黒色の石

冬城さな

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「これが地毛だ」
今までの優しい雰囲気はなく、ピリッとしたきつい視線が突き刺さる

「君の情報は収集済みだ」ケイ=マーテル
「な・・・」
「その驚愕は何方へのものか、まぁ、両方説明しよう」

セレニン王子は武器を持っていない上、まだ魔力の波動は感じられないが、
ケイルは動くことが出来なかった

「まず、王族が正体不明の者、偽称している者を雇用する事はない
 当然ながら、調査を行う
 今回の場合、連続代議士殺人事件の現場から、
 以前ライミン族から襲撃を受けた集落の者の痕跡が発見されていた
 これは機密事項だったがな
 そして、その集落で最近行方不明になった者を徹底的に調査した
 君がケイ=マーテルだとはすぐに判明した
 偽称するなら魔力の波長も偽称すべきだったな」

「く・・・ッ」

「そして、もう1つの疑問だろう、何故、僕が君の攻撃を回避可能だったか
 それは単純な事、君の戦闘パターンは収集済みだったからだ」

仲間の誰かが裏切ったか、とケイルは思った

「文字や言葉の情報では、戦闘パターンは収集不可能
 だが、実際に戦闘をしてみれば・・・身をもって知ることが出来る」
「実際に、、身をもって、、?」
「君が国立剣技大会の決勝戦で戦ったカリュウ=フェリアは僕だ」
「な・・・」

完全に読まれていた
あの時と同じ『完敗だったよ』と思わず口から出かかった

しかし、今はどうでもいいような大会の決勝戦ではない
ここで敗北を宣言するわけにはいかなかった

「だとしても、カリュウ=フェリアは術師のはず!」

ケイルがセレニン王子に斬りかかる
が、全てをかわされていた

「確かに、カリュウ=フェリアは術師の設定だ
 だが、僕の戦種は剣士なんでね」
そう、言い終るか終わらないかの内に、セレニン王子はどこからか2本の剣を出す

(2刀流・・・ッ)

「手加減する気はないよ
 こちらが仕組んだ事とはいえ、姉上を襲撃したのは見過ごせない」
「・・・」
「僕がお忍びで城下町に行くことは前日に伝達していたからね
 それを仲間に伝えたのだろうが、商店街の照明が省エネしていたのは誤算だったね
 姉上とその護衛ルナンはかなりボーイッシュな私服を着用される
 その上、君そっくりの護衛が傍にいれば、君の仲間は姉上が標的の僕だと勘違いする」
「そこまでしていたのか・・・」
「よく考えればわかるという、少々危険な賭けだったけどね
 ルナンの張ったシールドは予めある程度準備しておかないと不可能なものだったから
 でも、君は気付かなかった・・・さしずめ、標的を間違えたのと、
 仲間が拘束された事で混乱していたのだろう」
「くそ・・・」
右手の剣を強く握りしめるケイル
(こうなったら、相討ちでもいい、やるか)

目の前にいるのは本当にさっきまでの優しい雰囲気のセレニン王子様なのだろうか
顔かたち、服装は変わっていないものの、長い黒髪と
そして何より、背筋に悪寒を感じさせるには十分なきつい視線
両手には剣を持ち、構えてはいないものの、攻撃されたら負ける気がした

「おぉおおおぉ!」
ケイルがセレニン王子に斬りかかる
が、剣が弾かれた
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