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まさか
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その日は、瑞貴の家に帰りたくなくて、退勤後フラフラと自宅アパートに帰ってしまった。瑞貴は、ああ言ってくれたが、モデルのエリカとの関係を否定しなかった事の方が気になって仕方ない。
八頭身美女のあとの今カノは……嫌だなあ……。
久しぶりに帰ったアパートの部屋は、私の今の気持ちを表すかのように空気がよどんでいた。
何をするわけでもなく、呆然と部屋を眺めて過ごしていると、何だか部屋に違和感を感じ始める。
なんか……所々角度が違う気がするような……。
テーブルに置いていたスマホが急に振動をし始め、驚いて我に返る。
着信は瑞貴からだ。
「もしもし……?」
『綾ちゃん? 今どこにいるの?』
「あ……アパート……」
『……わかった。車で迎えに行くから、そのまま待ってて』
「え、瑞貴」
すでに通話は切られていた。
しばらくすると、玄関のドアをノックする音が聞こえ、返事をすれば瑞貴の声が返って来た。
ドアを開ければ、そこには私史上最高のイケメンが立っていた。
「綾ちゃん、何でアパートに帰ったの?」
「いや、何となく……」
「上がってもいい?」
「うん」
なんだかぎこちない空気が流れつつ、瑞貴を家に上げる。瑞貴は部屋に入るなり、立ったまま話を切り出した。
「怒ってるの?」
「……怒ってるわけじゃなくて……瑞貴の過去の女性に嫉妬しちゃう自分がいて……面倒くさい女だと自覚してる。ごめん」
瑞貴は真剣だった表情がはにかむように崩れ出し、私を強く抱きしめた。
「綾ちゃんには申し訳ないけど……それ……嬉しすぎるかな……」
「は?」
「じゃあさ、綾ちゃん、僕は嵯峨のことどう思ってると思う?」
「どうって……迷惑な奴だな、とか」
「ムカつく奴。綾ちゃんの気持ちを一時でも独り占めしてたと思うと、めちゃくちゃむかつくし、嫉妬してる。見た目がいいのも鼻につく。あいつには負けたくないって今は心底思うよ」
「私、嵯峨なんてもう大っ嫌いだけど……」
瑞貴は私の顎を掴み、軽く上に持ち上げた。
「それでも、綾ちゃんのこの唇に、あいつもキスをしたのかとか考えちゃうよ?」
「それは……」
瑞貴は嵯峨に対するやきもちが伝わってくるような、少し乱暴なキスをしてきた。私が息継ぎに少しでも唇を離せば、瑞貴は私の腰に回している手に力を入れ、逃がさないように身体を強く引き寄せる。
そしてまたお互いの唇を重ねると、瑞貴の滾る思いが甘く絡みついてきて、二人の間には甘い吐息混じりの声が漏れ始める。
「僕の方が、綾ちゃんの過去に妬いてるんだから……」
「私は……瑞貴しかもう……こんなに好きなのに……」
次の瞬間だった。
窓ガラスがバリーンッと割れ、互いに一気に現実に引き戻される。
抱き合いながら青ざめて固まり、お互いに心臓が激しく鳴っている。
飛び散ったガラスに目を向ければ、かなり大きな石が転がっていた。
「タチの悪いイタズラ……?」
「綾ちゃん、ここにいてっ」
瑞貴は急いで外に飛び出し、石が投げられたであろう場所に向かって行った。
しばらくすると、玄関扉をノックする音がして、家に警察が尋ねて来た。
「石を投げ入れられて、窓ガラスを割られたとの通報があり来ました」
玄関扉を開けて警察と話していると、すぐに息を切らせた瑞貴も帰って来た。
「ハアハア……僕が、通報しました」
警察が部屋の中を確認し、私はアパートの管理会社に連絡を入れる。今日はもう遅いので、割れた窓は明日管理会社が修理業者を手配してくれることになった。
被害届を出して、警察も帰り、盗まれたら困るものだけ纏めて瑞貴の家に帰る。
車の中で、瑞貴は深刻な顔をして運転していた。
マンションの駐車場に着いても、瑞貴はエンジンを切らず、降りる気配がない。私だけ降りるわけにもいかず、とりあえず瑞貴の動きを待っていると、瑞貴は話を切り出した。
「……犯人さぁ……嵯峨、かも」
「え?!」
「不確かだったから、警察には言えなかったんだけど、綾ちゃんの部屋から出たら、走って行く怪しい男が見えて、すぐに追いかけたんだ。見失ってしまったけど、背中は見えて、でも暗かったし遠目だったからしっかり顔は確認出来てないけど、あの背格好が……嵯峨に似ていた気がして」
「やだ、まさか……だって、嵯峨には私の家教えてないし。大体、何で石を投げてきたの?」
「もちろん違うかもしれない。だけど、万が一の時の為に、綾ちゃんには伝えておいた方がいいかと思って」
「もし、嵯峨だったら……どうやって私の家がわかったの?」
「あとをつけたとか?」
「駅まではつけられると思うけど、瑞貴と出会うまでは基本バスで帰ってたし、徒歩で帰る時は、家の近くまで来たらかなり静かな場所だから、さすがについてくる人がいたら気づきそうだけど……」
「例えば……スマホにGPS入れられてるとか?」
「え゛え゛ッ!?」
八頭身美女のあとの今カノは……嫌だなあ……。
久しぶりに帰ったアパートの部屋は、私の今の気持ちを表すかのように空気がよどんでいた。
何をするわけでもなく、呆然と部屋を眺めて過ごしていると、何だか部屋に違和感を感じ始める。
なんか……所々角度が違う気がするような……。
テーブルに置いていたスマホが急に振動をし始め、驚いて我に返る。
着信は瑞貴からだ。
「もしもし……?」
『綾ちゃん? 今どこにいるの?』
「あ……アパート……」
『……わかった。車で迎えに行くから、そのまま待ってて』
「え、瑞貴」
すでに通話は切られていた。
しばらくすると、玄関のドアをノックする音が聞こえ、返事をすれば瑞貴の声が返って来た。
ドアを開ければ、そこには私史上最高のイケメンが立っていた。
「綾ちゃん、何でアパートに帰ったの?」
「いや、何となく……」
「上がってもいい?」
「うん」
なんだかぎこちない空気が流れつつ、瑞貴を家に上げる。瑞貴は部屋に入るなり、立ったまま話を切り出した。
「怒ってるの?」
「……怒ってるわけじゃなくて……瑞貴の過去の女性に嫉妬しちゃう自分がいて……面倒くさい女だと自覚してる。ごめん」
瑞貴は真剣だった表情がはにかむように崩れ出し、私を強く抱きしめた。
「綾ちゃんには申し訳ないけど……それ……嬉しすぎるかな……」
「は?」
「じゃあさ、綾ちゃん、僕は嵯峨のことどう思ってると思う?」
「どうって……迷惑な奴だな、とか」
「ムカつく奴。綾ちゃんの気持ちを一時でも独り占めしてたと思うと、めちゃくちゃむかつくし、嫉妬してる。見た目がいいのも鼻につく。あいつには負けたくないって今は心底思うよ」
「私、嵯峨なんてもう大っ嫌いだけど……」
瑞貴は私の顎を掴み、軽く上に持ち上げた。
「それでも、綾ちゃんのこの唇に、あいつもキスをしたのかとか考えちゃうよ?」
「それは……」
瑞貴は嵯峨に対するやきもちが伝わってくるような、少し乱暴なキスをしてきた。私が息継ぎに少しでも唇を離せば、瑞貴は私の腰に回している手に力を入れ、逃がさないように身体を強く引き寄せる。
そしてまたお互いの唇を重ねると、瑞貴の滾る思いが甘く絡みついてきて、二人の間には甘い吐息混じりの声が漏れ始める。
「僕の方が、綾ちゃんの過去に妬いてるんだから……」
「私は……瑞貴しかもう……こんなに好きなのに……」
次の瞬間だった。
窓ガラスがバリーンッと割れ、互いに一気に現実に引き戻される。
抱き合いながら青ざめて固まり、お互いに心臓が激しく鳴っている。
飛び散ったガラスに目を向ければ、かなり大きな石が転がっていた。
「タチの悪いイタズラ……?」
「綾ちゃん、ここにいてっ」
瑞貴は急いで外に飛び出し、石が投げられたであろう場所に向かって行った。
しばらくすると、玄関扉をノックする音がして、家に警察が尋ねて来た。
「石を投げ入れられて、窓ガラスを割られたとの通報があり来ました」
玄関扉を開けて警察と話していると、すぐに息を切らせた瑞貴も帰って来た。
「ハアハア……僕が、通報しました」
警察が部屋の中を確認し、私はアパートの管理会社に連絡を入れる。今日はもう遅いので、割れた窓は明日管理会社が修理業者を手配してくれることになった。
被害届を出して、警察も帰り、盗まれたら困るものだけ纏めて瑞貴の家に帰る。
車の中で、瑞貴は深刻な顔をして運転していた。
マンションの駐車場に着いても、瑞貴はエンジンを切らず、降りる気配がない。私だけ降りるわけにもいかず、とりあえず瑞貴の動きを待っていると、瑞貴は話を切り出した。
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「え?!」
「不確かだったから、警察には言えなかったんだけど、綾ちゃんの部屋から出たら、走って行く怪しい男が見えて、すぐに追いかけたんだ。見失ってしまったけど、背中は見えて、でも暗かったし遠目だったからしっかり顔は確認出来てないけど、あの背格好が……嵯峨に似ていた気がして」
「やだ、まさか……だって、嵯峨には私の家教えてないし。大体、何で石を投げてきたの?」
「もちろん違うかもしれない。だけど、万が一の時の為に、綾ちゃんには伝えておいた方がいいかと思って」
「もし、嵯峨だったら……どうやって私の家がわかったの?」
「あとをつけたとか?」
「駅まではつけられると思うけど、瑞貴と出会うまでは基本バスで帰ってたし、徒歩で帰る時は、家の近くまで来たらかなり静かな場所だから、さすがについてくる人がいたら気づきそうだけど……」
「例えば……スマホにGPS入れられてるとか?」
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