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15.ボロネーゼ
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ここしばらく、毎日の業務でオーケと調査した内容を精査している。が、行き詰っていた。
オーケは椅子の背もたれに息を吐きながら寄りかかると、天井を見上げて脱力する。
「おい、サンシャイン。気分転換に今日の昼は一緒に外に行かないか? 気分が変われば、何か発見するかもしれない」
私はラミに会いたいので食堂に行きたいと思いつつも、確かに今は気分を変えるべきかもしれない。
「そうですね」
早速机の上を整えて二人で席を立つと、オーケは課の人間に呼び止められ、すぐに処理が必要な案件が入ってくる。
「すまないサンシャイン、すぐ終わるから、先に行って注文しておいて貰えないか?」
「もちろんです。お店とメニューはどうしましょう?」
「そうだなぁ……じゃあ、向かいのラモモ・カフェで、ボロネーゼ大盛りを」
「任せてください!」
私はひと足先に庁舎向かいのラモモ・カフェに向かう。オーケとは食事中もきっと仕事の話中心になると思うので、店内に入ると目立たない奥の席を選んで座った。
オーケの分も含めて注文を済ませると、何もする事もないので、ボーッと窓の外を眺めていれば、背中越しに話し声が聞こえてきた。
「えーっ! ヤーナが? でもだってあんなにかっこいい彼氏いたじゃん」
「しーっ! 声が大きいって。それ表向きの彼氏だよ。恋人は顔、結婚相手は財力って、はっきり言ってたじゃん」
「え、それ、だから今の彼氏の事言ってるんだと思ってたよ。顔も良いし、地方局といえどあの年齢で魔法省の課長だよ? 財力とか問題なくない?」
「ヤーナはそうじゃないんだよ。爵位までは望まないけど、カントリーハウスを持ってて、メイドがいるレベルじゃないと嫌って」
「爵位もないのにカントリーハウス持ってる人って、相当な資本家か豪商でしょ」
「そうそう、それでさ、富裕層男性だけ集めたパーティーで資本家ゲットしたって大喜びだったの」
「すご。じゃ、彼氏さんどーするんだろ」
「キープだって。資本家と結婚決まるまでは」
「やー……彼氏あんなにヤーナにベタ惚れなのに……悲惨」
「まあでもさ、ブラッドショー課長ならさ、フリーになれば狙ってた女性がわんさか押し寄せるだろうし、問題ないんじゃない?」
「えー……そういうもの?」
私は勢いよく立ち上がり、店員さんに代金だけ払って急いで庁舎に戻る。丁度庁舎のエレベーターからオーケが降りて来たので、私はオーケをそのエレベーターにもう一度押し戻し、最上階ボタンを押して扉を閉じるボタンを連打する。
「ラモモは満席でした! 休憩時間がもったいないので、すぐに食堂に行きましょう!!」
「また食堂かよっ!! ぜんっぜん、息抜きにならねえ」
エレベーターの扉が開けば、私は文句を言い続けるオーケの腕を掴み、食堂へと突き進む。
お気に入りの窓際の席が取れ、結局オーケは折れてボロネーゼのパスタを頼み、恨めしそうな目でこちらを見ながら食べていた。私は作り笑いを浮かべてスープパスタを食べる。
「ラモモのボロネーゼが食べたかったなー」
「ここのパスタも絶品ですよ」
「おい、サンシャイン、俺に償え」
「ボロネーゼ一つでそんなに罪ですか?」
「ラモモのが今日は食べたかったんだよ。だから、週末俺に付き合えば許してやる」
「え? 週末ですか?」
オーケは持っていたフォークを皿の上に置き、テーブルに肘を立てて私に手招きする。
「おい、もっと顔、こっちに近づけろ」
向かいの席に座るオーケは、身を乗り出して顔を私に近づけた。
「え? あー……はあ」
もたもたしていたら、オーケの長い腕がにゅっと伸びて来て、私の首筋を掴み手前に引き寄せる。オーケは私の耳元近くで小声で話した。
「お前に手伝って欲しい。サプライズでヤーナに……プロポーズするんだ」
「え゛っ!!」
思わず濁った大きな声を出して、顔をオーケに向ければ、強い力で肩が後ろに引っ張られて、最初の着席位置に戻った。
「お二人さん、近すぎますよ」
私の肩を掴んで引いたのはラミだった。ラミはそのまま私の隣に座り、オーケに微笑んだ。
「週末は僕も空いているんで、お手伝いします」
「はっ?! 聞いてたのかよ!! いいって、お前は」
「ラモモのボロネーゼより、僕のボロネーゼの方が絶対美味しいですよ。侮辱した償いをしてください。週末は行きます。断るなら今後食堂でオーケに出す料理は全て減塩にします」
「なんて奴だ、お前は……」
オーケは椅子の背もたれに息を吐きながら寄りかかると、天井を見上げて脱力する。
「おい、サンシャイン。気分転換に今日の昼は一緒に外に行かないか? 気分が変われば、何か発見するかもしれない」
私はラミに会いたいので食堂に行きたいと思いつつも、確かに今は気分を変えるべきかもしれない。
「そうですね」
早速机の上を整えて二人で席を立つと、オーケは課の人間に呼び止められ、すぐに処理が必要な案件が入ってくる。
「すまないサンシャイン、すぐ終わるから、先に行って注文しておいて貰えないか?」
「もちろんです。お店とメニューはどうしましょう?」
「そうだなぁ……じゃあ、向かいのラモモ・カフェで、ボロネーゼ大盛りを」
「任せてください!」
私はひと足先に庁舎向かいのラモモ・カフェに向かう。オーケとは食事中もきっと仕事の話中心になると思うので、店内に入ると目立たない奥の席を選んで座った。
オーケの分も含めて注文を済ませると、何もする事もないので、ボーッと窓の外を眺めていれば、背中越しに話し声が聞こえてきた。
「えーっ! ヤーナが? でもだってあんなにかっこいい彼氏いたじゃん」
「しーっ! 声が大きいって。それ表向きの彼氏だよ。恋人は顔、結婚相手は財力って、はっきり言ってたじゃん」
「え、それ、だから今の彼氏の事言ってるんだと思ってたよ。顔も良いし、地方局といえどあの年齢で魔法省の課長だよ? 財力とか問題なくない?」
「ヤーナはそうじゃないんだよ。爵位までは望まないけど、カントリーハウスを持ってて、メイドがいるレベルじゃないと嫌って」
「爵位もないのにカントリーハウス持ってる人って、相当な資本家か豪商でしょ」
「そうそう、それでさ、富裕層男性だけ集めたパーティーで資本家ゲットしたって大喜びだったの」
「すご。じゃ、彼氏さんどーするんだろ」
「キープだって。資本家と結婚決まるまでは」
「やー……彼氏あんなにヤーナにベタ惚れなのに……悲惨」
「まあでもさ、ブラッドショー課長ならさ、フリーになれば狙ってた女性がわんさか押し寄せるだろうし、問題ないんじゃない?」
「えー……そういうもの?」
私は勢いよく立ち上がり、店員さんに代金だけ払って急いで庁舎に戻る。丁度庁舎のエレベーターからオーケが降りて来たので、私はオーケをそのエレベーターにもう一度押し戻し、最上階ボタンを押して扉を閉じるボタンを連打する。
「ラモモは満席でした! 休憩時間がもったいないので、すぐに食堂に行きましょう!!」
「また食堂かよっ!! ぜんっぜん、息抜きにならねえ」
エレベーターの扉が開けば、私は文句を言い続けるオーケの腕を掴み、食堂へと突き進む。
お気に入りの窓際の席が取れ、結局オーケは折れてボロネーゼのパスタを頼み、恨めしそうな目でこちらを見ながら食べていた。私は作り笑いを浮かべてスープパスタを食べる。
「ラモモのボロネーゼが食べたかったなー」
「ここのパスタも絶品ですよ」
「おい、サンシャイン、俺に償え」
「ボロネーゼ一つでそんなに罪ですか?」
「ラモモのが今日は食べたかったんだよ。だから、週末俺に付き合えば許してやる」
「え? 週末ですか?」
オーケは持っていたフォークを皿の上に置き、テーブルに肘を立てて私に手招きする。
「おい、もっと顔、こっちに近づけろ」
向かいの席に座るオーケは、身を乗り出して顔を私に近づけた。
「え? あー……はあ」
もたもたしていたら、オーケの長い腕がにゅっと伸びて来て、私の首筋を掴み手前に引き寄せる。オーケは私の耳元近くで小声で話した。
「お前に手伝って欲しい。サプライズでヤーナに……プロポーズするんだ」
「え゛っ!!」
思わず濁った大きな声を出して、顔をオーケに向ければ、強い力で肩が後ろに引っ張られて、最初の着席位置に戻った。
「お二人さん、近すぎますよ」
私の肩を掴んで引いたのはラミだった。ラミはそのまま私の隣に座り、オーケに微笑んだ。
「週末は僕も空いているんで、お手伝いします」
「はっ?! 聞いてたのかよ!! いいって、お前は」
「ラモモのボロネーゼより、僕のボロネーゼの方が絶対美味しいですよ。侮辱した償いをしてください。週末は行きます。断るなら今後食堂でオーケに出す料理は全て減塩にします」
「なんて奴だ、お前は……」
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