をたらふく飲む。口から零れて服が濡れてしまうのも気にしていられない。それほどまでに苦しい時間をあの暗闇の中で過ごしていたのだ。
「フフフ、水は一杯あるから落ち着け。今までよく耐えたな」
カレナが彼方の頭を近づけて撫でる。その様子はまるで近所のお姉さんに慰められる子どものようであった。
「食いしん坊さんだな~」
セリアが手を頭の後ろに組みながらはにかむ。
ハリスが地下室から上がってきたところでここにいる神憑りの切札のメンツが集合する。
おっちょこちょいそうなメガネの少女、白馬に乗っていた高貴な青年、麦の三角帽を持った武士、腰の辺りからチラつく鱗が特徴的な女性、ナイフでお手玉をする猫男、ハリスやセリア、そしてカレナ。愉快なメンバーだ。
少年、彼方はこの時心に感じる。
――異世界パネェッッ!!!
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