ずっとそばにいるから 〜Ωは幼なじみに愛される〜

腐男子ミルク

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第26話  決着

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激しい雨の中、俺たちは全力で駆けた。
背後からは組長の手下たちの怒声と足音が追ってくる。

(このままじゃ、逃げ切れねぇ——)

そう思った瞬間、遊馬が俺の腕を引き、狭い路地へと飛び込んだ。
暗闇に紛れ、荒く息を吐く。
雨が冷たく、心臓が痛いほどに脈打っていた。

「……クソッ、まるで獲物を追う猟犬だな。」

遊馬が苛立たしげに舌打ちする。
その肩は雨に濡れてもなお力強く、俺を守ろうとしていた。

「遊馬……もう、戦うしかないんじゃないか?」

「……遥輝。」

俺の言葉に、遊馬が静かに目を細める。
そして、一度だけ頷いた。

「……わかった。ここで終わらせよう。」

***

「なるほどな。」

俺たちの前に立つ組長は、まるで全てを見透かすような目をしていた。
その隣には十文字が立っている。

「ここで決着をつけるつもりか、遊馬?」

「ああ、そうだ。」

遊馬の声は、雨の音にも負けないほど強かった。

「俺はもう組の人間じゃねぇ。遥輝と生きる、それが俺の答えだ。」

組長は静かに目を閉じると、やがて笑った。

「——面白い。お前が本気なら、俺も本気で応えてやる。」

組長が手を挙げると、十文字が一歩前に出た。
その目は鋭く、冷酷な殺気を帯びている。

「お前ら二人、ここで終わらせてやる。」

次の瞬間——

十文字がナイフを抜き、遊馬へと飛びかかった!

「遊馬!!」

俺の叫びと同時に、遊馬が身をかわし、十文字の腕を掴む。
鋭い刃が雨を切り裂く。

(くそっ……俺も戦わなきゃ!)

俺は足元に落ちていた鉄パイプを握りしめ、十文字へと向かっていった。

「遥輝、下がれ!」

「無理だ!俺も戦う!」

遊馬と十文字が組み合い、ナイフの刃が閃く。
俺は必死で遊馬の背中を守るように、迫り来る手下たちを殴りつけた。

「チッ……!」

十文字が再びナイフを振りかざした瞬間、遊馬の拳が正面から叩き込まれた。
鋭い音が響き、十文字の体が後ろへと吹き飛ぶ。

「ぐっ……!」

地面に倒れ込んだ十文字が苦しげに息を吐く。
その顔には、信じられないという表情が浮かんでいた。

「終わりだよ、十文字。」

俺は鉄パイプを構えながら言った。

「お前がどんな理由で俺を組に引き込もうとしたのか、もう関係ない。俺は、遊馬と生きるって決めたんだ。」

十文字はしばらく俺を見つめていたが——やがて、力なく笑った。

「……チッ。お前ら、意外とやるじゃねぇか。」

遊馬がナイフを蹴り飛ばし、十文字を完全に無力化する。

「……さて、あとは——」

遊馬が組長へと目を向けた。

だが、組長はただ静かに立っていた。
そして、ふっと笑った。

「……もういい。」

「え?」

俺と遊馬は思わず顔を見合わせる。

「お前たちの覚悟はわかった。遊馬、お前はもう組の人間じゃない。それでいい。」

「……組長。」

「だが、覚えておけ。」

組長は鋭い目で遊馬を見つめる。

「組を抜けるということは、俺の庇護もなくなるということだ。これからの人生、すべて自分で背負って生きろ。」

遊馬は、わずかに表情を引き締めた。

「……わかってる。」

「……お前もだ、遥輝。」

俺も息を呑んだ。

「お前は、遊馬の選んだ道に寄り添う覚悟があるのか?」

俺は、その問いに真っ直ぐに答えた。

「はい。俺は、遊馬と生きます。」

組長は一瞬だけ目を細め、そして、やがて背を向けた。

「行け。」

それが、最後の言葉だった。

***

雨は、いつの間にか止んでいた。
俺たちは並んで歩きながら、ゆっくりと夜の街を抜けていく。

「……終わったな。」

遊馬がポツリと呟く。

「うん。」

俺は、遊馬の手を握った。

これからの未来が、どんなに困難だとしても——

「俺たちは、一緒に生きていこう。」

遊馬は、静かに笑った。

「……ああ。」

そして、二人は夜の街を歩き続けた。

——これが、俺たちの新しい人生の始まりだった。

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