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第一章 始まり

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「逃げると、もっと追っかけられるよ」
脅すように聖苑みそのが言う。

「どうすればいい?」

「まあ任せて」

2時限目の授業は上の空で、講師の話が頭に入らない。
講義が終り、聖苑が隣の女子たちに声をかけた。

「私達、男子にランチを誘われてるけど一緒に来ない?」

「一緒に行って、いいの?」

「奢ってくれるって」

女子4人と俺で、カフェテリアに向かった。
男子は6人に増えていた。
隅のテーブルを確保して、ランチタイム合コンの様相だ。
各自が名乗って、順番が着た。

出雲 真凛いずも まりんです」
精一杯のハイトーンボイスで挨拶した。

聖苑と俺はお弁当だったから、野菜スムージーを取ってきた。
他のみんなはランチメニューから、好きなものを食べている。

「真凛が、毎日お弁当を作ってくれるの」

聖苑が持ち上げてくれるのが、鬱陶しい。
絶対に、内心でほくそ笑んでいるに違いない。

「真凛ちゃんて、家庭的なんだね」
いやいや、男に褒められても嬉しくないし。
悪夢のような1時間が終り、lineの交換をした。

午後の授業が終わった途端、lineに着信した。
既読をつけると、面倒なことがおきる予感がする。

「聖苑のせいだからね」

「真凛も自分が可愛いって解ったでしょ」

既読がつかないように、ブオン機能で内容を確認する。
「二人だけで会いたい」って書いてあった。
男にモテてもしょうがない。

「よし、ふっちゃおう」
俺は、男にはいくらでも冷たく出来る。
lineを開けて、返信する。

「ごめんなさい」

……

翌日、お昼にお弁当を食べようとすると、男子が一人でやって来た。

「話があるんだけど」

確か、渡辺君だったな。
昨日、「ごめんなさい」した子だ。

「俺が断られた理由が知りたい」

自信過剰だろと思ったが、彼のプライドが許さないんだろう。
気持ちは解らなくもない。
だが変に断ると、付きまとわれそうで怖い。

「私、彼女と同棲してるの」

「ん?」
理解出来てないようだ。

「彼女が好きなの、だからお弁当も作ってる」

「ああ、そういうことか」
一瞬、間があったが何となく解ったようだ。

「告白の件は誰にも言わないから、そっちも喋らないでくれる?」

「判った」

「普通に、友達として扱ってくれると嬉しい」

「了解、何か有ったら言ってくれ」

「頼りにしてる」

「じゃあな」笑顔で帰っていった。

「完璧だわ」 聖苑が驚いている。
「ちゃんと話せたじゃない」

「答えを前もって用意していたから」

「予想してたの?」

「ああ、男の気持ちは解るから」

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