蒼い海 ~女装男子の冒険~

灰色 猫

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第一章 始まり

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「いい先生だったね」
帰りの電車で、聖苑が話しかけてきた。

「いきなり発声じゃなくて、姿勢から治すところで信頼出来た」
さっきまで練習した声で、答えてみる。

「真凛ちゃんに教えるから、私もきれいな言葉で話さなきゃ」

お風呂に入る前に、伊集院先生に教わったストレッチと腹筋、腕立せ伏せをした。
真面目にやると汗が出る。

壁に背中をつけて、正しい姿勢を取った。
お腹に手を当てて声を出しながら、使えるキーで言葉を口にする。

「じゃあ、始めるよ。おはよう」

「おはよう」
聖苑の言葉に合わせて、発声する。

「こんにちは、今日は良い天気だね」
「ランチ、ご一緒しない?」
彼女の言葉を、オオム返しで話してみる。
だが、どうしても抑揚のないフラットな言い方になる。
発声と女性の話し方を、同時に脳が処理することが出来ない。
これはもう、訓練しかない。
彼女に付き合って貰い、1時間ほど練習を続けた。

……

月曜日、大学向けのナチュラルメイクで、服は聖苑が選んだのをそのまま着た。
チェックブラウスをスエットにレイヤードして、ジョガーパンツを履く。
スカートじゃないのが救いだった。

大教室の階段を上っていく途中、真っすぐこっちを見ている男子がいる。
横を通る瞬間、眼を合わせて「おはよう」
自分でも驚くほど、素直に声が出た。

「おはよう」 低い声の返事が来た。

「上手に、出来たじゃない」聖苑が褒めてくれる。

「変じゃなかった?」

「凄くナチュラルだったよ。
ただ男子に挨拶するとは、思ってなかったけど」
3段くらい上の席に二人で並んで座ると、数人の男子が振り返ってこっちを見てる。

「こっちを見てるよ」聖苑が言う。

「どうしたらいい?」俺は心臓バクバクだった。

「ウインクでもしてやったら」
もう面白がっている。
困っていると、いいタイミングで講師が入って来て講義が始まった。

「授業が終わったら、急いで出よう」

「誘ってくるかな?」聖苑は興味深々だ。

「誘われたくない」
言ってるうちに、男子4人が来た。

「ランチ奢りたいんだけど、どう?」

「私達、お弁当だから」
俺が断ろうとすると、聖苑が遮った。

「じゃあ、2限目が終わったらカフェテリアに集まろう」

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