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フランス革命 上
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彼女の結果。
1793年 7月 フランス•パリにて
……はフランスの革命指導者である
……を殺害した。
……は
一般の意見を広く聞きたいと
常日頃から門扉を開けており
かつ病気療養中で薬湯に浸かり
執務を行っていたため……が接近するには
容易であったとされている。
……の死体は包丁によって
肋骨をすり抜けて心臓を
一突きにされており、
高い技能が求められるため、
裁判官からは
「他にも何人か殺しているのでは」と
疑われた。
が、
……は
過去の殺人を疑われたこと以外
声を荒げることすらせず
死刑判決を受け入れた時
ただ肖像画を1枚描いて欲しいと希望し
即日ギロチンで処刑された。
私には記憶が無い。
どこの誰で
どんな事をしていて
何が好きだったのか…
そんな記憶すら私は覚えていない。
仲の良かった友達の顔も…
死別した母の顔も…
何故亡くなったのかも…
何も覚えていない。
あるのは、
私の記憶なのかもわからない
思い出だけ…。
気がつくと
私は真っ暗闇に横たわっていた。
冷たいのか暑いのかそれとも
痛いのか苦しいのか何もわからなかった。
けど、
何故かこの暗闇の中に
困っている人がいる気がして
私はただ暗闇の中を歩き続けた。
しばらくして
少し向こうに懐かしい木の椅子が見えた。
なんというか…
私のことを見守ってくれる人達と共に
歩んでいた頃に座ったような…
誰と歩んだのかはわからないけど
でも とにかく懐かしかった。
『エリス…?』
何故だろう…椅子を見てると
エリスという名前が頭に浮かんだ。
誰の事だろう…わからない…けど、
すごく懐かしくて
何度もその名前を口にしたような気がした。
木の椅子の前まで来ると
何処からか男の人の声で
『座りたまえ』と聞こえ
私は木の椅子に座った。
次の瞬間、
明るく照らされ
私の椅子を囲うように
椅子がぐるりと置かれている事に気づいた。
『………』
けど、
ずっと前からここを知ってる気がする。
『あら?
あなたは…』
私の座る椅子の前の椅子から
年老いた女の人のような声が聞こえた。
『…あなたは新しい人?』
見えない誰かに
私がそう言うと
見えない誰かは
年老いた女の人の声を借りて
私に『あなた、
もしかして処刑された人?』と言った。
『わからない…』
自分が誰なのか…
何故死んだのか…
自分の名前すら何も思い出せない。
ただ、
また1つ思い出した事があった。
『…エリスを知ってる?』
見えない誰かに言うと
見えない誰かは
『それは………の事かい?』と言った。
なんて言ったのか
はっきり聞き取れなくてわからなかった。
だから、
もう一度見えない誰かに
『エリスを
知っていたら教えてほしい』と言うと
見えない誰かは
さっきまでの年老いた女の人の声ではなく
若い男の人のような声で
『誰の事だかわからないな…』と言った。
『嘘…だよね?
あなたの事 知ってる気がする。
けど、
あなたの顔が
どうしても思い出せないわ』
私がそう言うと
見えない誰かが『ふふふ…』と笑い
『私はあなたの事をよく知ってます』と
若い女の人の声で言葉を返し
話を続けた。
『今更だが、
名無しの権兵衛と呼ばれるのも
少々傷つくから
僕の事は アラン•スミシーと呼べば良いよ』
見えない誰かは
少年のような声に変わりそう言うと
私が『架空の映画監督の名前なんて
洒落てますね』と皮肉を言った。
『ハハハ…
その様子だと
僕の正体はお見通しみたいだね』
『えぇ、
アランさん…いえ
至上者さんと言うべきかしら?』
私がそう言うと
目の前の椅子が光り
小さな球体が現れた。
『お気に召したかい?
作られた記憶は』
光る小さな球体がそう言うと
私が『やっぱり…』と言葉を返した。
いったいいつから…
私の記憶はどこまでが
作られた記憶なのか…
それに、
作られた記憶なら
本当の私は何処の誰なの…
『やっぱりってわかってたんだ?
だけど、
君の記憶は
全て作られてる訳じゃない。
そうだ…クイズをしないか?』
光る小さな球体がそう言うと
私が『クイズ?』と言った。
『そう、
例えば 君の正体についてとか…』
光る小さな球体は
私の周りを飛びつつ言った。
『私の正体…?』
『そう。
あっ…そうだった。
君の罪は革命家殺しだよ』
『…革命家殺し?
革命家って…』
私がそこまで言うと
光る小さな球体は
『さて、
クイズの時間だ。
あなたは 何故革命家を殺した?』と言った。
『何故殺したって…』
わからない…
殺した記憶が無いのに何故殺したかなんて…
考えていると
光る小さな球体が
『ちなみに 君の罪とは別に
君がここに来た理由は 1つだけ。
最初にも言ったけど
君が処刑されたから』と言った。
私が処刑されたから…
それは、
いったいどういう意味なのだろう…
『そうだ。
君がここに来た時
現世で呼ばれていた名前は
剥奪させてもらったよ』
光る小さな球体がそう言うと
私は『どうして?』と言葉を返した。
『ここは現世では無いから
名前は意味を持たないし必要無い。
さて、
君は処刑された人間だ。
処刑された人間は
そもそも自殺とも殺人とも違う』
そう言うと
光る小さな球体は
私の顔の前に移動し
『君は 13歳で母と死別し
孤児院へ預けられ
18歳までを
孤児院で暮らす事になる』と言った。
『孤児院…』
記憶の中、
シスターと共に歩いた石畳の道…
私と同い年の子と遊んだ庭…
共に夕食を食べた食堂…
けど、
何処も言われるまで思い出せなかった。
何故…何故思い出せないの?
私は…誰?
『君の探していた
エリスと君が出会ったのは
その孤児院の庭先さ』
そう言うと
何処からともなく
指を鳴らす音が聞こえ
周りの風景が
教会の庭先のような場所に変わった。
『ここは…』
記憶の奥底に忘れていたような
懐かしい感覚がした。
『アルムスター孤児院。
君はここで世界の何たるかを知る事になる』
光る小さな球体がそう言うと
私の視界が暗くなり
さっきとは違う
暖炉の暖かみのような感覚と
胸を突き刺されたような
心の痛みを感じた。
『うぅ…』
苦しみしゃがみ込む私に
光る小さな球体は目の高さまで来ると
『苦しいか?
君はここでエリスと出会い
ジャン=ジャック•ルソーの思想に触れた』と
言った。
『…ジャン=ジャック•ルソー…?』
その名前を口にすると
どこか光で照らされたような勇気が
心の中に湧いてくるのがわかった。
『ふふふ…
君の生きてきた思想の根源であり
友と約束を交わした理由でもあるね』
光る小さな球体がそう言うと
脳裏に
長い髪をポニーテールのように
縛った女の子が「私達は自由だよ。
どんな物にも縛られず
この風のように
いつか広い世界を旅するの」と言って
微笑むイメージが浮かんだ。
『エリス…?』
私が呟くと
再び指を鳴らすような音が聞こえ
さっきまでの教会の庭先のような風景から
華やかな都会のような風景に変わった。
『ここは…』
見た事がある…。
胸が躍るようなウキウキした気持ちと…
静かな怒りが私を照らした場所…
『18歳のある日、
君がフランス革命に夢中になっていた頃
その手の書物を読んでいくうちに
君は革命を過激に行う山岳派を険悪し、
山岳派との政争に敗れた
ジロンド派を支持するようになる。
そして、
ある日 最悪なことが起きて
ジロンド派議員と接触した君は
山岳派のリーダーである……を
殺害する為の計画を立てると
修道院を出て
単身花の都 パリへと上京した。
まぁ、
その時 修道院を出た理由は他にもあるけど
その表情からして
その時の気持ちは
記憶が薄れても消えてないようだね…』
私の表情を見るように
光る小さな球体は顔の前を飛びつつ言った。
『パリ…名前は覚えてないけど
私はここで
やらなきゃいけない事があって…』
そう言うと
光る小さな球体が
『やらなきゃいけないことか…
修道院でお手伝いしていた時に使っていた
包丁を持ってきたのはその為かい?』と言い
ふと気づくといつのまにか
私の右手には
ボストンバッグが握られていた。
『なっ…』
驚き手を離そうとするけど
私の右手はボストンバッグを離さなかった。
まるで、
その中に 大切な人達の思いが
そっと込められてるようで
ボストンバッグを離せなかった。
『ちなみに 君が
なんでジロンド派を支持し
過激派のリーダーである……を
殺す計画を立てたかだけど…』
光る小さな球体が言いかけて
私の口が『シスターを…みんなを…』と言い
眼から涙が溢れた。
苦しい…胸が張り裂けそうなほど
苦しくてたまらない…。
大切な人達が私の前で亡くなり
孤児院を襲った過激派から
助けてくれたのはシャルルら
ジロンド派の人達だった。
『そうだ…私は、
みんなと約束したんだ。
「悲しむ人のいない
平和な世の中にする」って…』
そう言うと
光る小さな球体は
『ふむ…平和な世の中か…
この先を知っている者からしたら
皮肉な言葉だな…』と呟き 話を続けた。
『その後、
暗殺の訓練を受けた訳でも無い
ただの少女は革命家……を殺害し
そして、
少女はその時居合わせた
支持者らによって取り押さえられ
国民衛兵により
現行犯逮捕され牢獄に収監され
公安委員会の尋問を受ける事になる』
言い終えると
何処からか指を鳴らすような音が聞こえ
パリの街並みの風景から
尋問室のような風景に変わった。
『………』
俯き黙る私を見て
光る小さな球体は
『その様子だと
君はその時から覚悟を決めてたようだね』
と言い 話を続けた。
『その後、
公安委員会は
……の遺体を解剖し
凶器と見られた包丁が肋骨をすり抜け
心臓を一突きしている事がわかると
「他にも何人か殺してるのでは…」と
君を疑って
革命裁判に調査を命じた。
その際だったか 君は
他にも何人か殺してるのではって
疑われた瞬間 声を荒げたんだよね?』
そうだ…私は
……以外誰も殺してない。
なのに…
『まぁ、
パリに来て4日で
暗殺者顔負けの手口で
革命家を殺せば 誰もが君を暗殺者と疑うよ』
光る小さな球体がそう言うと
私は光る小さな球体に
『はっ…エリス、
エリスはどうなったの?』と聞いた。
『孤児院の子のことかい?
君は本当に何も覚えて無いのか?
なら、
思い出せるように
魔法の言葉を教えてあげる』
そう言って
私の耳元に近づくと
『彼女は君に全てを託し
過激派に殺されるくらいならと
孤児院を見下ろす高台まで上ると
そこから飛び降りたよ』と
囁くように言った。
その瞬間、
私の頭の中は真っ白になり
記憶の奥底を
封じていた扉が開くような感覚がして
エリスのことを少しだけ思い出した。
『そうだ…
エリスが私を孤児院から逃してくれて
その後でジロンド派の人に助けられて…
エリスは私と別れる時に
「……の翼は
私よりずっと美しい…だから、
その翼で自由を掴んで」って…
私…何も出来なかった…』
そう言いながら
涙がこぼれ落ちた。
『ふむ…君はその後、
コンシェルジュリーに移送された後
革命裁判にて 陪審員による評決の結果
死刑と決まった』
そう言うと
何処からか再び指を鳴らす音が聞こえ
尋問室の風景から
広場のような風景に切り替わった。
『…ここは…』
覚えてる。
ここは、
私が処刑された広場。
『革命広場。
後に
コンコルド広場と呼ばれたここで
君のギロチン刑が行われた』
そうだ…この石畳…
私と…彼が付き添ってくれたっけ…。
「……を殺した後も縛られましたが、
とても乱暴な縛り方で手に傷がつきました。
そうならないように、
どうか手袋をしてもよろしいでしょうか」
「大丈夫、
私はまったく痛くないように縛ることが
出来ますから 安心してください」
そう…私は…
『革命家を殺した理由は
苦しみ死んでいく人を無くすため…』
私がそう言うと
光る小さな球体は
少しの沈黙の後
『正解…その通りだ。
君は誰より気高く
最後の瞬間まで戦っていた』と
言葉を返した。
『アランさん、
あなたはどうして私をここに…』
言いかけて
光る小さな球体は
私の目の前まで近づき
『ここは
半死者の生き死にを決める
言わば揺籠のような場所で
自殺や殺人を犯した者には
死が待っている』と言い
私が『知ってる気がする…私、
ずっと前にもここに来た事があるような…』
と言葉を返した。
『まぁ…だろうね。
君がここに再び来た理由は
革命家殺し…いや 処刑された事で
君と言う存在の罪は
自殺でもなければ殺人でもない
グレーゾーンな存在になってしまった。
あの世に送るのは簡単だが
君のその経験は
並の人間では積むことの出来ない経験であり
きっと半死者の生き死にを判断する時には
大いに役立つだろう』
そこまで言うと
私は『違う…私は 人を殺してる。
だから、
私の本当の罪は…』と言いかけて
光る小さな球体が
『そうか…その記憶は
とても役立つが
君の感を鈍らせてしまうようだ。
ならば、
今一度 全ての記憶を無くし
生まれ変われ…』と言い
次の瞬間 私の視界は暗転した。
目が覚めると
長い髪をポニーテールのように
後ろに縛った少女が
私のことを心配そうに見ていた。
『……、
…ごめんなさい…』
少女がそう言うと
私は『…あなたは誰?』と言った。
少女は悲しそうな表情に一瞬なったものの
すぐに微笑みを浮かべて
『はじめまして、
お姉ちゃん。
私の名前は…今は内緒』と言った。
『内緒…?』
『うん。
ねぇ、
お姉ちゃんは
どうしてここにいるの?』
『えっ?
どうしてここにって…なんでだっけ?』
『そっか…思い出せないだね。なら安心…』
『えっ?』
『なんでもないよ。
それより、
お姉ちゃんは…』
私は嘘つきだ。
……の記憶を奪っておいて
知らないふりして
……をお姉ちゃんと呼んで
親しげに接してる。
本当は、
泣きながら再会を喜びたいし
……の話を聞きたい。
けど、
至上者が
『このままでは
彼女がダメになってしまう。
せっかく記憶を取り戻す事が出来たが
彼女が消えてしまっては
全てが無駄になってしまう…
エリス、
もう一度 彼女の記憶を消してくれ』って
言ったから…。
…ねぇ、
あなたはまたいつか
エリスって私のことを呼んでくれる?
そして、
いつかのように
またあなたと自由について語って…
思い出をありがとう。
この再会に私は 感謝します。
親愛なる友…そして、
はじめまして
名も知らない私の大切な家族(友人)
~~~フランス革命 上~~~
END
1793年 7月 フランス•パリにて
……はフランスの革命指導者である
……を殺害した。
……は
一般の意見を広く聞きたいと
常日頃から門扉を開けており
かつ病気療養中で薬湯に浸かり
執務を行っていたため……が接近するには
容易であったとされている。
……の死体は包丁によって
肋骨をすり抜けて心臓を
一突きにされており、
高い技能が求められるため、
裁判官からは
「他にも何人か殺しているのでは」と
疑われた。
が、
……は
過去の殺人を疑われたこと以外
声を荒げることすらせず
死刑判決を受け入れた時
ただ肖像画を1枚描いて欲しいと希望し
即日ギロチンで処刑された。
私には記憶が無い。
どこの誰で
どんな事をしていて
何が好きだったのか…
そんな記憶すら私は覚えていない。
仲の良かった友達の顔も…
死別した母の顔も…
何故亡くなったのかも…
何も覚えていない。
あるのは、
私の記憶なのかもわからない
思い出だけ…。
気がつくと
私は真っ暗闇に横たわっていた。
冷たいのか暑いのかそれとも
痛いのか苦しいのか何もわからなかった。
けど、
何故かこの暗闇の中に
困っている人がいる気がして
私はただ暗闇の中を歩き続けた。
しばらくして
少し向こうに懐かしい木の椅子が見えた。
なんというか…
私のことを見守ってくれる人達と共に
歩んでいた頃に座ったような…
誰と歩んだのかはわからないけど
でも とにかく懐かしかった。
『エリス…?』
何故だろう…椅子を見てると
エリスという名前が頭に浮かんだ。
誰の事だろう…わからない…けど、
すごく懐かしくて
何度もその名前を口にしたような気がした。
木の椅子の前まで来ると
何処からか男の人の声で
『座りたまえ』と聞こえ
私は木の椅子に座った。
次の瞬間、
明るく照らされ
私の椅子を囲うように
椅子がぐるりと置かれている事に気づいた。
『………』
けど、
ずっと前からここを知ってる気がする。
『あら?
あなたは…』
私の座る椅子の前の椅子から
年老いた女の人のような声が聞こえた。
『…あなたは新しい人?』
見えない誰かに
私がそう言うと
見えない誰かは
年老いた女の人の声を借りて
私に『あなた、
もしかして処刑された人?』と言った。
『わからない…』
自分が誰なのか…
何故死んだのか…
自分の名前すら何も思い出せない。
ただ、
また1つ思い出した事があった。
『…エリスを知ってる?』
見えない誰かに言うと
見えない誰かは
『それは………の事かい?』と言った。
なんて言ったのか
はっきり聞き取れなくてわからなかった。
だから、
もう一度見えない誰かに
『エリスを
知っていたら教えてほしい』と言うと
見えない誰かは
さっきまでの年老いた女の人の声ではなく
若い男の人のような声で
『誰の事だかわからないな…』と言った。
『嘘…だよね?
あなたの事 知ってる気がする。
けど、
あなたの顔が
どうしても思い出せないわ』
私がそう言うと
見えない誰かが『ふふふ…』と笑い
『私はあなたの事をよく知ってます』と
若い女の人の声で言葉を返し
話を続けた。
『今更だが、
名無しの権兵衛と呼ばれるのも
少々傷つくから
僕の事は アラン•スミシーと呼べば良いよ』
見えない誰かは
少年のような声に変わりそう言うと
私が『架空の映画監督の名前なんて
洒落てますね』と皮肉を言った。
『ハハハ…
その様子だと
僕の正体はお見通しみたいだね』
『えぇ、
アランさん…いえ
至上者さんと言うべきかしら?』
私がそう言うと
目の前の椅子が光り
小さな球体が現れた。
『お気に召したかい?
作られた記憶は』
光る小さな球体がそう言うと
私が『やっぱり…』と言葉を返した。
いったいいつから…
私の記憶はどこまでが
作られた記憶なのか…
それに、
作られた記憶なら
本当の私は何処の誰なの…
『やっぱりってわかってたんだ?
だけど、
君の記憶は
全て作られてる訳じゃない。
そうだ…クイズをしないか?』
光る小さな球体がそう言うと
私が『クイズ?』と言った。
『そう、
例えば 君の正体についてとか…』
光る小さな球体は
私の周りを飛びつつ言った。
『私の正体…?』
『そう。
あっ…そうだった。
君の罪は革命家殺しだよ』
『…革命家殺し?
革命家って…』
私がそこまで言うと
光る小さな球体は
『さて、
クイズの時間だ。
あなたは 何故革命家を殺した?』と言った。
『何故殺したって…』
わからない…
殺した記憶が無いのに何故殺したかなんて…
考えていると
光る小さな球体が
『ちなみに 君の罪とは別に
君がここに来た理由は 1つだけ。
最初にも言ったけど
君が処刑されたから』と言った。
私が処刑されたから…
それは、
いったいどういう意味なのだろう…
『そうだ。
君がここに来た時
現世で呼ばれていた名前は
剥奪させてもらったよ』
光る小さな球体がそう言うと
私は『どうして?』と言葉を返した。
『ここは現世では無いから
名前は意味を持たないし必要無い。
さて、
君は処刑された人間だ。
処刑された人間は
そもそも自殺とも殺人とも違う』
そう言うと
光る小さな球体は
私の顔の前に移動し
『君は 13歳で母と死別し
孤児院へ預けられ
18歳までを
孤児院で暮らす事になる』と言った。
『孤児院…』
記憶の中、
シスターと共に歩いた石畳の道…
私と同い年の子と遊んだ庭…
共に夕食を食べた食堂…
けど、
何処も言われるまで思い出せなかった。
何故…何故思い出せないの?
私は…誰?
『君の探していた
エリスと君が出会ったのは
その孤児院の庭先さ』
そう言うと
何処からともなく
指を鳴らす音が聞こえ
周りの風景が
教会の庭先のような場所に変わった。
『ここは…』
記憶の奥底に忘れていたような
懐かしい感覚がした。
『アルムスター孤児院。
君はここで世界の何たるかを知る事になる』
光る小さな球体がそう言うと
私の視界が暗くなり
さっきとは違う
暖炉の暖かみのような感覚と
胸を突き刺されたような
心の痛みを感じた。
『うぅ…』
苦しみしゃがみ込む私に
光る小さな球体は目の高さまで来ると
『苦しいか?
君はここでエリスと出会い
ジャン=ジャック•ルソーの思想に触れた』と
言った。
『…ジャン=ジャック•ルソー…?』
その名前を口にすると
どこか光で照らされたような勇気が
心の中に湧いてくるのがわかった。
『ふふふ…
君の生きてきた思想の根源であり
友と約束を交わした理由でもあるね』
光る小さな球体がそう言うと
脳裏に
長い髪をポニーテールのように
縛った女の子が「私達は自由だよ。
どんな物にも縛られず
この風のように
いつか広い世界を旅するの」と言って
微笑むイメージが浮かんだ。
『エリス…?』
私が呟くと
再び指を鳴らすような音が聞こえ
さっきまでの教会の庭先のような風景から
華やかな都会のような風景に変わった。
『ここは…』
見た事がある…。
胸が躍るようなウキウキした気持ちと…
静かな怒りが私を照らした場所…
『18歳のある日、
君がフランス革命に夢中になっていた頃
その手の書物を読んでいくうちに
君は革命を過激に行う山岳派を険悪し、
山岳派との政争に敗れた
ジロンド派を支持するようになる。
そして、
ある日 最悪なことが起きて
ジロンド派議員と接触した君は
山岳派のリーダーである……を
殺害する為の計画を立てると
修道院を出て
単身花の都 パリへと上京した。
まぁ、
その時 修道院を出た理由は他にもあるけど
その表情からして
その時の気持ちは
記憶が薄れても消えてないようだね…』
私の表情を見るように
光る小さな球体は顔の前を飛びつつ言った。
『パリ…名前は覚えてないけど
私はここで
やらなきゃいけない事があって…』
そう言うと
光る小さな球体が
『やらなきゃいけないことか…
修道院でお手伝いしていた時に使っていた
包丁を持ってきたのはその為かい?』と言い
ふと気づくといつのまにか
私の右手には
ボストンバッグが握られていた。
『なっ…』
驚き手を離そうとするけど
私の右手はボストンバッグを離さなかった。
まるで、
その中に 大切な人達の思いが
そっと込められてるようで
ボストンバッグを離せなかった。
『ちなみに 君が
なんでジロンド派を支持し
過激派のリーダーである……を
殺す計画を立てたかだけど…』
光る小さな球体が言いかけて
私の口が『シスターを…みんなを…』と言い
眼から涙が溢れた。
苦しい…胸が張り裂けそうなほど
苦しくてたまらない…。
大切な人達が私の前で亡くなり
孤児院を襲った過激派から
助けてくれたのはシャルルら
ジロンド派の人達だった。
『そうだ…私は、
みんなと約束したんだ。
「悲しむ人のいない
平和な世の中にする」って…』
そう言うと
光る小さな球体は
『ふむ…平和な世の中か…
この先を知っている者からしたら
皮肉な言葉だな…』と呟き 話を続けた。
『その後、
暗殺の訓練を受けた訳でも無い
ただの少女は革命家……を殺害し
そして、
少女はその時居合わせた
支持者らによって取り押さえられ
国民衛兵により
現行犯逮捕され牢獄に収監され
公安委員会の尋問を受ける事になる』
言い終えると
何処からか指を鳴らすような音が聞こえ
パリの街並みの風景から
尋問室のような風景に変わった。
『………』
俯き黙る私を見て
光る小さな球体は
『その様子だと
君はその時から覚悟を決めてたようだね』
と言い 話を続けた。
『その後、
公安委員会は
……の遺体を解剖し
凶器と見られた包丁が肋骨をすり抜け
心臓を一突きしている事がわかると
「他にも何人か殺してるのでは…」と
君を疑って
革命裁判に調査を命じた。
その際だったか 君は
他にも何人か殺してるのではって
疑われた瞬間 声を荒げたんだよね?』
そうだ…私は
……以外誰も殺してない。
なのに…
『まぁ、
パリに来て4日で
暗殺者顔負けの手口で
革命家を殺せば 誰もが君を暗殺者と疑うよ』
光る小さな球体がそう言うと
私は光る小さな球体に
『はっ…エリス、
エリスはどうなったの?』と聞いた。
『孤児院の子のことかい?
君は本当に何も覚えて無いのか?
なら、
思い出せるように
魔法の言葉を教えてあげる』
そう言って
私の耳元に近づくと
『彼女は君に全てを託し
過激派に殺されるくらいならと
孤児院を見下ろす高台まで上ると
そこから飛び降りたよ』と
囁くように言った。
その瞬間、
私の頭の中は真っ白になり
記憶の奥底を
封じていた扉が開くような感覚がして
エリスのことを少しだけ思い出した。
『そうだ…
エリスが私を孤児院から逃してくれて
その後でジロンド派の人に助けられて…
エリスは私と別れる時に
「……の翼は
私よりずっと美しい…だから、
その翼で自由を掴んで」って…
私…何も出来なかった…』
そう言いながら
涙がこぼれ落ちた。
『ふむ…君はその後、
コンシェルジュリーに移送された後
革命裁判にて 陪審員による評決の結果
死刑と決まった』
そう言うと
何処からか再び指を鳴らす音が聞こえ
尋問室の風景から
広場のような風景に切り替わった。
『…ここは…』
覚えてる。
ここは、
私が処刑された広場。
『革命広場。
後に
コンコルド広場と呼ばれたここで
君のギロチン刑が行われた』
そうだ…この石畳…
私と…彼が付き添ってくれたっけ…。
「……を殺した後も縛られましたが、
とても乱暴な縛り方で手に傷がつきました。
そうならないように、
どうか手袋をしてもよろしいでしょうか」
「大丈夫、
私はまったく痛くないように縛ることが
出来ますから 安心してください」
そう…私は…
『革命家を殺した理由は
苦しみ死んでいく人を無くすため…』
私がそう言うと
光る小さな球体は
少しの沈黙の後
『正解…その通りだ。
君は誰より気高く
最後の瞬間まで戦っていた』と
言葉を返した。
『アランさん、
あなたはどうして私をここに…』
言いかけて
光る小さな球体は
私の目の前まで近づき
『ここは
半死者の生き死にを決める
言わば揺籠のような場所で
自殺や殺人を犯した者には
死が待っている』と言い
私が『知ってる気がする…私、
ずっと前にもここに来た事があるような…』
と言葉を返した。
『まぁ…だろうね。
君がここに再び来た理由は
革命家殺し…いや 処刑された事で
君と言う存在の罪は
自殺でもなければ殺人でもない
グレーゾーンな存在になってしまった。
あの世に送るのは簡単だが
君のその経験は
並の人間では積むことの出来ない経験であり
きっと半死者の生き死にを判断する時には
大いに役立つだろう』
そこまで言うと
私は『違う…私は 人を殺してる。
だから、
私の本当の罪は…』と言いかけて
光る小さな球体が
『そうか…その記憶は
とても役立つが
君の感を鈍らせてしまうようだ。
ならば、
今一度 全ての記憶を無くし
生まれ変われ…』と言い
次の瞬間 私の視界は暗転した。
目が覚めると
長い髪をポニーテールのように
後ろに縛った少女が
私のことを心配そうに見ていた。
『……、
…ごめんなさい…』
少女がそう言うと
私は『…あなたは誰?』と言った。
少女は悲しそうな表情に一瞬なったものの
すぐに微笑みを浮かべて
『はじめまして、
お姉ちゃん。
私の名前は…今は内緒』と言った。
『内緒…?』
『うん。
ねぇ、
お姉ちゃんは
どうしてここにいるの?』
『えっ?
どうしてここにって…なんでだっけ?』
『そっか…思い出せないだね。なら安心…』
『えっ?』
『なんでもないよ。
それより、
お姉ちゃんは…』
私は嘘つきだ。
……の記憶を奪っておいて
知らないふりして
……をお姉ちゃんと呼んで
親しげに接してる。
本当は、
泣きながら再会を喜びたいし
……の話を聞きたい。
けど、
至上者が
『このままでは
彼女がダメになってしまう。
せっかく記憶を取り戻す事が出来たが
彼女が消えてしまっては
全てが無駄になってしまう…
エリス、
もう一度 彼女の記憶を消してくれ』って
言ったから…。
…ねぇ、
あなたはまたいつか
エリスって私のことを呼んでくれる?
そして、
いつかのように
またあなたと自由について語って…
思い出をありがとう。
この再会に私は 感謝します。
親愛なる友…そして、
はじめまして
名も知らない私の大切な家族(友人)
~~~フランス革命 上~~~
END
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