結局恋しちゃうんです

畑 秋香

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13−1 真ん中バースデー

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 気付けば暑さが残り、紅葉が現れだす季節に⋯

「アラタ~、本当にしなくて良かったの?」

 母が擦りつき、父とアカネが不満そうに私を見つめる。

「もういいよ。誕生日祝いは⋯」

 正直、毎年誕生日の為だけに予定を開けるのが面倒臭い。
 楽しいし、嬉しいが⋯面倒なものは面倒なのだ。
 今までは家族が喜ぶから「ありがとう」と言って受け入れていたが就活の時のカナトやアカネの言葉を思い出し、自分を顧みた結果⋯素直になってみることにした。

「でも一八歳だよ?成人年齢だよ?」

「分かってるよ。だからお強請りしてもいい?」

 両親が目を見開いて私を見た。
 それもそうだ⋯一〇歳以降、ハルキ以外には特に物を強請ったことなどないのだから。

「服をさ⋯買い揃えたくて⋯」

 私の服は殆どが中学から着ているものだ。
 体型が大して変わっていないので面倒臭くてそのまま着続けていた。
 流行りやお洒落にそこまで興味はないが⋯何となく、もう少し身なりを整えても良いんじゃないかな?と思ってきたのだ。

「ほんと?長年着てる服を処分して買い直していいってこと?」

 グイグイ近寄って確認してくる母に何度も頷くといきなり三人が同時に立ち上がった。

「行くぞ!」

「どこに?」

「「「服を買いに!」」」

 興奮した家族に連行されて、やって来た隣町の某ファストファッション店。
 お洒落大好きなアカネにされるがまま着せ替え人形となる。
 あまりの着替え回数に目眩を起こして、試着室近くのチェアに座っていると⋯

「えっ、アラタちゃん!?」

 声がした先には深い帽子にマスクをしたカナトがサングラスを顔から外して、立っていた。

「え?こんなとこでどうしたんですか?」

「新しい部屋着を買おうと思って⋯バスに乗って⋯」

 さぞかし目立っただろうなと思いながらカナトの全身に目を向ける。
 うん、必死に隠しててもイケメンが溢れ出てる。意味ないな――と思っているとアカネと両親がまた大量の服を持って戻ってきた。

「あっ!カナト君だ!」

 三人がカナトを取り囲み、私の誕生日プレゼントとして今持っている古い服を全部買い替えに来たと話している。
 すると顔を隠していても分かるほどカナトが楽しそうなオーラを出した。

「俺も選んでいいですか?」

「は?」

「それいいじゃん!一緒に選ぼ!」

 何故かカナトも混ざり、着せ替えタイムが再開する。
 アカネに私のサイズを確認しながら色々持ってくるカナト。

「姉ちゃん、めちゃめちゃ良い!」

「ちゃんとしたら可愛い子なんだけどねぇ」

「服に無頓着なのは俺に似たんだな。申し訳ない」

「うん。やっぱタイトなデザインが似合うね」

 私は一体何回着替えただろうか⋯
 もうヘトヘトでギブアップすると最後に部屋着と寝間着を選び始めた。

「それは買い替えなくていいよ」

「あれだって中学から着てるんだから買い替え対象でしょ。家の中でも可愛い物を着なさい」

 母とアカネが選ぶ物はちゃんと私の好みを考慮したデザインの物で、キチンと私のことを考えてくれているんだと実感できた。

「アラタ、こっち来てくれ」

 父に呼ばれて、靴コーナーに行くと腕を組んで真剣にパンプスを見ているカナトがいた。

「服だけ揃っても靴が合ってなかったら意味ないでしょ?スニーカーとサンダルと冬のブーツの三足しか持ってないって聞いたから」

 余計なことを――と父を睨むと一気に顔を背けやがった。

「足のサイズは?これとこれ、履いてみてくれる?」

 椅子に座って、次は足が着せ替えられる。
 ラフなサンダルと低いヒールのパンプスが二足。
 学校用と普段用のスニーカーがカゴに入り、やっと全てが終わったが⋯
 会計で見た金額に私は一瞬気を失った。

「父さん⋯何平気で支払ってるの?金額ヤバいでしょ⋯」

「何言ってんだ?お前は今までまともにプレゼント強請ってこなかっただろ?服だって今までアカネにはもっと買ってきてんだ。釣り合いを取るならもっと買ってやりたいくらいだぞ?」

 我慢をしてきたつもりはないが親がそんな風に思っているとは思わなかった。
 それにどうせ買い替えなきゃいけない物だし、素直に甘えることにした。

「カナト君も買い物は終わったのかい?」

 ハイ――と返事をして買い物袋を見せるように持ち上げる。

「帰るだけなら乗っていきなさい。その方が安全だろ」

「有り難いです。甘えさせてもらいます」

 ワゴン車の一番後ろに私とカナトが最後に乗り込むと発車した。
 真ん中の席のアカネの横は荷物で溢れ返っていた。

「姉ちゃん、これ見て!」

 アカネが袋からオフホワイトのキャップを出した。

「可愛いね」

「私からのプレゼントね」

 嬉しそうに微笑むアカネにお礼を言うとカナトが帽子を受け取って、私の頭に被せた。

「やっぱその色似合う!私の見立て完璧じゃん!」

 はしゃぐアカネの後にカナトに目を向けると穏やかな表情で静かに座っている。
 会話をする両親と買った物を出しながら楽しそうに話すアカネを見て、まるで家族の空気に浸っているような⋯

「カナトさん、楽しいんですか?」

 優しく細めた目で私を見てくるとマスクと帽子を外し、身軽になる。

「うん。家族団欒ってこんな感じかと思ってね」

 昔を思い出しているのか⋯
 遠い眼差しで言葉を紡いでいく。

「何となくは覚えてるんだよ?両親と出掛けた記憶は。楽しかったことも。死んだ爺ちゃんともよく出掛けたしね。でもそれもすでに思い出の物だから⋯こうやって団欒の中にいさせてもらうとやっぱ気持ちが温かくなっていくよね」

 恥ずかしそうに笑うカナトを妙に可愛く感じて、私も笑みが溢れた。
 前方を見ると手で顔を覆うアカネに肩を震わせる両親が⋯

「カナト君⋯時間はあるかい?」

「え?ハイ⋯大丈夫ですけど⋯」

「母さん、個室のある店探して今すぐ予約して!」

 父に言われて母がスマホを操作する。

「何?どっか行くの?」

「家族で焼肉行くぞ!カナト君も一緒だ!」

 半泣きしているような声で父が叫ぶので思わず笑ってしまった。
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