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僕の記憶
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走った、僕はただ走り続けた。
「どうして…どうして…っ」
涙で目が見えづらくても、足が絡まり転けても、息苦しくても、ただただ走り続ける。
たどり着いた路地、そこは薄暗く風が何もかもを冷やすのように冷たい。
僕はそこに倒れるように座り込んだ。
朦朧とする意識の中、小さく呟く
「…ママ…パパ…」
手足の感覚が無くなり、何故か睡魔が来て瞼が重くなる。
助けを呼ぶにも声は出なく、口すら半開きのまま動かない。
これが死ぬって事かな…
重い瞼を閉じ、僕は眠りについた___…。
「…~…~、~…~…。~…?」
「…~、~…~~、~…~。」
誰かの、声が聞こえる…
話し声が聞こえた。
はっきりとは聞こえないけど会話だ。
その声が誰の声か知りたくて、僕はゆっくりと目を開けた。
「目が覚めたよ…!」
「本当だ…おはよう」
そこには見知らぬ40代くらいの男女。
どうやらここは家のようだ、柔らかい感覚、僕はベッドの上にいる。
2人の顔を交互に見て、誰かと聞こうとするが…
「…だ…ぁ、あ…っ」
上手く声が出ず喋れなかった。
「無理に喋らなくてもいい…ほら、暖かいミルクだ」
柔らかく微笑む男は優しく僕に声をかけ、真っ白なコップに湯気が立ち、ほのかに甘い香りのするホットミルクを飲ませてくれた。
…美味しい。もっと飲みたい、自分で…
でも、まだ手は動かない
重い石が乗っているかのようにずしりと手に重みを感じた。
僕が少し飲みコップから顔を離すと男はコップを近くのテーブルの上に置き
「君、大丈夫か?せめて名前が分かれば…」
と、僕に優しく問いかけ、重く動かない手に男の手を重ねてきた。
「…ぼ…ぼ、くは…」
まだ出づらいが、少し声を発する事ができた。
「…君の、名前は?」
「ぼ、くは…僕、は…僕は…?」
ー分からない、自分の名前が。ー
頭の中が真っ白だ。
覚えているのは、ついさっき目覚めた時からの出来事だけ。
「僕は…誰…?誰…なの…?」
思い出そうとするが分からない、何も。
自分の名前、歳、生まれた日、家族や友達の名前と顔、全部、全部。
「…分からない…僕は…誰…だ、れ…ダ…レ…ッ、ぁ…ぁあぁっ…!」
急に何かで殴られたかのような痛みが頭全体に走り、僕は両手で頭を抑え蹲った。
「君もしかして…記憶がないのかい?」
「記憶…き、おく…分から、ない…僕は、誰…僕は…?記憶、が…ない…?」
僕は目覚めたこの日、これまでの事、全てを忘れていた。
僕は、記憶を無くした___…。
「どうして…どうして…っ」
涙で目が見えづらくても、足が絡まり転けても、息苦しくても、ただただ走り続ける。
たどり着いた路地、そこは薄暗く風が何もかもを冷やすのように冷たい。
僕はそこに倒れるように座り込んだ。
朦朧とする意識の中、小さく呟く
「…ママ…パパ…」
手足の感覚が無くなり、何故か睡魔が来て瞼が重くなる。
助けを呼ぶにも声は出なく、口すら半開きのまま動かない。
これが死ぬって事かな…
重い瞼を閉じ、僕は眠りについた___…。
「…~…~、~…~…。~…?」
「…~、~…~~、~…~。」
誰かの、声が聞こえる…
話し声が聞こえた。
はっきりとは聞こえないけど会話だ。
その声が誰の声か知りたくて、僕はゆっくりと目を開けた。
「目が覚めたよ…!」
「本当だ…おはよう」
そこには見知らぬ40代くらいの男女。
どうやらここは家のようだ、柔らかい感覚、僕はベッドの上にいる。
2人の顔を交互に見て、誰かと聞こうとするが…
「…だ…ぁ、あ…っ」
上手く声が出ず喋れなかった。
「無理に喋らなくてもいい…ほら、暖かいミルクだ」
柔らかく微笑む男は優しく僕に声をかけ、真っ白なコップに湯気が立ち、ほのかに甘い香りのするホットミルクを飲ませてくれた。
…美味しい。もっと飲みたい、自分で…
でも、まだ手は動かない
重い石が乗っているかのようにずしりと手に重みを感じた。
僕が少し飲みコップから顔を離すと男はコップを近くのテーブルの上に置き
「君、大丈夫か?せめて名前が分かれば…」
と、僕に優しく問いかけ、重く動かない手に男の手を重ねてきた。
「…ぼ…ぼ、くは…」
まだ出づらいが、少し声を発する事ができた。
「…君の、名前は?」
「ぼ、くは…僕、は…僕は…?」
ー分からない、自分の名前が。ー
頭の中が真っ白だ。
覚えているのは、ついさっき目覚めた時からの出来事だけ。
「僕は…誰…?誰…なの…?」
思い出そうとするが分からない、何も。
自分の名前、歳、生まれた日、家族や友達の名前と顔、全部、全部。
「…分からない…僕は…誰…だ、れ…ダ…レ…ッ、ぁ…ぁあぁっ…!」
急に何かで殴られたかのような痛みが頭全体に走り、僕は両手で頭を抑え蹲った。
「君もしかして…記憶がないのかい?」
「記憶…き、おく…分から、ない…僕は、誰…僕は…?記憶、が…ない…?」
僕は目覚めたこの日、これまでの事、全てを忘れていた。
僕は、記憶を無くした___…。
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