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16.約束の週末
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約束の終末、いや週末を迎えた。ラミが私を家まで迎えに来てくれることになり、転移魔法でオーケの自宅まで連れて行ってくれることになった。
パラベリ市の中心部はとてもじゃないけど私の賃金で住めるような場所ではなく、私はギリギリパラベリ市といった下町に住んでいる。この地域は家賃が安いだけあり、階段が多かったり、道が凸凹していたり、細い路地が沢山あったり、たまに下水の臭いがしたりと、街の整備がやや遅れているが、その細い路地にどんな隠れた名店があるかを探すのが楽しかったり、人との距離が近い温かさのある場所でもあり、中々気に入っている。
隙間なく建てられた色とりどりのアパート群の中の一軒、クリームイエローの色をした建物が私の住むアパートで、アパートの玄関扉を開ければ、そこにはラミがすでにおり、私を待っていてくれた。
「ごめんなさい! どれだけ待たせた?!」
「それほど。僕も今着いたところだから」
ラミは両手を広げて微笑んでいる。私はその意味が分からず、首を傾げると、ラミが手を広げたまま手招きする。
「ほら、転移するからこっちへ」
「え? ああ、え? 近くにいないといけないのね」
オーケが以前私一人を転移させた時は、離れた距離でも可能だったが、複数人を同時に転移させる魔法はかなりの魔力が必要で、どうやってするかは知らないし、そんな魔法を使える人を見たことがない。
なので、ラミの手招きが止まるまで一歩ずつ近づいていくと、かなりの至近距離まで来てもなお手招きは止まらなかった。
「えーっと……これ以上近づいたら……」
「じゃあ、僕が近づくよ」
ラミは長い足を一歩踏み出し、そのまま広げていた腕でガバッと私を抱きしめた。
「僕から離れたら次元の彼方で迷子になるから、しっかりつかまって」
ラミの一言に身震いし、羞恥心など捨ててラミに抱き着いた。私の顔はちょうどラミの胸板あたりにあったので、彼の表情は見えなかったが、胸の呼吸の動きでフッと笑ったのがわかった。なぜ笑うのかとラミの顔を下から覗き見ると、ラミも顔を下に向けて私を見ていた。
私を見つめるラミの表情は、春の陽射しの様に穏やかで温かい微笑みで、降り注ぐその視線に、私の頬と胸は温まり始める。
「プルムはかわいいね」
「ええ!?」
心臓がびっくりしている最中にラミが指をパチンッと鳴らし、転移魔法で身体が軽くなったと思えば、一瞬で見知らぬ街に着いていた。私の暮らす下町とは違い、綺麗に区画整理されて均等に一軒家が並んだ、緑も美しい比較的新しい閑静な住宅街であった。
待ち合わせから、一連の流れが速すぎて、もはや先程ラミに言われた言葉も深く考える暇はない。
私は住宅街を見渡す。
「オーケってこんなところに住んでるの?」
「教えて貰った座標はここだから、そうなんだろうね。パラベリ市近郊のファミリー層に人気のベッドタウンだよ」
目の前にあった、大きなガレージのある一軒家の玄関が開き、中からオーケが出て来た。
「なんで抱き合ってんだ?」
私とラミはまだ抱き合っていた。
「え? ラミに複数人転移魔法で連れて来てもらったので」
「複数だろうが、抱き合う必要ないだろ」
その言葉に驚いてラミを見れば、彼はくすくす笑っていた。
オーケは呆れ顔でこちらを見ている。
「おい、いちゃついてないで、今日は俺のプロポーズを手伝うんだろ? 早く家の中入れ」
オーケは私達について来いと手招きしてから、家の中に入って行った。唖然としてまだ立ち尽くしていた私の耳元に、ラミが唇を寄せてきたので心臓が跳ね上がる。
「抱きしめる口実が欲しかったんだ」
耳元で囁かれた甘い声に、びっくりしてラミを見れば、彼は私にウインクしてから先に家の中に入って行った。
温かな春の陽射しは、春一番をビュービュー吹かせて通り過ぎていく。
「やっぱり……結婚詐欺師か?」
心臓が落ち着くまで私は家の中に入れなかった。
パラベリ市の中心部はとてもじゃないけど私の賃金で住めるような場所ではなく、私はギリギリパラベリ市といった下町に住んでいる。この地域は家賃が安いだけあり、階段が多かったり、道が凸凹していたり、細い路地が沢山あったり、たまに下水の臭いがしたりと、街の整備がやや遅れているが、その細い路地にどんな隠れた名店があるかを探すのが楽しかったり、人との距離が近い温かさのある場所でもあり、中々気に入っている。
隙間なく建てられた色とりどりのアパート群の中の一軒、クリームイエローの色をした建物が私の住むアパートで、アパートの玄関扉を開ければ、そこにはラミがすでにおり、私を待っていてくれた。
「ごめんなさい! どれだけ待たせた?!」
「それほど。僕も今着いたところだから」
ラミは両手を広げて微笑んでいる。私はその意味が分からず、首を傾げると、ラミが手を広げたまま手招きする。
「ほら、転移するからこっちへ」
「え? ああ、え? 近くにいないといけないのね」
オーケが以前私一人を転移させた時は、離れた距離でも可能だったが、複数人を同時に転移させる魔法はかなりの魔力が必要で、どうやってするかは知らないし、そんな魔法を使える人を見たことがない。
なので、ラミの手招きが止まるまで一歩ずつ近づいていくと、かなりの至近距離まで来てもなお手招きは止まらなかった。
「えーっと……これ以上近づいたら……」
「じゃあ、僕が近づくよ」
ラミは長い足を一歩踏み出し、そのまま広げていた腕でガバッと私を抱きしめた。
「僕から離れたら次元の彼方で迷子になるから、しっかりつかまって」
ラミの一言に身震いし、羞恥心など捨ててラミに抱き着いた。私の顔はちょうどラミの胸板あたりにあったので、彼の表情は見えなかったが、胸の呼吸の動きでフッと笑ったのがわかった。なぜ笑うのかとラミの顔を下から覗き見ると、ラミも顔を下に向けて私を見ていた。
私を見つめるラミの表情は、春の陽射しの様に穏やかで温かい微笑みで、降り注ぐその視線に、私の頬と胸は温まり始める。
「プルムはかわいいね」
「ええ!?」
心臓がびっくりしている最中にラミが指をパチンッと鳴らし、転移魔法で身体が軽くなったと思えば、一瞬で見知らぬ街に着いていた。私の暮らす下町とは違い、綺麗に区画整理されて均等に一軒家が並んだ、緑も美しい比較的新しい閑静な住宅街であった。
待ち合わせから、一連の流れが速すぎて、もはや先程ラミに言われた言葉も深く考える暇はない。
私は住宅街を見渡す。
「オーケってこんなところに住んでるの?」
「教えて貰った座標はここだから、そうなんだろうね。パラベリ市近郊のファミリー層に人気のベッドタウンだよ」
目の前にあった、大きなガレージのある一軒家の玄関が開き、中からオーケが出て来た。
「なんで抱き合ってんだ?」
私とラミはまだ抱き合っていた。
「え? ラミに複数人転移魔法で連れて来てもらったので」
「複数だろうが、抱き合う必要ないだろ」
その言葉に驚いてラミを見れば、彼はくすくす笑っていた。
オーケは呆れ顔でこちらを見ている。
「おい、いちゃついてないで、今日は俺のプロポーズを手伝うんだろ? 早く家の中入れ」
オーケは私達について来いと手招きしてから、家の中に入って行った。唖然としてまだ立ち尽くしていた私の耳元に、ラミが唇を寄せてきたので心臓が跳ね上がる。
「抱きしめる口実が欲しかったんだ」
耳元で囁かれた甘い声に、びっくりしてラミを見れば、彼は私にウインクしてから先に家の中に入って行った。
温かな春の陽射しは、春一番をビュービュー吹かせて通り過ぎていく。
「やっぱり……結婚詐欺師か?」
心臓が落ち着くまで私は家の中に入れなかった。
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