21 / 39
20. 陛下降臨 ※改稿26.2.12
しおりを挟む
「まさか……シテないよね?」
目覚めると、私達の顔をのぞき込む伊勢さんの顔が目に飛び込んできた。
口から心臓が飛び出そうになるほどの勢いで私も飛び起きると、セラもびっくりして飛び起きた。
リビングの窓の外は、昨晩の悪天候が嘘みたいにカンカンと太陽が照りつけて晴れあがっているのに、伊勢さんの顔色はかなり悪かった。
私達は抱き合った状態で、リビングのラグの上で寝てしまっていた。
「シテないです」「しました」
同時に出た異なる答えに、目をむいて隣のセラを睨みつけた。
「はあぁぁぁあ!? キスしかしてないでしょーが!!」
セラは伊勢さんと真剣な表情で目を合わせたまま、こちらに振り向かなかった。
「したんだね」
「はい。しました。透子は僕の聖配です」
予想以上に事態が深刻なのか、二人の空気はピリついていた。
「伊勢さん、私も同意したんです。だから、セラだけの責任じゃ——」
言葉の途中で、テーブルの上に置かれていたセラのスマホがブルブルと震え出し、異様な震え方に三人とも会話を止めて視線を向ければ、目が開けられなくなるほど、ありえない光を放った。
段々と光が弱まりだし、薄っすらと目を開けることが出来れば、ヒトのようなシルエットが見え始めた。
「セラドナイト、大事はないか?」
突然現れた女性の姿に、思考が停止した。
艶やかな銀色の長い髪は、フェミニンな色っぽいうねりがあり、しかし気の強そうな眉と、鋭い瞳。女性としては低い声で、言葉遣いは男性のよう。
服装はまるで貴族の部屋着かのように、ピッチリとタイトな黒いズボンと、フリルのついた白シャツを、紳士顔負けに着こなしていた。
リアル……オ◯カル様が現れた。
「フロー……ライトか?」
声を振るわせて、驚いた顔をしている伊勢さんがその女性に聞いた。セラもその女性を見るなり、慌てて指をパチンと鳴らしてTシャツを身につけ、服装を整えた。
「やっと……カイリに辿り着けた」
案外女性らしい笑顔も見せるようで、フローライトと呼ばれる女性は伊勢さんにふんわりと頬を染めて微笑んだ。
が、
女性が手をパンッと叩くと、次の瞬間にはレイピアのような細い青白く光る剣が右手に握られていた。
その光の剣の剣先を、シュッと伊勢さんの喉元にあてると、身震いするほどドスの効いた声を出す。
「貴様……無様にも二十年以上も異世界に飛ばされていたとは……」
伊勢さんは両手をあげてたじろいだ。
「ま、待て、フローライト。私は君と違って魔法は使えない。帰るすべがなかったんだ」
「だから私が見つけてやって、こうしてセラドナイトまで迎えにやらせたのだろうがっっつ!!」
「まてまてまてまて、早まるなフローライト」
「それを……お前は……帰らないだと?」
目がやべぇくらい、フローライトさんはお怒りのようだ。
「それにも理由があってだな」
「セラドナイトから報告は受けてるわっ!! 異世界人の娘を一人こちらに残せないという話だろうが!」
「え」
私は驚いて伊勢さんを見た。
「だから、セラドナイトが危険を冒してまで娘を聖配にした。私の大切な弟子が異世界で死んでいたら、お前を呪い殺してやったからな。その娘を連れて帰るぞ」
頭が真っ白になったまま、視線をゆっくりとセラに向けた。
セラは八の字に下げた眉の眉間に皺を寄せながら、私に一度だけ弱々しく首を振った。
「よく聞けフローライト。透子ちゃんはこの世界の人間だ。こちらの生活があるんだよ。透子ちゃんが私から巣立って家庭を築いたあとか、もしくは彼女自身がマギアシア大陸へ行くことを納得しない限りは、私は帰れないとセラドナイトに言ったんだ。彼も、よく理解していた」
伊勢さんはセラに視線を移すと、肩を落とした。
「そう……思ってたよ」
告げられた時の悲痛なセラの表情を見ると、同情なんてしたくないのに胸が締め付けられた。
セラに恋をしたと自覚したあとじゃ、突き放すこともできないじゃない。
フローライトさんは剣先の平らな部分を伊勢さんの頬にあて、ゆっくりと自分の方へ顔の向きを戻させた。
「娘は魔法使いと聖配の契約をしたんだ。二人はもう離れられない。セラドナイトがこちらに戻れば、必然的にこちらについてくる。娘の決心が着くまで、むしろ待ってやった方だ。今すぐ帰るぞ」
「待ってください」
声を出してはみたものの、威圧感のあるフローライトさんと目が合えば、心臓がキュッとなり震えた。
「なんだ」
「う……海に」
「海?」
「セラは友達と海に行く約束があるんです。だから、それまで待って貰えませんか?」
「セラドナイトに友達?」
怖すぎて、もう言葉が出ず、頷くしかなかった。
フローライトさんの圧迫感が薄らぐと、彼女は私からセラに視線を移した。
「本当か?」
「……………………はい」
緊張の沈黙が続いた後、フローライトさんの手から剣が消えた。
「よかろう。それまで、私もここに滞在する」
目覚めると、私達の顔をのぞき込む伊勢さんの顔が目に飛び込んできた。
口から心臓が飛び出そうになるほどの勢いで私も飛び起きると、セラもびっくりして飛び起きた。
リビングの窓の外は、昨晩の悪天候が嘘みたいにカンカンと太陽が照りつけて晴れあがっているのに、伊勢さんの顔色はかなり悪かった。
私達は抱き合った状態で、リビングのラグの上で寝てしまっていた。
「シテないです」「しました」
同時に出た異なる答えに、目をむいて隣のセラを睨みつけた。
「はあぁぁぁあ!? キスしかしてないでしょーが!!」
セラは伊勢さんと真剣な表情で目を合わせたまま、こちらに振り向かなかった。
「したんだね」
「はい。しました。透子は僕の聖配です」
予想以上に事態が深刻なのか、二人の空気はピリついていた。
「伊勢さん、私も同意したんです。だから、セラだけの責任じゃ——」
言葉の途中で、テーブルの上に置かれていたセラのスマホがブルブルと震え出し、異様な震え方に三人とも会話を止めて視線を向ければ、目が開けられなくなるほど、ありえない光を放った。
段々と光が弱まりだし、薄っすらと目を開けることが出来れば、ヒトのようなシルエットが見え始めた。
「セラドナイト、大事はないか?」
突然現れた女性の姿に、思考が停止した。
艶やかな銀色の長い髪は、フェミニンな色っぽいうねりがあり、しかし気の強そうな眉と、鋭い瞳。女性としては低い声で、言葉遣いは男性のよう。
服装はまるで貴族の部屋着かのように、ピッチリとタイトな黒いズボンと、フリルのついた白シャツを、紳士顔負けに着こなしていた。
リアル……オ◯カル様が現れた。
「フロー……ライトか?」
声を振るわせて、驚いた顔をしている伊勢さんがその女性に聞いた。セラもその女性を見るなり、慌てて指をパチンと鳴らしてTシャツを身につけ、服装を整えた。
「やっと……カイリに辿り着けた」
案外女性らしい笑顔も見せるようで、フローライトと呼ばれる女性は伊勢さんにふんわりと頬を染めて微笑んだ。
が、
女性が手をパンッと叩くと、次の瞬間にはレイピアのような細い青白く光る剣が右手に握られていた。
その光の剣の剣先を、シュッと伊勢さんの喉元にあてると、身震いするほどドスの効いた声を出す。
「貴様……無様にも二十年以上も異世界に飛ばされていたとは……」
伊勢さんは両手をあげてたじろいだ。
「ま、待て、フローライト。私は君と違って魔法は使えない。帰るすべがなかったんだ」
「だから私が見つけてやって、こうしてセラドナイトまで迎えにやらせたのだろうがっっつ!!」
「まてまてまてまて、早まるなフローライト」
「それを……お前は……帰らないだと?」
目がやべぇくらい、フローライトさんはお怒りのようだ。
「それにも理由があってだな」
「セラドナイトから報告は受けてるわっ!! 異世界人の娘を一人こちらに残せないという話だろうが!」
「え」
私は驚いて伊勢さんを見た。
「だから、セラドナイトが危険を冒してまで娘を聖配にした。私の大切な弟子が異世界で死んでいたら、お前を呪い殺してやったからな。その娘を連れて帰るぞ」
頭が真っ白になったまま、視線をゆっくりとセラに向けた。
セラは八の字に下げた眉の眉間に皺を寄せながら、私に一度だけ弱々しく首を振った。
「よく聞けフローライト。透子ちゃんはこの世界の人間だ。こちらの生活があるんだよ。透子ちゃんが私から巣立って家庭を築いたあとか、もしくは彼女自身がマギアシア大陸へ行くことを納得しない限りは、私は帰れないとセラドナイトに言ったんだ。彼も、よく理解していた」
伊勢さんはセラに視線を移すと、肩を落とした。
「そう……思ってたよ」
告げられた時の悲痛なセラの表情を見ると、同情なんてしたくないのに胸が締め付けられた。
セラに恋をしたと自覚したあとじゃ、突き放すこともできないじゃない。
フローライトさんは剣先の平らな部分を伊勢さんの頬にあて、ゆっくりと自分の方へ顔の向きを戻させた。
「娘は魔法使いと聖配の契約をしたんだ。二人はもう離れられない。セラドナイトがこちらに戻れば、必然的にこちらについてくる。娘の決心が着くまで、むしろ待ってやった方だ。今すぐ帰るぞ」
「待ってください」
声を出してはみたものの、威圧感のあるフローライトさんと目が合えば、心臓がキュッとなり震えた。
「なんだ」
「う……海に」
「海?」
「セラは友達と海に行く約束があるんです。だから、それまで待って貰えませんか?」
「セラドナイトに友達?」
怖すぎて、もう言葉が出ず、頷くしかなかった。
フローライトさんの圧迫感が薄らぐと、彼女は私からセラに視線を移した。
「本当か?」
「……………………はい」
緊張の沈黙が続いた後、フローライトさんの手から剣が消えた。
「よかろう。それまで、私もここに滞在する」
5
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて
ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」
お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。
綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。
今はもう、私に微笑みかける事はありません。
貴方の笑顔は別の方のもの。
私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。
私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。
ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか?
―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。
※ゆるゆる設定です。
※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」
※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド
グリモワールの塔の公爵様【18歳Ver】
屋月 トム伽
恋愛
18歳になり、結婚が近いと思われたプリムローズは、久しぶりに王都の邸にいる婚約者に会いに行っていた。
だけど、義姉クレアと婚約者ジャンのベッドインを目撃してしまい、婚約破棄されてしまったプリムローズ。
プレスコット伯爵家から追い出すための名目で、金持ちの子爵様に売られるも同然の後妻に入ることになったプリムローズ。
そんなある日、夜会で出会ったクライド・レイヴンクロフト次期公爵様から結婚をもうしこまれる。
しかし、クライドにはすでに親の決めた婚約者がおり、第2夫人でいいなら……と、言われる。
後妻に入るよりは、第2夫人のほうがマシかもとか思っていると、約束だ、と頬にキスをされた。
「必ず迎え入れる」と約束をしたのだ。
でも、クライドとのデートの日にプリムローズは来なかった。
約束をすっぽかされたと思ったクライドは、その日から一向にプリムローズと会うことはなかった。
時折出す手紙のやり取り。プリムローズがどうしたいのかわからないクライドは困惑していた。
そして、プレスコット家での現状を知り、クライドはプリムローズをプレスコット伯爵邸から連れ出し、グリモワールの塔に連れて行き……。
最初は、形だけの結婚のつもりかと思っていたのに、公爵様はひどく甘く、独占欲の固まりだった。
※以前投稿してました作品を【18歳Ver】に書き直したものです。
【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました
藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】
※ヒーロー目線で進んでいきます。
王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。
ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。
不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。
才能を開花させ成長していくカティア。
そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。
立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。
「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」
「これからも、私の隣には君がいる」
甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
悪女と呼ばれた王妃
アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。
処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。
まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。
私一人処刑すれば済む話なのに。
それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。
目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。
私はただ、
貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。
貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、
ただ護りたかっただけ…。
だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ ゆるい設定です。
❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。
軽薄公爵のお気に入り
宝月 蓮
恋愛
ゼーラント伯爵令嬢イリスは、社交界デビューしたばかり。姉のリンデに守られながら社交界に慣れていく中、軽薄公爵と噂され、未亡人や未婚の令嬢と浮き名を流すルーヴェン公爵家の若き当主、ヤンと知り合う。
軽薄だと噂されているヤンだが、イリスは彼がそのような人物だとは思えなかった。
イリスはヤンと交流していくうちに、彼に惹かれ、そして彼が過去に何かあったのだと気付き……?
過去作『返り咲きのヴィルヘルミナ』と繋がりがありますが、お読みでなくても楽しめるようになっています。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
Marry Me?
美凪ましろ
恋愛
――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。
仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。
不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。
※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。
※彼の過去だけ、ダークな描写があります。
■画像は、イトノコさまの作品です。
https://www.pixiv.net/artworks/85809405
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる