蒼い海 ～女装男子の冒険～

第三章 チャンス

１０

顔が判らない５人が並んでいる映像が、SNSで公開された。
新作スマホゲーム、イグナイトドラゴンついに登場。
派手なCG映像が流れていた。

大ヒットしたゲームのスマホ移植だけに、ファンの期待は大きい。
プロモーションビデオに出演したメンバーのスケジュールが調整されて、発表会見が決まった。

俺は歯列矯正をしている美容歯科に連れて行かれて、歯のホワイトニングをされる。
美容皮膚科で脱毛されて、整体治療院で体の歪みを修整された。

「やっぱり、こっちなんだね」
衣装合わせが行われて、女性戦士の衣装に決まった。

「事前アンケートで、９割のゲーマーが女性戦士と回答してるから」
スタッフが俺に説明している。

「私だって判ったら、ガッカリしないかな？」
だんだん心配になってきた。

１２月１５日、ついにプロモーションビデオが公開される。

当日は一番乗りして、メイクをして衣装を着る。
プレス用の写真撮影に臨んで、弓を構えて色々とポーズをとる。
フラッシュが眩しすぎたが、濃いめのカラコンが役にたった。
一通り終わって、控室に戻れた。

スターの皆さんも撮影が終わり、プロモーションビデオの試写会が開催される。
ひな壇に座って、スクリーンを見る。
会場の明かりが最低限まで落とされて、映像がスタートした。

冒頭から物凄いCGの映像が続き、一旦収まった所で５人のメンバーの旅が始まる。
パーティの旅、最初の見せ場で弓使いのシーンがある。
燃えたぎるマグマの火山に、氷の矢を放つ。
麓から飛んだ矢が火口に届き、山の怒りが収まった。

後は、スターの皆さんの出番だ。
俺は余裕を持って、映像を楽しんでいた。
妖術師、重戦士と見せ場があり、中盤に差し掛かった時だった。
パーティのメンバーが、湖のほとりで休憩している。

その時、弓使いが鎧を脱いで飛び込んだ。
湖の中央まで泳いだら、仰向けになって浮かんでいる。
ドローンで上から撮影したような映像に、ビキニ姿の俺がいた。

会場から、小さなどよめきが起きた。

そこから泳いで戻り岸へ上がる、黒のビキニは最小限の面積を隠すだけだ。
Gカップはあろうかという豊満な胸は深い谷間を作り、腰は大きく張り出していた。
顔は間違いなく俺だが、濡れた黒髪がエロスを醸し出している。

これがフルCGだって事が、信じられない。