あなたはカエルの御曹司様

さくらぎしょう

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私達はルームメイト

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 瑞貴との共同生活が始まり、最初の朝を迎える。
 
 昨日あんな事があったばかりで、朝食なんて作ったら、アピールしてると思われ更に気まづくするだろう。
 そう思って、リビングの方から足音が聞こえて来るまでベッドで眠っていた。

 普段は瑞貴が寝ているベッドは、家政婦さんがシーツも全部洗ってくれてるようで、柔軟剤とお日様の良い香りがする。そういえば、たまに感じていた瑞貴の香りもこれだったかも。なんだか瑞貴に包まれてるようで嬉しくなった。
 
 ガタガタとリビングの方から音がし始めた。瑞貴が起きてきたんだ。
 少し時間をズラしてから起きていこうと思っていると、ジュージューと焼く音や、コポコポと沸く音が聞こえ始めた。

 これは……まさか……。

 急いでリビングに飛び出ると、既に着替え終えている瑞貴が、キッチンで朝食を作っていた。

「綾ちゃん、おはよう。よく眠れましたか?」
「お……おはよう」
「朝食出来るから、そこで座って待っててくださいね」
「あ、うん……」

 言われるがまま、私はそのままダイニングテーブルの席に着いてしまった。
 まだぼやけている頭で、キッチンにいる瑞貴を眺めた。穏やかな表情で、手際よく料理をしている。伸びた髪が顔の輪郭を少しシャープに見せていて、イケメンに見える気……もぉ……いや、髪が伸びっぱなしで、マッシュルームがもっさりとしていて、やはりイケメンではないな……。

「コーヒーどうぞ」

 瑞貴は、にこりと笑ってコーヒーを出してくれた。
 イケメンではないが、私はこの笑顔が好きだ。体型だって、抱きついたらふわふわで温かくて気持ち良かった。

 最初の頃は生意気で偉そうな奴だと思っていたけど、最近は癒し系なのかと思うようになってきた。仕事に厳しいだけで、プライベートでは品の良い優し気な物言いだし、こうして朝食まで作ってくれる。
 やっぱりスパダリ??? イケメンって定義だけ取っ払えば。

 瑞貴とのルームシェア生活は、毎朝起きると、朝食がテーブルに準備されていた。
 瑞貴は帰りだけでなく、出社までランニングで行くようになったので、だいぶ早く家を出るようになった。東京駅に着いたら、ランステーションでシャワーを浴びて着替えてから会社に向かうらしい。
 
 会社では、正直面倒くさい。プライベートの可愛らしさなんて微塵もなく、意見や不備の指摘を先輩後輩関係なくズバズバ言うので、課内の女子にはかなり煙たがられていた。
 
「綾子さん、本当尊敬します。あんなクレーマーのトドを毎日相手にして」

 後輩秘書達には、度々そう言われた。

 帰宅は、電車で帰る私の方が早いので、本当は手の込んだ料理を作って待ちたかったが、瑞貴はランニングと筋トレを始めてからは、鶏肉やブロッコリーやゆで卵くらいしか食べなくなっていたので、ただ茹でただけの食べ物をテーブルに並べておく毎日だった。

 それでも、瑞貴は帰ってきてテーブルを見ると、まるでご馳走が準備されているかのような喜びを見せてくれた。そしてそのお礼にと、週末は一緒に買い物に行って、私に着替え用の洋服や生活に必要なものを沢山買ってくれた。
 
 私生活が楽しすぎて、仕事にも張りが生まれていた。
 仕事中の瑞貴は素っ気なかったが、それでも私は気がつけば彼を視線で追いかけている。

 だが……ここ最近、瑞貴を視線で追いかけるのが、私だけではなくなっていた。

「ねえ、トド……じゃなかった、瑞貴君、痩せたよね」
「そうなんです! しかもちょっと……カッコよくないですか?」
「うちの課よりもさ、他部署の女の子達が最近瑞貴君とすれ違うとキャーキャー言ってるの知ってる?」
「仕事も出来るし、私は前からいいなあって思ってましたけどね」
「またまた。っていうかさ、社長の息子だよ? 相手は家同士で選ばれてる人いるって」
「あーん、ですよねー。でもダメもとで押してみようかなー」
 
 瑞貴が痩せてきていることは気がついていたが、毎日ほぼ一日中一緒にいる生活だからか、彼の容姿の変化にそこまで気が付いていなかった。

 瑞貴を見れば、はち切れそうだったスーツは、ゆとりが生まれており、顎周りもスッキリしている。髪の毛は相変わらずボリュームあって、眼鏡もかけているので、顔は見えづらいが、確かに以前よりも堀が深くなり、パーツがハッキリしてきてイケメン化している気もする。

 すると突然瑞貴がこちらに振り向き、視線が合った。
 そして彼は、私の目を見てふんわりとした笑顔を見せてくれた。

 心臓がはち切れるかと思った。
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