上 下
67 / 322
第四章 炎上

しおりを挟む
白河寧々と共演した、ファッション誌が発売された。

「この役、私がやりたかった」月奈が言ってる。

「最近、真凛ちゃんの色気が凄い」中園氏が褒めてくれる。
SNSでの評判は、なかなか良いようだ。
solemnityでは、寧々が着ていたロリータコートが一瞬で売り切れた。

3日後、男性誌が発売された。
椅子に腰かけた白河寧々を誘惑するように、出雲真凛が付き纏っている。
最後のページの右側に、目を開けてお互いに見合っていた。
ほぼ顔だけしか映ってないほどのクローズアップだ。
左側はほぼ同じ絵だが、寧々が目を閉じている。
真凛が眼球だけをカメラに向けているのが、挑発的だった。

「この2枚、凄いね」聖苑が言った。

「寧々ちゃんのファン、どう思うだろ」

SNSでは意外なほど、好意的だった。
その週末、今度はfortunaTVで、雑誌のメイキング映像の後編が流された。
BGMにfortunaが歌うバラードが流れる中、椅子に座った白河寧々は動かない。
その周りを、真凛が絡みついていた。

ラストの場面で、寧々の頬に真凛が手をかけた。
顔だけこっちを向かせて、二人の目が合っている。
長く見つめ合った後、寧々が目を閉じた。
真凛が顔を近づけた瞬間に、カットの声が掛かって離れた。

「やっぱり、私がやりたかった」栗栖千鶴が叫ぶ。

司会者が寧々に聞いた。「撮影は、どうだった?」

「真凛ちゃんが凄く綺麗で、あのままkissされたかった」

TVを見ているこっちが、ハラハラする。
kissシーンがあるからって、MVを降りたんじゃなかったのかよ。
番組の最後に、水無瀬結と栗栖千鶴が言った。

「真凛ちゃん、是非fortunaTVに来てください。
メンバーみんなでお待ちしています」
向こうのプロデューサーは、どうしても真凛を引っ張り出したいようだ。

案の定、SNSは大荒れだ。

「番組に出るな、汚れる」
「俺たちの寧々ちゃんがオ〇マ野郎に騙されてる」

「どうする?」田中氏が聞いている。

「絡むたびに炎上させられる、こっちは全然得が無い」

「そうでもないぞ。知名度は確実に上がってるし、いくつか案件も来ている」

「悪い評判だろ」

「評判にいいも、悪いも無い。無関心に比べれば、100倍いいんだ」

田中氏は、人気という得体の知れない物の正体が判っているようだ。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

手足を鎖で縛られる

BL / 連載中 24h.ポイント:1,911pt お気に入り:889

あなたの推し作家は私

現代文学 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:5

婚約破棄させてください!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,831pt お気に入り:3,022

悪役令息になんかなりません!僕は兄様と幸せになります!

BL / 連載中 24h.ポイント:4,352pt お気に入り:10,286

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:3,365pt お気に入り:665

白き死の仮面

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:512pt お気に入り:2

主神の祝福

BL / 完結 24h.ポイント:1,350pt お気に入り:255

Bグループの少年

青春 / 連載中 24h.ポイント:5,282pt お気に入り:8,332

処理中です...