ジャッジメント〜許されるべき魂〜

ノア

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フランス革命 中

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彼の結果。

1793年 7月 持病の皮膚病が悪化し
活動不能になっていた革命家……は、
自宅にこもり 一日中療養していたが
ある日 面会に来た……に暗殺された。

死因は、
鋭利な刃物による
心臓を一突き。

刃物は肋骨をすり抜け
心臓に到達していた事から
……は暗殺者と疑われ…


気がつくと
真っ暗闇の中にいた。

まるで
酷い2日酔いにでもなったかのように
頭が割れそうなほど痛くとても気持ち悪い…

『ここは…』

吐き気を我慢しつつ
歩いていると前方に
書斎に置いていた椅子が見えた。

『…少しあそこで休むか…』

そう呟き 椅子へ近づくと
何処からか男の人の声で
『座りたまえ』と声が聞こえた。

『…何者だ!?』

声に驚き辺りを見回しつつそう言うが
周りには誰もいなかった。

『はぁ…はぁ…うぅ…』

とても気持ち悪い…

何故だ…わからない…

何かを思い出そうとすると
知らない女の顔が思い浮かび
刺されたかのように
強い痛みが胸の辺を走る…

『いったい…何が起きてるんだ…』

そんな事を言っていると
突然俺の前方に
座っている椅子と同じような形の椅子が現れ
何処からともなく
『辛そうだね…でも 仕方ないよ。
君は 間違えたんだから』と声が聞こえた。

『間違い…?
いったい…俺が…何を間違えたと…』

息が苦しく喋るのも辛い。

いったい何を間違えたと言うんだ…俺は。

『ふ~ん なるほど。
何も思い出せないんだね。
なら、
1つずつ思い出させてあげるよ』

そう言うと
俺の返事を待たずに
何処からともなく
指を鳴らす音が聞こえ
真っ暗だった風景が
貴族の暮らす豪邸のような風景に変わった。

『ここは…』

なんだこれは?

忌々しい…俺はもっとやれたはずなのに…

『ここは、
君が産まれた家さ。
君は元々 中流階級の貴族の産まれで
兄弟は6人いた。
けど、
兄弟の中でも君は
とくに脆弱で身体能力が弱かった。
その代わりというとあれだけど
勉強はとても得意で
その甲斐あって15歳の時には
ヨーロッパの各地を遊学するほど頭が良く
後にロンドンで開業医になった』

声の主がそう言うと
俺は『悔しかった。
他の兄弟は自由に走り回れるのに
俺だけいつも…悔しくて悔しくて
なんでもいいから
見返してやろうと思った…』と言葉を返した。

『ふむ…
まっすぐで努力を惜しまなかった結果だね。
まぁ、
良かったかは別として…。
1777年 君はフランス王国に招聘され
1783年まで王弟 アルトワ伯…
後のシャルル10世のもとで働いていたけど
その頃から君は反体制運動に
身を投じるようになった』

声の主がそこまで言うと
沸々と湧き立つような怒りから
俺は『全てが許せなかった!!』と
怒鳴るように言った。

『許せなかったとは?』

声の主は驚く事なく
俺にそう言うと俺は
『何もかもが…見下してきた兄弟も
兄弟と比べて仕方ないと俺を諦めた両親も
開業医となった後も
常にその思いが付き纏って
何をするにも俺は…
嫌だった何もかもが…』と言い
声の主が
『うむ…君の考えはわかったよ』と言って
話を続けた。

『それからしばらく経った1789年、
フランス革命勃発後
君は人民の友という新聞を発行し
政府への過激な記事の内容から
下層民達に支持されるようになった』

『あぁ…認められたようだった…』

俺がそう言うと
声の主は『認められたようだった?』と
聞き返し
俺は『頼られたんだ。
まるで、
自分が正義のヒーローにでもなったような
感覚だった…』と言葉を返した。

『う~ん、
正義のヒーローか…まぁ、
捉え方は人それぞれだし
僕がこうしなさいとか言える
立場じゃ無いし…まぁいいか。
さてと、
1790年 人民の友を発行し続けた君は
グレートブリテン王国に
亡命することになる。
まぁ、
間違いではないね。
だって、
そう言う記事を載せてたんだし』

そう言うと
何処からともなく
再び指を鳴らす音が聞こえ
貴族の暮らす豪邸のような風景から
修道院のような風景に変わった。

『ここは…』

ブリテンから帰った俺は
王政打破をしていた
コルドリエクラブに入り…

『ふふふ…その目は
もうわかってるみたいだね。
君はこのコルドリエ修道院に入った後
王宮襲撃事件や
反革命派への大量虐殺を引き起こし
1792年 国民国会に選出され
山岳派に所属することとなった』

そうだ…その後、
俺は議会を主導するジロンド派に
武力攻撃を行い
一時 逮捕され…

『君はジロンド派を襲い
その事で一時 逮捕されたけど
山岳派…いや 君を支持する者達の手により
すぐに釈放され
パリの民衆を発起させる。
そして、
最終的にジロンド派を
国民国会から追放した』

声の主がそう言うと
俺の心の中に高揚感に似た感情が
湧き立つような感覚がした。

『そうだ…俺達は勝利したんだ』

そう言うと
声の主は『勝利か…まぁ、
勝利といえば勝利だし
君の人生はこの出来事によって
完全に終わったとも言える』と言った。

『…終わり?
何が終わりだ!!
俺達はジロンド派を追放し
勝利したんだ!!なのに何が…』

怒声する俺に
声の主は『悪かったよ』と言い
話を続けた。

『1793年、
それまでに君は
敵対するジロンド派の残りを
ギロチン刑に処したり
貴族のプライドを踏み躙るように
絞首刑に処して見世物にしたり
やりたい放題していた結果。
天罰なのか、
持病の皮膚病が悪化し
自宅にて薬湯に浸かり
療養することとなった』

言い終え、
再び指を鳴らす音が聞こえると
修道院の風景から
薬湯の入った浴槽の風景に変わった。

『ここは…そうか。
俺は、
あいつに…!!』

押し込められていたものが噴き出るように
俺の心の奥に封じていた記憶が
蘇り 怒りが湧き出てきた。

『えぇ、
君はここで
ジロンド派の少女に殺された。
けど、
君は何故 彼女に殺されたのか
覚えてるかい?』

何故殺された?

そんなの俺が
山岳派のリーダーになったからだろ…うん?

そういえば、
あの女 俺を刺した後 何か言っていたような…

思い出せん。

何を言ってたんだ…

考えていると
声の主が『おや?
思い出せないのかい?
仕方ない…手伝ってあげよう』と言って
指を鳴らすと 次の瞬間、
俺の心の奥に封じ込められていた
怒りとは違う何かが浮上し
俺は その言葉を思い出した。

「…そうやって…あなたは
沢山の人の命を奪った…
私の大切な人達の命も…」

なんだこの記憶は…

何故、
俺を殺したあの女は泣いている…

「けど…
恨んで殺すのはいけないことだから
どうかあなたが次産まれ変わる時は
愛される人生でありますように…」

やめろ…俺をそんな眼で見るな!!

『うわぁぁぁ!!!!…はぁ…はぁ…
なんだ…今のは…』

悪夢から目覚めたかのように
心臓が鼓動を繰り返している…
なんだこれは…なんなんだこれは…

『おや?
なんだこれは だなんて
他人行儀な言い方しなくても
全て君がここで見た記憶だよ』

『俺の記憶…?』

信じられない…
俺は…

『どうやら、
その様子は思い出せたようだね。
彼女は君を恨んだけど
最後の瞬間は
君の幸福を願ってた』

声の主がそう言うと
俺は『そんな人間いる訳ないだろ!?』と
言葉を返した。

『そんな人間?
でも、
君も見た通り
彼女は君の最後を…』

声の主が言いかけて
俺は『うるさい!!
俺は今まで脆弱な身体の所為で
誰からも蔑まれ見下されてきた。
だから、
認められようと努力し
今の地位に上り詰めたのに
ただの取るに足らない
小娘なんかに…』と言い
声の主が『ふふふ…
まだわからないのかい?
君が彼女に殺された理由が』と
言葉を返した。

『殺された理由?』

俺がそう言うと
声の主は『君はさっき
ジロンド派を追放した事に
勝利と言っていたよね?
けど、
君がジロンド派を追放し
その後 行った虐殺によって
その取るに足らない少女は悲しみ
沢山の別れを経験した。
それは、
並の人間が経験できる内容とは
大きく逸脱しているとも言える』

『………』

『何故彼女に殺されたか…それは、
君が踏み躙った何千何万という人の思いを
時に共に泣き…
時に共に苦しみ…
分かち合おうとした彼女の絆に
君は負けたのさ』

そうか…俺は
脆弱な身体を言い訳に
ただ認められたいだけで
誰の思いも理解せず生きてきたのか…

何もわかってないのは俺だったのか…

『俺の間違いは、
地位に調子付いて…乗せられ…
再び見下される事を恐れて…
何もかも怖くなって…
大切なものが見えなかった事』

そう言うと
少しの沈黙の後
声の主は『ご名答。
ちなみに、
君の名前は剥奪させてもらったよ。
もう必要無いからね』と言葉を返した。

『…償えないだろうか…』

『うん?
償い?』

『あぁ…
何人も殺した俺に
言う権利は無いだろうけど
せめて 殺してきた者へ償いをしたい』

俺がそう言うと
声の主は『ふむ…まぁ、
君の罪は元々 殺人ではなく偽り だから
できなくは無いけど…償いたいかい?』と
言葉を返した。

『あぁ…じゃないと
あの女に顔合わせが出来ない』

『そっか…。
良いけど、
そうなるとせっかく思い出してもらった
その記憶は邪魔にだろうし
君のその性格は厄介でしか無いから…』

そう言うと
突然目の前に眩い光が見え
そこで俺の意識は途切れた。


気がつくと
椅子に座っていた。

『ここは…』

椅子が並べられた空間で目を覚ました私は
何故こんな空間にいるのかわからず
何故 執事服を着ているかもわからないまま
しばらく考えていたが
答えが出ない事に気づき考えるのをやめた。

そういえば、
考えている時に
一つ思い出した事がある。

『…自殺者 殺人犯には 死を。
ルールに公平であれ』

そう呟くと
私はいつものように
闇へ消えた。




~~~フランス革命 中~~~

END










追記

はじめまして
正義を果たした小娘よ

私は名も無き破壊者にして
大量虐殺を犯した者

小娘の家族も友人も奪い
市民を悪政で苦しめた私は
おまえに恨まれてるのだと
ずっと思っていた。

けど、
おまえは私に
「けど…
恨んで殺すのはいけないことだから
どうかあなたが次産まれ変わる時は
愛される人生でありますように…」
なんて言って…

何故私を許した…
何故この運命から解き放とうとした…
おまえの考えが理解できない…

だが、
次会えたなら
今度は友として会いたいと思っている。

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