1 / 7
1
しおりを挟む
聖女、それは国を守り、国の為に死ぬのが役目だった。
聖女は神からの信託を受けて、地に降りたち、地を神の望む方向へと誘導するものであった。
毎日、毎日そう教えられていた。
私は本当の聖女ではない。何故なら、私には歴代の聖女達のように神の声も聞こえなければ、人々を導くなどといった事が向いていなかった。
この国では聖女を探すべく年頃になると、国中の女が聖女かどうかを見極めるテストを受けなければならない。
テストといっても神殿で水晶玉に手をかざすだけ。
この水晶玉は聖なる力をどれほど持っているかが分かるものだ。
私は元々、平民の生まれだった。それもド田舎の農家の娘で家の手伝いとしてよく水やりや草むしりといった簡単な作業をしていた。
年頃になると神殿に行かなければならないが、田舎の平民には首都まで行って帰ってくる金の余裕がない。そのため、簡易的な水晶玉に手をかざす事になっていた。
大神官と名乗るものは田舎と平民が嫌いなようで、嫌々水晶玉に手を次々とかざさせ如何にも早く帰りたいといった表情だった。
「次!」
「ぁ、ぇっとエレーヌで、です 」
「手を水晶玉にかざせ」
「は、はい」
神聖なる儀式だそうで、検査する部屋には大神官と他の新官が沢山、私の周りを囲んでいた。
私は怖くて手が震えながら水晶玉に手をかざした。
「ふん、コイツで最期なのにハズレか。次の村はここから近いのか?」
大神官は気だるそうに他の新官に尋ねると、私の方を見ると
「まだ居たのか、戻れ戻れ」
「だ、大神官様!?す、水晶玉が!!」
パキッ パキッ
パキッ パキッ
まるで卵を割るように縦にヒビが入り、
パッッキーーン
砕け散った
「お、お前!す、水晶玉にひ、ヒビを入れ、壊すなど!?断じてするせん!」
1人の若い新官が私に怒りをぶつけ、殴りかかってきた。
が、若い新官が私を殴るよりも早く、大神官がその者に平手打ちをし、私の前で跪くと
「聖女様になんて事をするのだ!!??
貴方は選ばれし、我が国の聖女でございます。これから国のため、国民のために我々をお導き下さい」
大神官が何を言っているのか分からなかった。しかし、理解出来たのは私を見る目がまるで神を見るかのような眼差しを向けていた。
その日、私の生活は一変した。
私は聖女として修行を積むべく、首都の神殿で今後暮らさなくてはいけないらしい。だが、私は今日の分の草むしりをやっていなかった。
その事を新官達に告げると、「聖女たるものそのような事はなさっては行けません」との事。
大神官は他の大神官と連絡をとり、新聞社に聖女が見つかった事を記事にするように指示した。
生まれ育った村を離れる事になったのは、私が水晶玉に手をかざした30分後だった。
両親とは挨拶もできず、私は村を後にした。見たこともないような立派な馬車にのり、次第に窓の外の村は小さくなっていった。
聖女は神からの信託を受けて、地に降りたち、地を神の望む方向へと誘導するものであった。
毎日、毎日そう教えられていた。
私は本当の聖女ではない。何故なら、私には歴代の聖女達のように神の声も聞こえなければ、人々を導くなどといった事が向いていなかった。
この国では聖女を探すべく年頃になると、国中の女が聖女かどうかを見極めるテストを受けなければならない。
テストといっても神殿で水晶玉に手をかざすだけ。
この水晶玉は聖なる力をどれほど持っているかが分かるものだ。
私は元々、平民の生まれだった。それもド田舎の農家の娘で家の手伝いとしてよく水やりや草むしりといった簡単な作業をしていた。
年頃になると神殿に行かなければならないが、田舎の平民には首都まで行って帰ってくる金の余裕がない。そのため、簡易的な水晶玉に手をかざす事になっていた。
大神官と名乗るものは田舎と平民が嫌いなようで、嫌々水晶玉に手を次々とかざさせ如何にも早く帰りたいといった表情だった。
「次!」
「ぁ、ぇっとエレーヌで、です 」
「手を水晶玉にかざせ」
「は、はい」
神聖なる儀式だそうで、検査する部屋には大神官と他の新官が沢山、私の周りを囲んでいた。
私は怖くて手が震えながら水晶玉に手をかざした。
「ふん、コイツで最期なのにハズレか。次の村はここから近いのか?」
大神官は気だるそうに他の新官に尋ねると、私の方を見ると
「まだ居たのか、戻れ戻れ」
「だ、大神官様!?す、水晶玉が!!」
パキッ パキッ
パキッ パキッ
まるで卵を割るように縦にヒビが入り、
パッッキーーン
砕け散った
「お、お前!す、水晶玉にひ、ヒビを入れ、壊すなど!?断じてするせん!」
1人の若い新官が私に怒りをぶつけ、殴りかかってきた。
が、若い新官が私を殴るよりも早く、大神官がその者に平手打ちをし、私の前で跪くと
「聖女様になんて事をするのだ!!??
貴方は選ばれし、我が国の聖女でございます。これから国のため、国民のために我々をお導き下さい」
大神官が何を言っているのか分からなかった。しかし、理解出来たのは私を見る目がまるで神を見るかのような眼差しを向けていた。
その日、私の生活は一変した。
私は聖女として修行を積むべく、首都の神殿で今後暮らさなくてはいけないらしい。だが、私は今日の分の草むしりをやっていなかった。
その事を新官達に告げると、「聖女たるものそのような事はなさっては行けません」との事。
大神官は他の大神官と連絡をとり、新聞社に聖女が見つかった事を記事にするように指示した。
生まれ育った村を離れる事になったのは、私が水晶玉に手をかざした30分後だった。
両親とは挨拶もできず、私は村を後にした。見たこともないような立派な馬車にのり、次第に窓の外の村は小さくなっていった。
106
あなたにおすすめの小説
嘘吐きは悪役聖女のはじまり ~婚約破棄された私はざまぁで人生逆転します~
上下左右
恋愛
「クラリスよ。貴様のような嘘吐き聖女と結婚することはできない。婚約は破棄させてもらうぞ!」
男爵令嬢マリアの嘘により、第二王子ハラルドとの婚約を破棄された私!
正直者の聖女として生きてきたのに、こんな目に遭うなんて……嘘の恐ろしさを私は知るのでした。
絶望して涙を流す私の前に姿を現したのは第一王子ケインでした。彼は嘘吐き王子として悪名高い男でしたが、なぜだか私のことを溺愛していました。
そんな彼が私の婚約破棄を許せるはずもなく、ハラルドへの復讐を提案します。
「僕はいつだって君の味方だ。さぁ、嘘の力で復讐しよう!」
正直者は救われない。現実を知った聖女の進むべき道とは……
本作は前編・後編の二部構成の小説になります。サクッと読み終わりたい方は是非読んでみてください!!
聖女が帰らなかったので婚約は破棄された
こうやさい
恋愛
殿下はわたくしとの婚約を破棄して聖女と結婚なさるそうです。
いや『聖女は帰らなかったけど婚約は破棄された』の時に、聖女が帰らない婚約破棄の場合はふつー違うよなと考えた話。けどこれもなんかずれてる気が。
直接的に関係はないです。
プロフィール少し編集しました。
URL of this novel:https://www.alphapolis.co.jp/novel/628331665/678728800
偽聖女の汚名を着せられ婚約破棄された元聖女ですが、『結界魔法』がことのほか便利なので魔獣の森でもふもふスローライフ始めます!
南田 此仁
恋愛
「システィーナ、今この場をもっておまえとの婚約を破棄する!」
パーティー会場で高らかに上がった声は、数瞬前まで婚約者だった王太子のもの。
王太子は続けて言う。
システィーナの妹こそが本物の聖女であり、システィーナは聖女を騙った罪人であると。
突然婚約者と聖女の肩書きを失ったシスティーナは、国外追放を言い渡されて故郷をも失うこととなった。
馬車も従者もなく、ただ一人自分を信じてついてきてくれた護衛騎士のダーナンとともに馬に乗って城を出る。
目指すは西の隣国。
八日間の旅を経て、国境の門を出た。しかし国外に出てもなお、見届け人たちは後をついてくる。
魔獣の森を迂回しようと進路を変えた瞬間。ついに彼らは剣を手に、こちらへと向かってきた。
「まずいな、このままじゃ追いつかれる……!」
多勢に無勢。
窮地のシスティーナは叫ぶ。
「魔獣の森に入って! 私の考えが正しければ、たぶん大丈夫だから!」
■この三連休で完結します。14000文字程度の短編です。
〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?
藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。
セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。
あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。
呪い…解いてもいいよね?
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
召喚聖女が来たのでお前は用済みだと追放されましたが、今更帰って来いと言われても無理ですから
神崎 ルナ
恋愛
アイリーンは聖女のお役目を10年以上してきた。
だが、今回とても強い力を持った聖女を異世界から召喚できた、ということでアイリーンは婚約破棄され、さらに冤罪を着せられ、国外追放されてしまう。
その後、異世界から召喚された聖女は能力は高いがさぼり癖がひどく、これならばアイリーンの方が何倍もマシ、と迎えが来るが既にアイリーンは新しい生活を手に入れていた。
聖女の妹によって家を追い出された私が真の聖女でした
天宮有
恋愛
グーリサ伯爵家から聖女が選ばれることになり、長女の私エステルより妹ザリカの方が優秀だった。
聖女がザリカに決まり、私は家から追い出されてしまう。
その後、追い出された私の元に、他国の王子マグリスがやって来る。
マグリスの話を聞くと私が真の聖女で、これからザリカの力は消えていくようだ。
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる