わたしたちの庭

犬飼ハルノ

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窓の外の世界

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 グィネス夫人は話し終えると、侍女たちを部屋へ招き入れた。
 侍女長と専属侍女たちを紹介してくれ、彼女たちが部屋を訪れる時間や呼び出しのベルの使い方など、丁寧に教えた後、湯に浸かって楽な服に着替えるよう勧められる。

「疲れているでしょうから、今日はゆっくり過ごしてちょうだい」

 使用人たちはみな親切で甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
 夜になるとフィネスは彼らを送り出し、言われた通りに内鍵をかけた。

「一つ、二つ、三つ……」

 忘れないよう、数を数えて確認する。

「まもの……」

 おとぎ話のたぐいではなさそうだけど。
 言葉の意味を深く考える間もなく、フィネスは広い寝台に横になった途端、すとんと眠りに落ちた。




 翌日、目覚めるとカーテンの隙間から朝陽がさしていた。

 寝台から降りて身体にショールを巻きつけ、出窓のベンチに腰掛け窓の外を眺めてみると、広大な庭が目の前に広がっている。

 昨日はとても窓の外を眺める余裕などなかった。
 この部屋は東の棟の南側の二階に位置することだけは解っている。

 正面手前には手入れの行き届いた芝と秩序ある配置で植えられた樹木。
 そして、花壇。
 窓を開けて周囲を見回すと左の方に大きなガラスの温室が見えた。

「すごい……」

 庭園の先の広大な丘陵や森が借景になって、まるで一枚の絵のよう。
 これが、ブルーノ家の庭。
 

 窓を開けると、鳥の声が聞こえてくる。
 朝の鳥たちは賑やかで、とても元気だ。
 ついこの間まで過ごした、あの家を思い出す。

「ふふ。良い声」

 窓枠に肩肘をついて楽しんでいると、東の方からこちらへ、人が二人、歩いて来るのが見えた。

 老人と子供。
 身なりと手にしている道具から、庭師と彼の孫といった所だろうか。

 彼らはフィリスの真下を通り過ぎる前に二階から眺めている客人に気付き、立ち止まる。

「おはようございます。良い朝ですね」

 つい、声をかけてしまった。
 彼らは一瞬目を丸くしたが、すぐに帽子を脱いで胸に手をあてて深々と頭を下げる。

「おはようございます。おくつろぎの所を失礼しました」

 庭師と子どもは使用人としてきちんと弁えた態度をとった。
 そこでフィリスは自分が今、どのような状況なのかを思い出した。

「……いえ、こちらこそ引き留めてごめんなさい。どうぞ仕事を続けてくださいね」

 よくよく考えたら自分は寝間着のままで、なんとはしたないことか。
 慌てて詫びて、窓を閉めてベンチを降りる。

「髪も顔も、まだぐしゃぐしゃなのに、私ったら……」

 頬に両手をあててその場にしゃがみこんだ。
 

 
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