3 / 3
【前編】
第3話 遭難
しおりを挟む
目の前には、硬く、ゴツゴツとした、冷酷そうな岩肌が見えている。その手前で、俺の顔を覗き込む少女の、柔らかく、滑らかで、温かそうな肌が見えた。視界に入った光が明滅を繰り返し、岩肌に染み入る水滴や、しっとりとした少女の肌を煌めかせている。
まだ状況を呑み込めていない中、ぱちぱちと爆ぜる、小気味の良い音が耳に届く。そこで吹き込む風に煽られ、火が揺らめいていることに気がついた。ここは天国だろうか。それとも地獄だろうか。
「あ。起きた?」少女は安心したように微笑み、テンガのような持ちやすそうな形状をしたボトルを、バーテンダーよろしく振り始めた。ローションよりもドロドロとした白濁液が、雪の結晶よりも綺麗なコップへと注がれていく。「うちの里特製の栄養剤。これ飲んだら元気になるよ」
それを、俺の口元へと持ってくる。うぐっ。吐き出しそうになり、息を止める。顎から垂れた栄養剤が、下半身をすっぽり覆った寝袋に落ちた。それを追って視線も落とすと、焚火の光に照らされて、肌色成分多めの、自分の上半身が目に留まる。
意識しだすと、寝袋のナイロン生地に直接触れている部分が、いつもより敏感に擦れている肌触りを覚え、自分が全裸であることを知った。死に直面して、なんという、欲望丸出しの夢を見ているのだろう。
「お洋服は乾かしてあるよ」
不思議と、この空間に寒さは感じなかった。
この子が、脱がせたのだろうか。いや、それよりも、この子がここまで運んでくれたのだろうか。雪原のど真ん中で倒れたはずで、間違っても洞窟の中ではなかった。こんな、華奢な子が?
袖から伸びる色白い腕は、幼女にとって必要最低限の肉づきをしていた。細すぎず太すぎず、たんまり脂肪がついているわけでもなければ、筋肉質というわけでもない。脱いだらゴリマッチョとかではなさそうだ。
俺の身体を跨いで、少女は仁王立ちする。開けた着物の中には、パンツすら穿いていない。俄かに、着物の帯を解き始める。色の白い内腿から、つけ根までが、一直線に露わとなった。
「ちょっ」
あまりにも突然のことで、思わず童貞根性丸出しの反応を晒し、咄嗟に顔を背けてしまう。ふぁさっという音を立て、寝袋の上に着物が落ちる。こんな真冬に、いったいどうして、全裸になる必要が?
心臓が高鳴るにつれ、血行の巡りがよくなったのか、身体がポカポカとしてくる。目の端には、限りなく白に近い薄橙が、ちらちらと見え隠れした。ドギマギしている俺に、少女は、ぴたっと身を寄せてくる。
「びしゃびしゃの服だと、温まんないから」
雪小屋のエロ漫画で、よく見るシチュエーションだ。でも実際には、服を脱がないほうがいい、みたいな? ことを読んだ記憶もある。乾いた替えの服があればいいが、そんなものは持ち合わせていない。体温を奪われるから、濡れた服を脱ぐのはいいとして、替えがない現状で、裸のまま過ごすのは正解の選択か?
「そ、そんなことしたら風邪ひくよ? いや、それよりももっと大変な……」
「大丈夫。平気」
そうか、大丈夫なのか。このときの俺は当然、理性的などではいられなかった。目の前には全裸の幼女、洞窟による冷気の遮断、焚かれた火、そして保温性の高い寝袋のおかげで、俺の身体は火照り、雪山も忘れ、寝袋のチャックに手を伸ばす。
ふたりで寝袋へ入り、お互いの身を寄せ合った。小さな手が、背中に回された。俺の鼻息で、彼女の髪の毛が靡く。チャックを内側から閉じると、より一層の熱気を帯び、雪山であることを完全に忘れた。サウナのような蒸気に混じり、彼女の芳香が鼻腔を擽る。
ここが八寒地獄で、もうすぐ鬼に拷問されることになったとしても、今この瞬間が幸せなら、それでいい。俺は、そう思った。
まだ状況を呑み込めていない中、ぱちぱちと爆ぜる、小気味の良い音が耳に届く。そこで吹き込む風に煽られ、火が揺らめいていることに気がついた。ここは天国だろうか。それとも地獄だろうか。
「あ。起きた?」少女は安心したように微笑み、テンガのような持ちやすそうな形状をしたボトルを、バーテンダーよろしく振り始めた。ローションよりもドロドロとした白濁液が、雪の結晶よりも綺麗なコップへと注がれていく。「うちの里特製の栄養剤。これ飲んだら元気になるよ」
それを、俺の口元へと持ってくる。うぐっ。吐き出しそうになり、息を止める。顎から垂れた栄養剤が、下半身をすっぽり覆った寝袋に落ちた。それを追って視線も落とすと、焚火の光に照らされて、肌色成分多めの、自分の上半身が目に留まる。
意識しだすと、寝袋のナイロン生地に直接触れている部分が、いつもより敏感に擦れている肌触りを覚え、自分が全裸であることを知った。死に直面して、なんという、欲望丸出しの夢を見ているのだろう。
「お洋服は乾かしてあるよ」
不思議と、この空間に寒さは感じなかった。
この子が、脱がせたのだろうか。いや、それよりも、この子がここまで運んでくれたのだろうか。雪原のど真ん中で倒れたはずで、間違っても洞窟の中ではなかった。こんな、華奢な子が?
袖から伸びる色白い腕は、幼女にとって必要最低限の肉づきをしていた。細すぎず太すぎず、たんまり脂肪がついているわけでもなければ、筋肉質というわけでもない。脱いだらゴリマッチョとかではなさそうだ。
俺の身体を跨いで、少女は仁王立ちする。開けた着物の中には、パンツすら穿いていない。俄かに、着物の帯を解き始める。色の白い内腿から、つけ根までが、一直線に露わとなった。
「ちょっ」
あまりにも突然のことで、思わず童貞根性丸出しの反応を晒し、咄嗟に顔を背けてしまう。ふぁさっという音を立て、寝袋の上に着物が落ちる。こんな真冬に、いったいどうして、全裸になる必要が?
心臓が高鳴るにつれ、血行の巡りがよくなったのか、身体がポカポカとしてくる。目の端には、限りなく白に近い薄橙が、ちらちらと見え隠れした。ドギマギしている俺に、少女は、ぴたっと身を寄せてくる。
「びしゃびしゃの服だと、温まんないから」
雪小屋のエロ漫画で、よく見るシチュエーションだ。でも実際には、服を脱がないほうがいい、みたいな? ことを読んだ記憶もある。乾いた替えの服があればいいが、そんなものは持ち合わせていない。体温を奪われるから、濡れた服を脱ぐのはいいとして、替えがない現状で、裸のまま過ごすのは正解の選択か?
「そ、そんなことしたら風邪ひくよ? いや、それよりももっと大変な……」
「大丈夫。平気」
そうか、大丈夫なのか。このときの俺は当然、理性的などではいられなかった。目の前には全裸の幼女、洞窟による冷気の遮断、焚かれた火、そして保温性の高い寝袋のおかげで、俺の身体は火照り、雪山も忘れ、寝袋のチャックに手を伸ばす。
ふたりで寝袋へ入り、お互いの身を寄せ合った。小さな手が、背中に回された。俺の鼻息で、彼女の髪の毛が靡く。チャックを内側から閉じると、より一層の熱気を帯び、雪山であることを完全に忘れた。サウナのような蒸気に混じり、彼女の芳香が鼻腔を擽る。
ここが八寒地獄で、もうすぐ鬼に拷問されることになったとしても、今この瞬間が幸せなら、それでいい。俺は、そう思った。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる