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フランス革命 下
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彼女の結果。
19××年 フランス アルムスター孤児院に
過激な思想を持つ 山岳派の集団が押し入り
シスターや子供を含めた
凡そ50名の男女を殺害した。
その際、
孤児院から2人の少女が逃げ
1人はジロンド派の
シャルルらに助けてもらい
もう1人は山岳派の集団に捕まることを恐れ
孤児院を見下ろす高台まで逃げたが
追いかけてきた山岳派に追い詰められ
捕まるくらいならと
高台から飛び降り……は自殺したとされ…
気がつくと私は
真っ暗闇に立っていて
私の目の前には 木の椅子が置かれていた。
『座りたまえ』
何処からか
男の人の声が聞こえ
私は言われるままに椅子に座った。
『おや?
不思議に思わないのかね?
この空間も…私の声も…』
男の人の声が私にそう言うと
私は『…思わないよ。
だって、
私は自殺したから』と呟いた。
小さい頃から
私は孤児院のシスターに
『自殺してはいけません。
自ら命を絶つことは
神に赦されない行為です』と
教えられ育てられてきた。
だから、
自殺した私は
罰を受けて当然…。
『ふむ…自殺したからか…。
なるほど、
確かに定めたルールの中に
自殺と殺人は死に値すると書いた。
けど、
君の罪は自殺ではないよ』
男の人の声がそう言うと
私は『えっ…でも…』と言い
記憶を思い出そうとした。
けど、
どれだけ思い出そうとしても
飛び降りた後の事が思い出せなかった。
『おや?
困ってるのかい?
なら、
手を貸してあげよう』
男の人の声がそう言うと
何処からか指を鳴らす音が聞こえ
周りの風景が
暗い部屋のような風景に変わった。
『ここは…』
ランプの灯りが揺れる室内…
見ていてすごく苦しくなってくる…
テーブルには、
メスのようなものや
薬のような物が置かれていた。
『ここは、
君を治療した病院の手術室さ。
君は山岳派から逃げるため
孤児院の見える高台まで上った。けど、
追いかけてきた山岳派に捕まりそうになり
捕まって絞首刑に処されるくらいならって
高台から飛び降り 自殺しようとした。
そこで出会ったんだ。
あの男に…』
男の人の声がそう言うと
記憶の扉が開くように
私は思い出した。
『…自分はイポクリジーだって言ってた』
飛び降りた私を助けてくれたのは
シャルルって名乗る男の人だった。
彼は、
折れた私の足を治し
傷だらけの私に薬を塗ってくれた。
シスターみたいに
とても優しい人だった。
『うむ…イポクリジー、
偽善や猫被りという意味だね…。
まぁ、
彼の行いが本当に
偽善や猫被りのそれだったかは別として…
君は彼に助けられた。
その際、
どういうわけか
君は自分や他人の記憶を
奪うことが出来る様になった』
『えっ…でも…そんな…記憶を奪うなんて…』
信じられないと思った。
だって、
そんな事したことないし…
『本当に奪うなんてって
驚いてるのかい?
なら、
君はどうして忘れていたんだ?
飛び降りた後の記憶を…』
『それは…』
何故だろう…
思い出しちゃいけない気がしたから。
すごく大事な人の死を見たから…でも
誰なのか思い出せない。
笑顔は思い出せるのに
その人の名前を思い出せない…
仕草や好きなものを思い出せるのに
その人との最後の会話が思い出せない…
なんで…
『それは 君にとって
とても苦しい出来事があったからでは?』
男の人の声がそう言うと
何処からか再び指を鳴らす音が聞こえ
暗い部屋の風景から
華やかな都会の風景へ変わった。
『身体を治しつつ
彼の手伝いをする事にした君は
彼の仕事の関係で華の都 パリに来ていた。
その頃、
パリの街では過激派思想が強まり
革命家……を支持する
支持者達が集まっていて
とても危険だった』
そう…革命家……の考えを支持する
支持者達が街中で集会を開いたり
敵対思想を持つジロンド派と
争いを繰り広げていて
パリの街はとても危険なところだった。
けど、
本当に危険なのは
私でもシャルルでもなく…
ふと、
声の主に私は
『……、…いえ、
孤児院時代に一緒に
本を読んだ私より
3歳上の女の人を…って
今日初めて会った人に訪ねても
知りませんよね…』と言った。
『うん?
君の友人なら
君と孤児院から逃げ出した時に
ジロンド派の若者に助けられたよ』
『えっ…そうなんだ。
(良かった…)』
胸を撫で下ろすと
男の人のような声は
『けど、
彼女はその後で
革命家……を殺すけどね』と言った。
『えっ…』
耳を疑った。
……は、
そんな事をする人じゃない。
なのに、
人殺しをするなんて…
『あれ?
君も聞いたことがあるはずだよ。
自宅の浴室にて薬湯に浸かった……を
……が殺害した事件を』
声の主が言ってることがわからなかった。
『…どうして…』
絞り出した言葉に
声の主は『どうして?
それは君もよく知ってるはずだよ』と言い
話を続けた。
『自由とは、
ルールがあるからこそ
光り輝くもので
ただただ自由なだけでは
惰眠を貪るのと変わらない。
君と彼女は
孤児院の書斎で見た本の中の
ジャン=ジャック•ルソーの思想に触れ
自由を志すようになった。
けど、
彼女は過激派から逃げる最中
シスターや子供達の死を直視し
さらに 噂に聞いていた過激派による
恐怖政治や敵対思想を持つ者達への
ギロチン刑…
貴族への絞首刑を
実際に目の当たりにして
許せなかったのさ。
だから…』
男の人の声が言いかけて
私が『そんな…信じられない』と言った。
『ふむ…だが、
事実 君も見ているはずだよ。
山岳派が君を追いかけ
高台を上ってくる様子を』
『………』
言葉が出て来なかった。
沢山の人の怒声…
私を探す足音…
逃げ場を無くした私は…
『その様子だと思い出したようだね。
彼女はその後、
裁判にかけられて
死刑判決が決定するんだけど
そういえば 君は 彼女が処刑された時
広場に居たんだよね』
『嘘…私は ……の死ぬ姿なんて…』
嫌だ…認めるのがとても怖い…
認めたら2度と……に会う事が
出来なくなる気がする…
認めたら2度と約束を守れない気が…約束?
……との約束…
『ねぇ、
私はとても大事な約束を
……とした気がするんだけど…』
言いかけて
声の主は『話が出ず
少しだけ心配したけど
やっと思い出したか。
いいよ、
君が思い出せない記憶を
思い出させてあげる』と言い
再び指を鳴らすような音が聞こえ
華やかな都会の風景から
礼拝堂のような風景に変わった。
『ここは…』
この風景は、
どこか覚えてる気がする…
『ギロチン刑に処された……の遺体は
ここに埋葬され
君は毎日のように……のお墓を訪れては
孤児院時代に話していたように
……のお墓の前で話をしていたね。
そして、
いつも終わりに君はこう言う…』
そこまで言うと
私は『また明日、
私の親愛なる友人 ……』と呟いた。
少しの沈黙後、
声の主は私に
『……との約束についてだが
君が……と最初に出会った日の事を
思い出して見てくれ』と言った
……と最初に出会った日の事…
そうか…
「はじめまして」
彼女はとても礼儀正しく
年下の私にもお辞儀をして
挨拶してくれた。
それから運命が別れるあの日まで
自由について思いを馳せつつ
私と彼女は 運命を共にした。
「エリス、
いつもありがとね」
そうだ…私の名前はエリス。
だけど、
あの日 私を助けてくれた人が
「身を隠さなければ…そうだ、
君は今日から
エリス=アンリ・サンソンと名乗ると良い。
少なくとも
サンソンと名乗れば
彼らは君に手出し出来ない」と言って
その日から私は
エリス=アンリ・サンソンと
名乗る事になった。
それもこれも
生きてまたあなたに会うため…けど
あなたは革命家である……を殺して
死刑判決を受けた。
あの時、
私はシャルルに泣きついた。
「どうして…どうしてなの…」
「エリス、
彼女が君の友人だなんて…」
医者であり処刑人をしていた
シャルルはわからずやな私に
何度も『申し訳ない」と言って謝った。
今思えば、
シャルルの立場で
処刑を辞められる訳が無い。
何故なら、
彼女が殺したのは
山岳派のリーダー ……なのだから。
彼を支持する人は多く
そんな彼を殺した彼女は
時代の大犯罪者と世間から言われていたし…。
けど、
私は違う。
彼女の本当の姿を知ってる。
『……は、
本を読むのが好きな
普通の女の子で…
私のお姉ちゃんで…
焼き菓子がうまく焼けなくて…
ごめん…ごめんなさい…エリスは
……を助けれなかった…』
涙が頬を伝い
ずっと我慢していたものが
涙と共に流れ出した。
『うむ…今は泣くと良い。
どうやら、
君の名前を
剥奪する事は出来ないようだし…』
それからどれだけの時間が経ったのか…
泣き疲れ眠っていた私が目を覚ますと
声の主が私に
『おはよう。
気分はどう?』と言った。
『うん…良くないよ』
『そっか…
そんな君に朗報を1つ持ってきたよ』
『ろうほう…?』
『あっ…わからないか。
えっと、
朗報って言うのは
君にとって良い情報の事さ』
声の主がそう言うと
私の見ていた少し前が
眩しいほどに光り
手で目を覆っていると
『はい、
もう眩しくないから手を退けて』と
声が聞こえ覆っていた手を退けると
光る小さな球体が浮かんでいた。
『綺麗…』
私がそう言うと
光る小さな球体から
さっきの声色で
『それはどうも。
さて、
朗報の前に
1つ確認する必要があるから
そこだけ確認させてね』と言い
話を続けた。
『確認…?』
『うん、
お約束というかね。
まず、
君の罪は 約束を破ったこと。
その約束は
君と彼女の人生に影響を及ぼすほどで
もし 君が守っていれば
彼女は処刑されなかったかもしれない…
なんのことかわかるよね?』
光る小さな球体が
私の顔の前で浮かびながらそう言うと
私は『…うん…私が
……を守れなかったから
……は孤児院で教えられた
約束を守れなかった。
私の方が先に居たんだから
……を守らなきゃだったのに…』と
言葉を返した。
そう、
孤児院のシスターは
みんなにいつも言ってた。
「正義とは
剣を振るう事ではなく
相手の事を思い守ることです。
間違っても相手を殺す事ではありません。
それに 人殺しは
どれだけ懺悔しても
許されないでしょう…」
私も……も
シスターの事が大好きで
シスターの話してくれるお話は
どれも覚えてる…なのに
私は間違えた友人を助けれなかった。
『うむ…守らなきゃね…
君は自らを責める事で
他を傷つけないようにする癖があるようだ』
『えっ…』
『それと
シスターの教えを
一生懸命守ろうとする姿勢は
誰にでも出来る事じゃない。
つまり、
素晴らしいって事さ』
『…私は…そんな事ないよ』
『素直な感想さ。
謙遜せず受け取りな。
さて、
本来 死 となった人間は
速やかにあの世へ行かなければならないけど
君は 自分の名前を覚えていて
死ぬ前の記憶を取り戻しても
とくに問題無かった。
これは、
とても素晴らしい事だ』
光る小さな球体は
そう言って私の周りを飛んだ。
『はっ!?
私、
死んでるって事は……に会えるの?』
そう言うと
光る小さな球体は
『いや、
……は処刑されたから
自殺でも無ければ
殺人でも無いから
今は会えないだろう…』と言葉を返した。
『そんな…』
俯く私に
光る小さな球体が
『まぁ、
会う為の方法が
まったく無い訳じゃないけどね』と言った。
『えっ?』
驚き顔を上げる私に
光る小さな球体が
『まぁ、
処刑は本来
自殺でも無ければ
殺人でも無い行為だから
グレーゾーンなんだ。
そして、
ここは今まで僕が行っていた
半死者の生き死にを判断する場所で
本来は 死 の判定を受けた人が
踏み入れられる場所じゃない。
けど、
君のその経験は
他が経験できるそれを
優に超えているし
君の罪は 約束を守れなかった事だから
ここに残っても良い』
『えっと…』
『おや…難しかったか。
つまり、
いずれ……もここへ流れてくるから
それまでここでゆっくりすると良い』
『…ありがとう』
そして、
……が記憶を取り戻し
壊れちゃいそうになるのを助ける為に
何度も……の記憶を奪い
その度に はじめまして を繰り返した。
けど、
記憶は奪っても
……は優しくて
誰も失わないように
最後まで半死者が生きる事を諦めない。
だから、
私は 今度こそ 約束を守る。
どれだけの悲しみからも
どれだけの苦しみからも
私はあなたを今度こそ守る。
エリス=アンリ・サンソンの名に誓って…。
~~~フランス革命 下~~~
END
19××年 フランス アルムスター孤児院に
過激な思想を持つ 山岳派の集団が押し入り
シスターや子供を含めた
凡そ50名の男女を殺害した。
その際、
孤児院から2人の少女が逃げ
1人はジロンド派の
シャルルらに助けてもらい
もう1人は山岳派の集団に捕まることを恐れ
孤児院を見下ろす高台まで逃げたが
追いかけてきた山岳派に追い詰められ
捕まるくらいならと
高台から飛び降り……は自殺したとされ…
気がつくと私は
真っ暗闇に立っていて
私の目の前には 木の椅子が置かれていた。
『座りたまえ』
何処からか
男の人の声が聞こえ
私は言われるままに椅子に座った。
『おや?
不思議に思わないのかね?
この空間も…私の声も…』
男の人の声が私にそう言うと
私は『…思わないよ。
だって、
私は自殺したから』と呟いた。
小さい頃から
私は孤児院のシスターに
『自殺してはいけません。
自ら命を絶つことは
神に赦されない行為です』と
教えられ育てられてきた。
だから、
自殺した私は
罰を受けて当然…。
『ふむ…自殺したからか…。
なるほど、
確かに定めたルールの中に
自殺と殺人は死に値すると書いた。
けど、
君の罪は自殺ではないよ』
男の人の声がそう言うと
私は『えっ…でも…』と言い
記憶を思い出そうとした。
けど、
どれだけ思い出そうとしても
飛び降りた後の事が思い出せなかった。
『おや?
困ってるのかい?
なら、
手を貸してあげよう』
男の人の声がそう言うと
何処からか指を鳴らす音が聞こえ
周りの風景が
暗い部屋のような風景に変わった。
『ここは…』
ランプの灯りが揺れる室内…
見ていてすごく苦しくなってくる…
テーブルには、
メスのようなものや
薬のような物が置かれていた。
『ここは、
君を治療した病院の手術室さ。
君は山岳派から逃げるため
孤児院の見える高台まで上った。けど、
追いかけてきた山岳派に捕まりそうになり
捕まって絞首刑に処されるくらいならって
高台から飛び降り 自殺しようとした。
そこで出会ったんだ。
あの男に…』
男の人の声がそう言うと
記憶の扉が開くように
私は思い出した。
『…自分はイポクリジーだって言ってた』
飛び降りた私を助けてくれたのは
シャルルって名乗る男の人だった。
彼は、
折れた私の足を治し
傷だらけの私に薬を塗ってくれた。
シスターみたいに
とても優しい人だった。
『うむ…イポクリジー、
偽善や猫被りという意味だね…。
まぁ、
彼の行いが本当に
偽善や猫被りのそれだったかは別として…
君は彼に助けられた。
その際、
どういうわけか
君は自分や他人の記憶を
奪うことが出来る様になった』
『えっ…でも…そんな…記憶を奪うなんて…』
信じられないと思った。
だって、
そんな事したことないし…
『本当に奪うなんてって
驚いてるのかい?
なら、
君はどうして忘れていたんだ?
飛び降りた後の記憶を…』
『それは…』
何故だろう…
思い出しちゃいけない気がしたから。
すごく大事な人の死を見たから…でも
誰なのか思い出せない。
笑顔は思い出せるのに
その人の名前を思い出せない…
仕草や好きなものを思い出せるのに
その人との最後の会話が思い出せない…
なんで…
『それは 君にとって
とても苦しい出来事があったからでは?』
男の人の声がそう言うと
何処からか再び指を鳴らす音が聞こえ
暗い部屋の風景から
華やかな都会の風景へ変わった。
『身体を治しつつ
彼の手伝いをする事にした君は
彼の仕事の関係で華の都 パリに来ていた。
その頃、
パリの街では過激派思想が強まり
革命家……を支持する
支持者達が集まっていて
とても危険だった』
そう…革命家……の考えを支持する
支持者達が街中で集会を開いたり
敵対思想を持つジロンド派と
争いを繰り広げていて
パリの街はとても危険なところだった。
けど、
本当に危険なのは
私でもシャルルでもなく…
ふと、
声の主に私は
『……、…いえ、
孤児院時代に一緒に
本を読んだ私より
3歳上の女の人を…って
今日初めて会った人に訪ねても
知りませんよね…』と言った。
『うん?
君の友人なら
君と孤児院から逃げ出した時に
ジロンド派の若者に助けられたよ』
『えっ…そうなんだ。
(良かった…)』
胸を撫で下ろすと
男の人のような声は
『けど、
彼女はその後で
革命家……を殺すけどね』と言った。
『えっ…』
耳を疑った。
……は、
そんな事をする人じゃない。
なのに、
人殺しをするなんて…
『あれ?
君も聞いたことがあるはずだよ。
自宅の浴室にて薬湯に浸かった……を
……が殺害した事件を』
声の主が言ってることがわからなかった。
『…どうして…』
絞り出した言葉に
声の主は『どうして?
それは君もよく知ってるはずだよ』と言い
話を続けた。
『自由とは、
ルールがあるからこそ
光り輝くもので
ただただ自由なだけでは
惰眠を貪るのと変わらない。
君と彼女は
孤児院の書斎で見た本の中の
ジャン=ジャック•ルソーの思想に触れ
自由を志すようになった。
けど、
彼女は過激派から逃げる最中
シスターや子供達の死を直視し
さらに 噂に聞いていた過激派による
恐怖政治や敵対思想を持つ者達への
ギロチン刑…
貴族への絞首刑を
実際に目の当たりにして
許せなかったのさ。
だから…』
男の人の声が言いかけて
私が『そんな…信じられない』と言った。
『ふむ…だが、
事実 君も見ているはずだよ。
山岳派が君を追いかけ
高台を上ってくる様子を』
『………』
言葉が出て来なかった。
沢山の人の怒声…
私を探す足音…
逃げ場を無くした私は…
『その様子だと思い出したようだね。
彼女はその後、
裁判にかけられて
死刑判決が決定するんだけど
そういえば 君は 彼女が処刑された時
広場に居たんだよね』
『嘘…私は ……の死ぬ姿なんて…』
嫌だ…認めるのがとても怖い…
認めたら2度と……に会う事が
出来なくなる気がする…
認めたら2度と約束を守れない気が…約束?
……との約束…
『ねぇ、
私はとても大事な約束を
……とした気がするんだけど…』
言いかけて
声の主は『話が出ず
少しだけ心配したけど
やっと思い出したか。
いいよ、
君が思い出せない記憶を
思い出させてあげる』と言い
再び指を鳴らすような音が聞こえ
華やかな都会の風景から
礼拝堂のような風景に変わった。
『ここは…』
この風景は、
どこか覚えてる気がする…
『ギロチン刑に処された……の遺体は
ここに埋葬され
君は毎日のように……のお墓を訪れては
孤児院時代に話していたように
……のお墓の前で話をしていたね。
そして、
いつも終わりに君はこう言う…』
そこまで言うと
私は『また明日、
私の親愛なる友人 ……』と呟いた。
少しの沈黙後、
声の主は私に
『……との約束についてだが
君が……と最初に出会った日の事を
思い出して見てくれ』と言った
……と最初に出会った日の事…
そうか…
「はじめまして」
彼女はとても礼儀正しく
年下の私にもお辞儀をして
挨拶してくれた。
それから運命が別れるあの日まで
自由について思いを馳せつつ
私と彼女は 運命を共にした。
「エリス、
いつもありがとね」
そうだ…私の名前はエリス。
だけど、
あの日 私を助けてくれた人が
「身を隠さなければ…そうだ、
君は今日から
エリス=アンリ・サンソンと名乗ると良い。
少なくとも
サンソンと名乗れば
彼らは君に手出し出来ない」と言って
その日から私は
エリス=アンリ・サンソンと
名乗る事になった。
それもこれも
生きてまたあなたに会うため…けど
あなたは革命家である……を殺して
死刑判決を受けた。
あの時、
私はシャルルに泣きついた。
「どうして…どうしてなの…」
「エリス、
彼女が君の友人だなんて…」
医者であり処刑人をしていた
シャルルはわからずやな私に
何度も『申し訳ない」と言って謝った。
今思えば、
シャルルの立場で
処刑を辞められる訳が無い。
何故なら、
彼女が殺したのは
山岳派のリーダー ……なのだから。
彼を支持する人は多く
そんな彼を殺した彼女は
時代の大犯罪者と世間から言われていたし…。
けど、
私は違う。
彼女の本当の姿を知ってる。
『……は、
本を読むのが好きな
普通の女の子で…
私のお姉ちゃんで…
焼き菓子がうまく焼けなくて…
ごめん…ごめんなさい…エリスは
……を助けれなかった…』
涙が頬を伝い
ずっと我慢していたものが
涙と共に流れ出した。
『うむ…今は泣くと良い。
どうやら、
君の名前を
剥奪する事は出来ないようだし…』
それからどれだけの時間が経ったのか…
泣き疲れ眠っていた私が目を覚ますと
声の主が私に
『おはよう。
気分はどう?』と言った。
『うん…良くないよ』
『そっか…
そんな君に朗報を1つ持ってきたよ』
『ろうほう…?』
『あっ…わからないか。
えっと、
朗報って言うのは
君にとって良い情報の事さ』
声の主がそう言うと
私の見ていた少し前が
眩しいほどに光り
手で目を覆っていると
『はい、
もう眩しくないから手を退けて』と
声が聞こえ覆っていた手を退けると
光る小さな球体が浮かんでいた。
『綺麗…』
私がそう言うと
光る小さな球体から
さっきの声色で
『それはどうも。
さて、
朗報の前に
1つ確認する必要があるから
そこだけ確認させてね』と言い
話を続けた。
『確認…?』
『うん、
お約束というかね。
まず、
君の罪は 約束を破ったこと。
その約束は
君と彼女の人生に影響を及ぼすほどで
もし 君が守っていれば
彼女は処刑されなかったかもしれない…
なんのことかわかるよね?』
光る小さな球体が
私の顔の前で浮かびながらそう言うと
私は『…うん…私が
……を守れなかったから
……は孤児院で教えられた
約束を守れなかった。
私の方が先に居たんだから
……を守らなきゃだったのに…』と
言葉を返した。
そう、
孤児院のシスターは
みんなにいつも言ってた。
「正義とは
剣を振るう事ではなく
相手の事を思い守ることです。
間違っても相手を殺す事ではありません。
それに 人殺しは
どれだけ懺悔しても
許されないでしょう…」
私も……も
シスターの事が大好きで
シスターの話してくれるお話は
どれも覚えてる…なのに
私は間違えた友人を助けれなかった。
『うむ…守らなきゃね…
君は自らを責める事で
他を傷つけないようにする癖があるようだ』
『えっ…』
『それと
シスターの教えを
一生懸命守ろうとする姿勢は
誰にでも出来る事じゃない。
つまり、
素晴らしいって事さ』
『…私は…そんな事ないよ』
『素直な感想さ。
謙遜せず受け取りな。
さて、
本来 死 となった人間は
速やかにあの世へ行かなければならないけど
君は 自分の名前を覚えていて
死ぬ前の記憶を取り戻しても
とくに問題無かった。
これは、
とても素晴らしい事だ』
光る小さな球体は
そう言って私の周りを飛んだ。
『はっ!?
私、
死んでるって事は……に会えるの?』
そう言うと
光る小さな球体は
『いや、
……は処刑されたから
自殺でも無ければ
殺人でも無いから
今は会えないだろう…』と言葉を返した。
『そんな…』
俯く私に
光る小さな球体が
『まぁ、
会う為の方法が
まったく無い訳じゃないけどね』と言った。
『えっ?』
驚き顔を上げる私に
光る小さな球体が
『まぁ、
処刑は本来
自殺でも無ければ
殺人でも無い行為だから
グレーゾーンなんだ。
そして、
ここは今まで僕が行っていた
半死者の生き死にを判断する場所で
本来は 死 の判定を受けた人が
踏み入れられる場所じゃない。
けど、
君のその経験は
他が経験できるそれを
優に超えているし
君の罪は 約束を守れなかった事だから
ここに残っても良い』
『えっと…』
『おや…難しかったか。
つまり、
いずれ……もここへ流れてくるから
それまでここでゆっくりすると良い』
『…ありがとう』
そして、
……が記憶を取り戻し
壊れちゃいそうになるのを助ける為に
何度も……の記憶を奪い
その度に はじめまして を繰り返した。
けど、
記憶は奪っても
……は優しくて
誰も失わないように
最後まで半死者が生きる事を諦めない。
だから、
私は 今度こそ 約束を守る。
どれだけの悲しみからも
どれだけの苦しみからも
私はあなたを今度こそ守る。
エリス=アンリ・サンソンの名に誓って…。
~~~フランス革命 下~~~
END
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でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
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