アメザイクは溶けない

千歳モノ

文字の大きさ
2 / 5

第1話 落ちた紅い石

しおりを挟む


 ポココココッ、
 今年もやってるなー
 海の真上から一瞬飛びかい、舞う太陽の光たち。赤、黄色、白に緑色。たくさんの色が見える。海にはこんなに光るものなんて深海魚か鮮やかな熱帯魚ぐらいだ。
 
バシャッバシャッ、バシャバシャバシャッ

「お母さん………!!!!お母さん!!!助けt…」

 おっと、こんなところで海を叩いている人の子がいるじゃないか。パニックになって足がつくのに溺れていると勘違いしているに違いない。ここは僕が本気を出してあげますか。

 人の子は繊細と聞く。きっと普段大きい人に当たっているせいで気づいてもらえないのだろう。今回はきっと上手くいく。気づいてもらえる。手足でツンツンッと人の子に足を叩く。人の子はパッと冷静になり海を叩くのをやめた。

「だぁれ?僕の足つついたの、」

 まずい、人の子に見つからないようにせねば…
 人の子の足に駆け寄り当たらない程度に近づく。案外気づかれないものだ。

「また来るから待ってて………」

 目の下の二つの穴からたくさんドロッとした液体を垂らしながら人の子は明るい陸へ走った。人とはよく分からないものよ。感情が豊かというべきか、いろんな顔をして面白い。さっきの人の子となれば命の危機なら泣いて、安全だと分かれば泣き止んで走りに行くし、全く見当もつかない。

「さっきの足つついてくれた子、いる?」
 
 人の子が帰ってきた。案外早かったかもしれん。

「これねあげる。僕の好きなリンゴ飴」

 人の子はそう言い、紅くてデカい石を口で噛んで、ペッと海に吐き出した。

「これねきっとね、美味しいよ。教えてくれてありがと、」

 

 やはり、人は変だ。こんな石、食べることも出来ず沈んでしまうだけなのに。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青色のマグカップ

紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。 彼はある思い出のマグカップを探していると話すが…… 薄れていく“思い出”という宝物のお話。

紅薔薇と森の待ち人

石河 翠
児童書・童話
くにざかいの深い森で、貧しい若者と美しい少女が出会いました。仲睦まじく暮らす二人でしたが、森の周辺にはいつしか不穏な気配がただよいはじめます。若者と彼が愛する森を守るために、少女が下した決断とは……。 こちらは小説家になろうにも投稿しております。 表紙は、夕立様に描いて頂きました。

人柱奇譚

木ノ下 朝陽
児童書・童話
ひたすら遣る瀬のない、救いのない物語です。 ※デリケートな方は、閲覧にお気を付けくださいますよう、お願い申し上げます。 昔書いた作品のリライトです。 川端康成の『掌の小説』の中の一編「心中」の雰囲気をベースに、「ファンタジー要素のない小川未明童話」、または「和製O・ヘンリー」的な空気を心掛けながら書きました。

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

だーるまさんがーこーろんだ

辻堂安古市
絵本
友だちがころんだ時に。 君はどうする?

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

悪女の死んだ国

神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。 悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか......... 2話完結 1/14に2話の内容を増やしました

処理中です...