上 下
235 / 322
第一四章 挑戦

しおりを挟む
「マネージャー見習い募集中。今の仕事に不満がある方を募集します。
ただし、芸能界は通常のビジネス環境とは違い、理不尽なことも多い世界ですので覚悟してください。
ガーデンズ・オフィス」

一ノ瀬流通グループの社員、アルバイトなら誰でも見られる社内ポータルに、募集記事が載った。

「これで、誰か応募してくるのかな?」
田中社長は懐疑的だった。

「絶対、大量に押し寄せるね。若手の不満は爆発寸前だもん」
聖苑が自信たっぷりに話している。

社内公募は、一ノ瀬グループが公認しているシステムだ。
若手や現状に不満がある社員の新しい受け皿として、採用された。
せっかく育てた若手社員にいきなり辞められたり、不満で成長しなくなるのを防ぐ制度だった。
ただ最近は、形骸化している。
若手が興味を持てそうな案件が、ほとんど無かったのだ。

そこに聖苑が、目を付けた。
今のガーデンズ・オフィスは、出雲真凛と沙織、古田美那がいて、月奈もいる。
5月末には、野原美穂も加入予定だ。
田中社長と山内女史だけでは、全然手が足りない。

案の定、2名の枠に100人以上が応募してきた。

「各部門から悲鳴が上がってる、将来のエース候補が何人も応募してるんだ。
何故か分からなくて、社内が混乱している」

一ノ瀬社長から、クレームが入った。

「部下が何で応募しているのか、分からない上司がいるから応募してる。
それだけだ」
聖苑は、突っぱねた。

聖苑は応募資料から使えそうな社員をピックアップしていく。
アメリカの大学でマーケティングを学んだ女性や理系のエリート社員など、確かに社内が動揺する人物がいる。

「使い切れない上司に不満があるから、公募に応募している。
彼らを活かすプロジェクトを立ち上げたほうがいい。
今辞められたら、大損害でしょう」
聖苑が社長に吠えたらしい。

彼女の想定通り、新規事業の責任者に指名された。
今度は実際の事業だから、失敗は許されない。

「俺の代わりにやってくれ。予算も事業内容も自由だ。
3カ月以内に、計画をまとめて報告しろ。
やるか、やらないかは俺が見てから決める」

社長命令が下り、春から聖苑は忙しくなった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

運命の番を見つけることがわかっている婚約者に尽くした結果

恋愛 / 完結 24h.ポイント:16,393pt お気に入り:262

王子の宝剣

BL / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:441

夜の帝王の一途な愛

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,100pt お気に入り:85

勘違いしちゃってお付き合いはじめることになりました

BL / 完結 24h.ポイント:2,898pt お気に入り:550

自殺日記

現代文学 / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:3

裏切りメイドの甘い贖罪

恋愛 / 完結 24h.ポイント:99pt お気に入り:187

おかしくなったのは、彼女が我が家にやってきてからでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,882pt お気に入り:3,851

処理中です...