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第1部:窃盗と盗撮
第1話 赴任初日のHR。
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俺は教壇に立ち、教室中を見渡した。二年二組の顔ぶれを確認し、手許のファイルに目を落とす。昨日までに、半分ほどの児童は把握済みだった。もう既に頭の中へは叩き入れ、名前と顔が凡そ一致するようにはなっている。
「初めまして。今日からみんなの担任になる、新田善道といいます。よろしく」
極めて爽やかに見えるよう心がけ、俺は挨拶をする。ひとりの女の子が、俺のほうを向いて満面の笑みを見せた。
「おはよ、ミッチーせんせ!」
前任者が産休に入るまでの約一週間ほど、引き継ぎのためにクラスを見学していたので、彼ら彼女らとも面識はあった。それどころか校内を案内してくれ、何人かの児童たちとはもう絆を深めていた。俺はファイルの中から、クラス名簿を取り出し、朝の会を始めることにする。
「それでは、出席を取ります。安藤誠くん……」
順番に、児童たちの名前を読み上げていく。男女混合で、五十音順。
出席番号、三番。飯田夏央莉。芸能人でもおかしくない美少女。めっちゃタイプ。特上。
出席番号、四番。井上瑞葉。でも実際は、こっちの冴えない子のほうが芸能人。ドラマで何回か観たことある。中の上。
出席番号、七番。岡本志桜里。クラスで一番の高身長、脚もやたらと長い。上の下。
出席番号、九番。四宮紗羅。家がお金持ちらしく、着ている服も高級そうだ。中の中。
出席番号、十番。鈴木姫冠。いたって普通の苗字にキラキラネーム。ティアラってほどお姫様っぽくもない、庶民顔。下の上。
出席番号、十二番。樋廻心美。動画配信をしていて、赴任が決まってから、何度か観たことがある。上の中。
出席番号、十五番。牧野未來。このクラスで一番の低身長。小っちゃくて、一番ドンピシャな体型。上の中。
出席番号、十六番。村山愛花。黒髪ロングに黒縁眼鏡。いかにも地味系。下の中。
出席番号、十八番。山下明子。デブな上にブス。それ以外に特筆することなし。下の下。
出席番号、二十一番。吉川結実。こっちも太ってはいるが、そこそこ可愛いかも。上の下。
出席番号、二十四番。我妻マリヤ。ロシアとのハーフ。ブロンドが綺麗な美少女。上の上。
男子十三名、女子十一名。計二十四名。欠席者はなし。
特上はただひとり、飯田夏央莉。上の上もひとりだけ、我妻メアリー。上の中はふたり、牧野未來と樋廻心美。上の下もふたり、岡本志桜里と吉川結実。それ以降は……別に気にかけなくてもいいや、などと考えつつ、全員の点呼が終了すると、俺は舌なめずりしたのち、顔を上げる。
読み終えたあとに気がついた。男子の名前は、ファイルと睨めっこして呼んでいるのに、女子の名前だけは、スラスラと口を衝いて出てくる。……あ、やべ。女子の名前と顔しか一致してねえ。半分というのは、そういうことだったのだなと、俺はひとりで納得した。
朝の会のあと、いったん職員室へ戻って必要な教材を持ち、再び二年二組の教室へと向かう。みんなは大人しく、俺が戻って来るまでの間に教科書を準備し、ぴしっと席についていた。「これから一時間目の授業を始めます。礼」と俺が号令をかけ、クラス中の児童たちが一斉に頭を下げる。この場の空気を支配している、この感覚。久しぶりだ。
俺の中の欲求が再び、掻き立てられようとしていた。
「初めまして。今日からみんなの担任になる、新田善道といいます。よろしく」
極めて爽やかに見えるよう心がけ、俺は挨拶をする。ひとりの女の子が、俺のほうを向いて満面の笑みを見せた。
「おはよ、ミッチーせんせ!」
前任者が産休に入るまでの約一週間ほど、引き継ぎのためにクラスを見学していたので、彼ら彼女らとも面識はあった。それどころか校内を案内してくれ、何人かの児童たちとはもう絆を深めていた。俺はファイルの中から、クラス名簿を取り出し、朝の会を始めることにする。
「それでは、出席を取ります。安藤誠くん……」
順番に、児童たちの名前を読み上げていく。男女混合で、五十音順。
出席番号、三番。飯田夏央莉。芸能人でもおかしくない美少女。めっちゃタイプ。特上。
出席番号、四番。井上瑞葉。でも実際は、こっちの冴えない子のほうが芸能人。ドラマで何回か観たことある。中の上。
出席番号、七番。岡本志桜里。クラスで一番の高身長、脚もやたらと長い。上の下。
出席番号、九番。四宮紗羅。家がお金持ちらしく、着ている服も高級そうだ。中の中。
出席番号、十番。鈴木姫冠。いたって普通の苗字にキラキラネーム。ティアラってほどお姫様っぽくもない、庶民顔。下の上。
出席番号、十二番。樋廻心美。動画配信をしていて、赴任が決まってから、何度か観たことがある。上の中。
出席番号、十五番。牧野未來。このクラスで一番の低身長。小っちゃくて、一番ドンピシャな体型。上の中。
出席番号、十六番。村山愛花。黒髪ロングに黒縁眼鏡。いかにも地味系。下の中。
出席番号、十八番。山下明子。デブな上にブス。それ以外に特筆することなし。下の下。
出席番号、二十一番。吉川結実。こっちも太ってはいるが、そこそこ可愛いかも。上の下。
出席番号、二十四番。我妻マリヤ。ロシアとのハーフ。ブロンドが綺麗な美少女。上の上。
男子十三名、女子十一名。計二十四名。欠席者はなし。
特上はただひとり、飯田夏央莉。上の上もひとりだけ、我妻メアリー。上の中はふたり、牧野未來と樋廻心美。上の下もふたり、岡本志桜里と吉川結実。それ以降は……別に気にかけなくてもいいや、などと考えつつ、全員の点呼が終了すると、俺は舌なめずりしたのち、顔を上げる。
読み終えたあとに気がついた。男子の名前は、ファイルと睨めっこして呼んでいるのに、女子の名前だけは、スラスラと口を衝いて出てくる。……あ、やべ。女子の名前と顔しか一致してねえ。半分というのは、そういうことだったのだなと、俺はひとりで納得した。
朝の会のあと、いったん職員室へ戻って必要な教材を持ち、再び二年二組の教室へと向かう。みんなは大人しく、俺が戻って来るまでの間に教科書を準備し、ぴしっと席についていた。「これから一時間目の授業を始めます。礼」と俺が号令をかけ、クラス中の児童たちが一斉に頭を下げる。この場の空気を支配している、この感覚。久しぶりだ。
俺の中の欲求が再び、掻き立てられようとしていた。
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