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最終話
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「フィガロ、見て! また皺が増えたの!」
柔らかな日差しの降り注ぐ、ガレアータ帝国皇帝の城の庭では、漆黒の髪をまとめ髪にし、華やかな大人の女性へと成長したセラフィーナが、向かいの席に座るフィガロへ目元の皺を指差して見せた。
「良く見えないな? もっと近寄って見せて」
何気ない会話の声でさえ、セラフィーナの胸の奥まで響き、肌を一瞬粟立たせる、落ち着いた低い声が返って来た。その声はどんな魔法なのだろうと、セラフィーナはたまにその声が発せられる喉元を見るが、くっきりと主張する喉ぼとけが上下に動く様子が妙に色っぽくて、余計に顔を赤くして目を逸らしてしまう。
声変わりしたフィガロの声は、九百年も生きたセラフィーナにも感じたことのないうずきを覚えさせた。
フィガロは妖精クロノアに成長させられた時よりも身長はさらに伸び、セラフィーナよりも長生きするために身体を鍛えていれば、中性的だったアンジェロ大帝のような姿は今はまったくの別人で、シルバーブロンドの髪は短く揃えた、兵士達に負けないほどがっちりとした体形の爽やかな青年へと成長していた。
フィガロはテーブルに両肘をついてセラフィーナに顔を近づけた。その視線はやけに甘くセラフィーナに注がれている。
「ほら、どこに皺が?」
セラフィーナは平静を装うのに必死だった。
「ほっ……ほら、ここよ、フィガロ。可愛らしい皺が増えたでしょ?」
セラフィーナもほんの少し前かがみになり、フィガロに顔を近づければ、フィガロは身を乗り出してその唇にキスをした。
「ああ、今日も本当に可愛らしくて、愛しいよ」
セラフィーナはフィガロの顔を手で押しのけ、赤くなった顔を更に赤くしてぷんすかと頬を膨らませる。
「私は真面目に言ってるのに」
フィガロ皇子は嬉しそうに、セラフィーナに押しのけられた顔に手をあてて笑っていた。
「私も真面目だよ。歳を重ねるたびにセラフィーナへの愛が深まって仕方ないんだ」
「それはありがとうございます」
セラフィーナは揶揄われていることに拗ね、真っ赤になった顔を横に向けた。
「ねえ、こっち向いてよ」
「いやよ」
「いいよ、じゃあ」
フィガロは立ち上がり、セラフィーナのもとまで近づくと、そっと頬を指で撫でた。優しく、慈しむように、思いの丈を指先にのせ、愛を伝える。
セラフィーナがゆっくりとフィガロに顔を向き直すと、目が合ったフィガロはにっこりと笑い、そのまま転移した。
転移した先は、新緑のそよぐ並木道。セラフィーナが長い間暮らし、アンジェロやレンツォや彼の家族が何世代も受け継ぎ自分を守ってくれていた場所。そして、最愛のフィガロと出会えた場所。
少し強い風が吹き抜ければ、木々の葉が重なり合いざわめく。緑の合唱の合間をぬって、どこからか、小さな「ドゥアアッ」と鳴き声が聞こえた。
「変わった鳴き声の鳥ね」
セラフィーナが聞き覚えのあるような、ないような、そんな鳴き声に首を傾げると、今度は輪唱するように「ドゥアア」「ドゥアア」「ドゥアア」と鳴き声が響いた。
真っ白な腹をした茶色い羽の鷹が、嘴に餌を咥えて木々の中に飛び込んで行った。
「鷹の雛鳥がいるのね」
そう納得しているそばから、シャドウが視界に現れ、嘴一杯にレリオの作った特製の餌を咥えて鷹と同じ木々の間に消えて行った。
「え、まさか」
セラフィーナが目をぱちぱちと瞬き、隣に立つフィガロを見上げた。その間にも「ドゥアア」「ドゥアア」と可愛い雛鳥の鳴き声は響く。
「シャドウが全然姿を現さなくなったと思っていたら、どうやら恋や出産や子育てで忙しかったみたいなんだ」
「まあ、シャドウがお父さんなの?」
セラフィーナは両手で口元をおさえ、感慨深そうに視線を木々の奥深くに向けた。
「それとね、君に会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
フィガロはセラフィーナの手を取り、歩みを進める。転移すれば早いのに、風のそよぐ一本道をセラフィーナと手を取り合って歩きたい気分なのだ。
白い石造りの門柱が見えてくるが、刻まれていたあの魔法陣はもうなかった。セラフィーナは自分を置いて過ぎ去ってしまった大切な人々を思い出し、少し侘しさを感じた。
彼女の表情を見てフィガロは察したのか、セラフィーナの肩にそっと腕を回して抱き寄せ温めた。
「ほら、来たよ」
セラフィーナは俯いた顔を上げて、フィガロの指し示す方向に顔を向ければ、懐かしいレンツォとその妻がこちらに向かって歩いてきた。
「やだ違うに決まってる……あれはレンツォの子孫、レリオじゃない。だけど、妻が……違う、あれは……」
セラフィーナはフィガロと目を合わせて破顔した。
「見つかったのね!!」
レリオが連れてきたのは、行方不明になっていたマリエッタだった。
マリエッタはバルトロ消滅後、ジョアン皇子の処分に伴い婚約解消となり、フィガロを裏切ったことはジョアン皇子の護衛達の会話から瞬く間に話が広がり、貴族達から不幸を呼ぶ女と呼ばれ、マリエッタの両親も併せて貴族社会から孤立した。
フィガロが何度も会いに行ったが扉を開けて貰えず、手紙も返事がないまま、ひっそりと一人で消えてしまった。両親も頑なに行先を教えてくれず、フィガロはレンツォと一緒に国中を探していた。
「こ……皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶申し上げます」
マリエッタの細くなったあごや腕を見れば、彼女がこの十数年をどれだけ苦しみ苦労していたかが伺えた。
フィガロは駆け寄り、マリエッタを抱きしめる。
「マリエッタ、すぐに見つけられずすまなかった」
「陛下、見つからないようにしていたのは私です」
フィガロがマリエッタから離れると、今度はセラフィーナがマリエッタの手を握り締めた。
「一度お会いしたけど、ちゃんとした挨拶はこれが初めてね。私はセラフィーナ・モレッティ・ロッシ・ヴァレリアーニ。ふふ、出会った時からだいぶ名前が増えてしまったわ。フィガロの妻で、あなたを懐かしく思う者です」
「私を懐かしく……?」
セラフィーナはマリエッタを通して遠い遠い過去を遡る。
「あなたを見ていると思い出す人がいるんです。誰もが私に近づかなくなっていった時に、私のそばにいてくれた侍女に」
「はあ」
マリエッタはただ唖然とセラフィーナからなぜか降り注がれる感謝の念を受け止めるしかなかった。
「巡り巡って、今私が返す番です。どうかマリエッタ、私の侍女になって貰えないかしら?」
「それは、恐れ多すぎます。罪人の私が皇后陛下の侍女だなんて」
「何の罪があなたにあるの? 裁かれたのはドロバンディ一族で、あなたは記録にないでしょ?」
「皇帝陛下を裏切りました」
「許す」
間髪入れずにフィガロが許した。
フィガロは跪き、セラフィーナが握るマリエッタの手に自分の手も添えた。レリオまでも、マリエッタを支えるように肩を抱き寄せる。
マリエッタはいくつも自分に重なる温かさに、苦しいくらい熱い感情が込み上げて来ていた。
フィガロは今にも泣き出しそうなマリエッタを優しく見つめ、魔法のような声色で語り掛ける。
「許すよ。別に何も怒ってないけど、許しが必要ならいくらでも君を許す。むしろ、ずっと君と親友であり、兄妹でいられる許しを私が乞うよ」
「殿下……ああ、違う、陛下」
「もうフィガロでいいんだよ。ずっと被っていた殻を捨てて、真実の瞳を見せて。これからは君らしく生きたらいい。私達が支える」
マリエッタの瞳からは涙が溢れた。姿を消してからも大切にポケットに入れ続けていたフィガロと使ったコインは、もう取り出す必要がなさそうだった。そう感じながら、今までの感謝を手のひらに込めて、マリエッタはポケットをさする。
セラフィーナはあの部屋の窓を見上げた。
今は一般公開された封印の部屋。毎日のように誰かが部屋を訪れているとレリオから聞く。
扉を開けてくれたフィガロに視線を移すと、いつの間にかフィガロは自分を見つめていた。
「やだ、ずっと見てたの?」
「もちろん、ずっと見てるよ。私はどこにもいかない。だから、安心して」
セラフィーナは微笑みながら空を仰ぐ。心には過ぎ去った人々や、今を共に生きる大切な人たちの想いが深く刻まれてゆく。
「ありがとう」
END
柔らかな日差しの降り注ぐ、ガレアータ帝国皇帝の城の庭では、漆黒の髪をまとめ髪にし、華やかな大人の女性へと成長したセラフィーナが、向かいの席に座るフィガロへ目元の皺を指差して見せた。
「良く見えないな? もっと近寄って見せて」
何気ない会話の声でさえ、セラフィーナの胸の奥まで響き、肌を一瞬粟立たせる、落ち着いた低い声が返って来た。その声はどんな魔法なのだろうと、セラフィーナはたまにその声が発せられる喉元を見るが、くっきりと主張する喉ぼとけが上下に動く様子が妙に色っぽくて、余計に顔を赤くして目を逸らしてしまう。
声変わりしたフィガロの声は、九百年も生きたセラフィーナにも感じたことのないうずきを覚えさせた。
フィガロは妖精クロノアに成長させられた時よりも身長はさらに伸び、セラフィーナよりも長生きするために身体を鍛えていれば、中性的だったアンジェロ大帝のような姿は今はまったくの別人で、シルバーブロンドの髪は短く揃えた、兵士達に負けないほどがっちりとした体形の爽やかな青年へと成長していた。
フィガロはテーブルに両肘をついてセラフィーナに顔を近づけた。その視線はやけに甘くセラフィーナに注がれている。
「ほら、どこに皺が?」
セラフィーナは平静を装うのに必死だった。
「ほっ……ほら、ここよ、フィガロ。可愛らしい皺が増えたでしょ?」
セラフィーナもほんの少し前かがみになり、フィガロに顔を近づければ、フィガロは身を乗り出してその唇にキスをした。
「ああ、今日も本当に可愛らしくて、愛しいよ」
セラフィーナはフィガロの顔を手で押しのけ、赤くなった顔を更に赤くしてぷんすかと頬を膨らませる。
「私は真面目に言ってるのに」
フィガロ皇子は嬉しそうに、セラフィーナに押しのけられた顔に手をあてて笑っていた。
「私も真面目だよ。歳を重ねるたびにセラフィーナへの愛が深まって仕方ないんだ」
「それはありがとうございます」
セラフィーナは揶揄われていることに拗ね、真っ赤になった顔を横に向けた。
「ねえ、こっち向いてよ」
「いやよ」
「いいよ、じゃあ」
フィガロは立ち上がり、セラフィーナのもとまで近づくと、そっと頬を指で撫でた。優しく、慈しむように、思いの丈を指先にのせ、愛を伝える。
セラフィーナがゆっくりとフィガロに顔を向き直すと、目が合ったフィガロはにっこりと笑い、そのまま転移した。
転移した先は、新緑のそよぐ並木道。セラフィーナが長い間暮らし、アンジェロやレンツォや彼の家族が何世代も受け継ぎ自分を守ってくれていた場所。そして、最愛のフィガロと出会えた場所。
少し強い風が吹き抜ければ、木々の葉が重なり合いざわめく。緑の合唱の合間をぬって、どこからか、小さな「ドゥアアッ」と鳴き声が聞こえた。
「変わった鳴き声の鳥ね」
セラフィーナが聞き覚えのあるような、ないような、そんな鳴き声に首を傾げると、今度は輪唱するように「ドゥアア」「ドゥアア」「ドゥアア」と鳴き声が響いた。
真っ白な腹をした茶色い羽の鷹が、嘴に餌を咥えて木々の中に飛び込んで行った。
「鷹の雛鳥がいるのね」
そう納得しているそばから、シャドウが視界に現れ、嘴一杯にレリオの作った特製の餌を咥えて鷹と同じ木々の間に消えて行った。
「え、まさか」
セラフィーナが目をぱちぱちと瞬き、隣に立つフィガロを見上げた。その間にも「ドゥアア」「ドゥアア」と可愛い雛鳥の鳴き声は響く。
「シャドウが全然姿を現さなくなったと思っていたら、どうやら恋や出産や子育てで忙しかったみたいなんだ」
「まあ、シャドウがお父さんなの?」
セラフィーナは両手で口元をおさえ、感慨深そうに視線を木々の奥深くに向けた。
「それとね、君に会わせたい人がいるんだ」
「会わせたい人?」
フィガロはセラフィーナの手を取り、歩みを進める。転移すれば早いのに、風のそよぐ一本道をセラフィーナと手を取り合って歩きたい気分なのだ。
白い石造りの門柱が見えてくるが、刻まれていたあの魔法陣はもうなかった。セラフィーナは自分を置いて過ぎ去ってしまった大切な人々を思い出し、少し侘しさを感じた。
彼女の表情を見てフィガロは察したのか、セラフィーナの肩にそっと腕を回して抱き寄せ温めた。
「ほら、来たよ」
セラフィーナは俯いた顔を上げて、フィガロの指し示す方向に顔を向ければ、懐かしいレンツォとその妻がこちらに向かって歩いてきた。
「やだ違うに決まってる……あれはレンツォの子孫、レリオじゃない。だけど、妻が……違う、あれは……」
セラフィーナはフィガロと目を合わせて破顔した。
「見つかったのね!!」
レリオが連れてきたのは、行方不明になっていたマリエッタだった。
マリエッタはバルトロ消滅後、ジョアン皇子の処分に伴い婚約解消となり、フィガロを裏切ったことはジョアン皇子の護衛達の会話から瞬く間に話が広がり、貴族達から不幸を呼ぶ女と呼ばれ、マリエッタの両親も併せて貴族社会から孤立した。
フィガロが何度も会いに行ったが扉を開けて貰えず、手紙も返事がないまま、ひっそりと一人で消えてしまった。両親も頑なに行先を教えてくれず、フィガロはレンツォと一緒に国中を探していた。
「こ……皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶申し上げます」
マリエッタの細くなったあごや腕を見れば、彼女がこの十数年をどれだけ苦しみ苦労していたかが伺えた。
フィガロは駆け寄り、マリエッタを抱きしめる。
「マリエッタ、すぐに見つけられずすまなかった」
「陛下、見つからないようにしていたのは私です」
フィガロがマリエッタから離れると、今度はセラフィーナがマリエッタの手を握り締めた。
「一度お会いしたけど、ちゃんとした挨拶はこれが初めてね。私はセラフィーナ・モレッティ・ロッシ・ヴァレリアーニ。ふふ、出会った時からだいぶ名前が増えてしまったわ。フィガロの妻で、あなたを懐かしく思う者です」
「私を懐かしく……?」
セラフィーナはマリエッタを通して遠い遠い過去を遡る。
「あなたを見ていると思い出す人がいるんです。誰もが私に近づかなくなっていった時に、私のそばにいてくれた侍女に」
「はあ」
マリエッタはただ唖然とセラフィーナからなぜか降り注がれる感謝の念を受け止めるしかなかった。
「巡り巡って、今私が返す番です。どうかマリエッタ、私の侍女になって貰えないかしら?」
「それは、恐れ多すぎます。罪人の私が皇后陛下の侍女だなんて」
「何の罪があなたにあるの? 裁かれたのはドロバンディ一族で、あなたは記録にないでしょ?」
「皇帝陛下を裏切りました」
「許す」
間髪入れずにフィガロが許した。
フィガロは跪き、セラフィーナが握るマリエッタの手に自分の手も添えた。レリオまでも、マリエッタを支えるように肩を抱き寄せる。
マリエッタはいくつも自分に重なる温かさに、苦しいくらい熱い感情が込み上げて来ていた。
フィガロは今にも泣き出しそうなマリエッタを優しく見つめ、魔法のような声色で語り掛ける。
「許すよ。別に何も怒ってないけど、許しが必要ならいくらでも君を許す。むしろ、ずっと君と親友であり、兄妹でいられる許しを私が乞うよ」
「殿下……ああ、違う、陛下」
「もうフィガロでいいんだよ。ずっと被っていた殻を捨てて、真実の瞳を見せて。これからは君らしく生きたらいい。私達が支える」
マリエッタの瞳からは涙が溢れた。姿を消してからも大切にポケットに入れ続けていたフィガロと使ったコインは、もう取り出す必要がなさそうだった。そう感じながら、今までの感謝を手のひらに込めて、マリエッタはポケットをさする。
セラフィーナはあの部屋の窓を見上げた。
今は一般公開された封印の部屋。毎日のように誰かが部屋を訪れているとレリオから聞く。
扉を開けてくれたフィガロに視線を移すと、いつの間にかフィガロは自分を見つめていた。
「やだ、ずっと見てたの?」
「もちろん、ずっと見てるよ。私はどこにもいかない。だから、安心して」
セラフィーナは微笑みながら空を仰ぐ。心には過ぎ去った人々や、今を共に生きる大切な人たちの想いが深く刻まれてゆく。
「ありがとう」
END
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※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
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長編投稿ありがとうございました🙇
いつも思うのですが、読んでいてその風景の温かさや素敵さ、人物それぞれが魅力的に表現できるのスゴいですよね✴
その表現力ゆえにバルトロがコワくて『早くいなくなってー!!』と思ってました笑
最終話の投稿は、終わっちゃった…という寂しい想いと大変な思いをしてきた人達が幸せそうで嬉しいって気持ちで、感情が大変です😄
作品を作り上げるのは大変かと思いますが、また投稿されるのをお待ちしております💓
ハラハラドキドキでしたが、楽しい時間をありがとうございました💖
mwam様
いつもご感想くださりありがとうございます😭いつも励みにしております。私の稚拙な文章を想像しながら読み解いてくださるmwam様の読解力に感謝と尊敬の念でいっぱいです。
書いている途中で迷宮に入り込み、心折れる瞬間は頻繁にありますが、こうしてリアクションを頂ける読者様は本当に貴重です。
次はお待たせしないよう、ちゃんと完結させてから投稿しようと反省しました💦
次回の投稿もぜひ読みにきて頂けたら嬉しいです。
こんにちは😄
今回は長編だったので、初日から見始めました!
あれこれ少しずつ見え始めて切なくなってます💦
幸せになってもらいたい✴
長短編関係なくどれもドラマチックに情景が浮かぶような作品になっているので、この先も楽しみです💖
暑い日が続いてますが、お身体に気をつけてくださいね😄
mwam様
連載中のご感想、とってもとっても励みになります😭しかも初日から読んでくださってるだなんて…ホロリ。
私もこの作品の24hポイントにはmwam様の足跡が含まれているのだと思いながら頑張ります!!
いつもこうして応援してくださりありがとうございます😊
本当に暑い日が続きますね。mwam様もどうぞご自愛ください。