27 / 35
27
しおりを挟む「い、いやだぁあああ!!も、やめっ!!んぐぁっ、ああああっ!!!!」
腹の奥が押しつぶされる。両足を抱えて腰を折り、ズブズブと出し入れを繰り返す様を見せつけるように男が動く。
俺は目を見開いてその苦痛に耐えていた。太い男の中心が、俺の中に埋め込まれるのを見ていた。Lookと言われた瞬間から、その抉られる場所から目が離せなくなった。深く入って来るたびに奥を押し潰して、苦しくて悲鳴を上げた。
抵抗しようと足掻くたびに、Commandで動きを封じられる。Stayと言われるたびに、体が硬直して自分で動かせなくなるのだ。
「ひっ、ぁ……ヤダァ、も、やめてぇ!!」
「お前の兄貴に言えよ。オレらは金払ってんだからさ」
「ってことでもうちょい頑張れ。そんで兄貴に褒めてもらえよ」
ドクドクと、散々中に吐き出した男たちが嘲笑う。その熱が溜まって苦しい。ズルッと硬いものが中から出ていくと、追いかけるように尻から白濁が溢れる。
心で嫌だと思っていても、体はちゃんと喜んでる。その証拠に、俺はもう何度も欲を吐き出しているし、早く中を埋めて欲しくて、自分から腰を揺らしているのもわかってる。
何日経った?
最初はそう考えていたけど、そんなの、もうどうでもよかった。
密閉された四角い部屋で、寝ていても叩き起こされて始まる拷問のようなプレイに、俺の中の色々なものが崩れて行った。
気持ち良いことだけで満たされてる。でも認めたくなくて、口では嫌だと言う。
それも、もう無理そうだ。
俺は気持ち良いことが好きだ。頭がバカになるくらいに犯されるのを期待している。身を委ねてしまう快楽を知ってる。だって、最初からそういう快楽を教え込まれたんだから。
踏みとどまっているのは、輝利哉や朔に貰った愛を手放したく無かったから。こんな一方的な快楽に負けてしまったら、輝利哉や朔がくれた愛を踏み躙ってしまうと思った。
それまでたくさんいけないことをしてきた。それでも2人は俺を受け入れて、愛してくれた。小さい頃から、ずっと、再会しても変わらず。
だから屈したく無かった。
「侑李、なかなか強情だけど、それじゃ辛いだろ?」
ある時光貴が言った。
暗闇に放置されて、多分、疲労もあって気絶していた。
光貴はただ客だけを地下に通し、行為の最中はどこかへ消える。終わると入れ替わるようにやってきて、反省会をしよう、と言う。
俺は朦朧とした頭で、自分の至らないところを考える。また、客に嫌だと言って逆らおうとした。逃げようとした、かもしれない。手を上げたかも、しれない……もうわからない。
それでも兄が反省しろと言うから、言うことを聞けなくてごめんなさい、刺してごめんなさい、逃げてごめんなさい、なんて、よくわからないまま呟く。
光貴はそんな俺にバタフライナイフを手渡して、じゃあ反省してみせろ、と言うのだ。
気付けば俺の両腕は傷だらけだった。瘡蓋が剥がれて醜い痕が残るだけのところもあって、それでかなりの月日が流れたんだなとなんとなくわかる。
「侑李はまだ兄ちゃんが嫌い?」
「嫌いじゃない……大好き……だから、1人にしないで」
最近はそばにいてくれるなら誰でもいいと思っていた。愛がない行為でも、少なくとも構ってもらえる。誰かがいる間は明るいところにいられる。
それだけでよかった。嫌だ嫌だと泣いても、結局、誰かがいないと寂しくておかしくなりそうだった。
「輝利哉も朔もさ、侑李に酷いことするよね」
「……え?」
太い鉄格子の向こうで笑う光貴の顔を見た。俺はただ、光貴が次に何を言うのかを黙って待った。
「侑李がSubだとわかって、俺は2人と話をした。お前も覚えてるかな?お前が最後に2人に会った日のことだけど」
中学の頃のことだとわかる。そのあとすぐに、俺はどん底を味わったのだ。
「あの時に俺は2人に言った。Subの人間を、しかも身内でもなんでもない他人の、中学生の男子を、ただ可哀想だからって理由で、まだ大学生のお前らに養えるかって聞いたんだ。そんな覚悟があるなら、勝手に奪っていけば良いと俺は言った」
俺の心臓はドクドクと脈打って、きっと2人は、俺のために最後まで足掻いて、食い下がっただろうと期待した。
そんなの不可能だってわかってるけど、2人がいっぱい俺のことを考えて動いてくれたんだと信じたかった。
「輝利哉と朔はなんて言ったと思う?輝利哉はその時、大学を卒業してから任せられる店が決まってた。朔は警察を目指してた。周りから期待される人間だった。アイツらの親とも話したよ。あ、もちろん俺の弟を囲いたいとか抜かしてるのは黙ってたけど、でも、どっちの親も息子に期待してた。一人息子だからってさ」
ダメだ。多分、最後まで聞いちゃダメだ。
きっと俺の期待してる話は聞けない。
知ってしまったらもう心が折れてしまうと思った。
「その時は2人とも悩んでたけど、結局、お前を捨てて自分の未来と親の期待をとったんだよ。あのあとすぐ大学近くで一人暮らしを初めてさ、それ以来地元に帰ってもこなかった。それで、俺はお前に刺されるちょっと前にアイツらに会ったんだ。お前らが見捨てた侑李が、それまでにどんな生活をしてたかを、詳細に語ってやった。2人とも悔しそうな顔してた。自分たちの選択がお前を苦しめたって思っただろうな」
ニヤニヤと笑って光貴は、結局、と言って一方的に話を続ける。
「お前はアイツらと再会して嬉しかったかもしれないけど、アイツらにとってはさ、ただの罪滅ぼしだったんだよ。あの時助けてやれなかった可哀想な子どもを、自立した今なら手元に置いておけると判断した。確かに愛情はあったかもしれないけど、でも同情じゃないと言い切れるか?俺たちは、第二性に縛らて生きてるんだ。DomがSubに向けるのは愛情じゃなくて庇護欲だ。囲って、思い通りに世話して、支配したい。そんな本能が働くんだよ」
真実はわからない。
もう、一生聞くこともないだろう。
でも俺にだってわかるんだ。俺も第二性に縛られていきているんだから。
輝利哉も朔も、本当に俺を大事にしてくれていたと思う。でも、それが同情や罪滅ぼしではないとは、俺には言い切れない。
それは2人がDomで、俺がSubであるかぎり永遠についてまわる疑問だ。
まして2人は、血縁でもなければ兄弟でもないんだ。
なんの義理もない、近くに住んでいただけの歳の離れたただの幼馴染だ。
気付けばボロボロと涙を流していた。目の前の光貴の顔もよく見えてなかった。
知りたく無かった。それもこんな状況で聞きたく無かった。
ああ、俺は、なんでこんなに耐えようと思ったんだ?
もとの生活に戻っただけだ。
輝利哉も朔もいない、そんな世界に。
「なあ侑李。俺はずっとお前のそばにいた。本当は俺も、幼い子への接し方はわからなくて困ったよ。お前も同じだろ?歳の離れた兄と、どう接していいかわからなかったんだ。でもさ、俺らはたった2人の家族だろ?ちゃんと、明確な繋がりがある」
輝利哉と朔と違って、と光貴は言った。
「そう、だね……俺には、兄ちゃんだけだよ」
そう言った途端に、心の中の最後の何かが壊れた。
それからはただ楽しいことだけを考えるようにした。
セックスもプレイも楽しい。気持ち良い。
俺を構ってくれて、1人にしないなら誰でも良い。
どうせ兄以外に頼る人がいないんだと思ったら、暗闇も怖くなくなった。だって、光貴は俺を置いてどこかへ行ったりしない。必ず明かりをつけてくれる。
「ンァっ、はぁ、あっ、気持ち良い、から!もっとして!」
腹の奥に感じる熱を受け入れて、はしたなく自分から腰を揺らして、目の前にある欲の塊を口に含む。深く加えると、喉の奥に当たって頭が溶けそうになる。
今がいつなのか、俺を犯して笑ってる奴らが誰なのかなんてどうでもいい。
このまま快楽に溺れていたい。何も考えたくない。
そうやって、ただ身を任せている日々の中で、ある時光貴は、どこか満足そうに言った。
「そろそろお前も、俺の役に立てるよな?前みたいにさ」
俺は嬉しかった。また兄に認められた気がした。
今度は裏切らない。俺には光貴しかいないんだ。
兄ちゃんのためならなんでもする。
捨てられないなら、なんでもできる。
それでまた、頭がおかしくなるくらい気持ち良いことをして、俺はそれで満足だ。
30
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
運命の番は僕に振り向かない
ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。
それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。
オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。
ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。
ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。
ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。
ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
隣の番は、俺だけを見ている
雪兎
BL
Ωである高校生の湊(みなと)は、幼いころから体が弱く、友人も少ない。そんな湊の隣に住んでいるのは、幼馴染で幼少期から湊に執着してきたαの律(りつ)。律は湊の護衛のように常にそばにいて、彼に近づく人間を片っ端から遠ざけてしまう。
ある日、湊は学校で軽い発情期の前触れに襲われ、助けてくれたのもやはり律だった。逃れられない幼馴染との関係に戸惑う湊だが、律は静かに囁く。「もう、俺からは逃げられない」――。
執着愛が静かに絡みつく、オメガバース・あまあま系BL。
【キャラクター設定】
■主人公(受け)
名前:湊(みなと)
属性:Ω(オメガ)
年齢:17歳
性格:引っ込み思案でおとなしいが、内面は芯が強い。幼少期から体が弱く、他人に頼ることが多かったため、律に守られるのが当たり前になっている。
特徴:小柄で華奢。淡い茶髪で色白。表情はおだやかだが、感情が表に出やすい。
■相手(攻め)
名前:律(りつ)
属性:α(アルファ)
年齢:18歳
性格:独占欲が非常に強く、湊に対してのみ甘く、他人には冷たい。基本的に無表情だが、湊のこととなると感情的になる。
特徴:長身で整った顔立ち。黒髪でクールな雰囲気。幼少期に湊を助けたことをきっかけに執着心が芽生え、彼を「俺の番」と心に決めている。
久しぶりの発情期に大好きな番と一緒にいるΩ
いち
BL
Ωの丞(たすく)は、自分の番であるαの かじとのことが大好き。
いつものように晩御飯を作りながら、かじとを待っていたある日、丞にヒートの症状が…周期をかじとに把握されているため、万全の用意をされるが恥ずかしさから否定的にな。しかし丞の症状は止まらなくなってしまう。Ωがよしよしされる短編です。
※pixivにも同様の作品を掲載しています
【書籍化決定/完結】カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
★リブレ様にて紙書籍・電子書籍化が決定しました!
応援してくださった皆様のおかげです! 本当にありがとうございます!
発売日などの詳細は、決まり次第、作者のXや近況ボードなどでご報告させていただきますのでお待ちいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる