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2-3 お迎えは婚約者
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目を覚ますとそこは見慣れない場所だった。木の天井、木の床、硬いベットに横に置かれたあの小箱。そうだ、ここはラズの部屋。やっと状況を理解した私は誰もいない部屋で起き上がる。寝る時には着の身着のままであったから早く準備しなければいけない。いないラズは団長さんか訓練でもしているのだと決めつけ、周囲から隠れるように部屋を抜け出した。
まだ日が上がったばかりで訓練後に朝食を配ることを考えると急がないと。女性用のお風呂場で体を手早く洗い、服を着替え、歯を磨き、髪を整えて、ドタバタと調理室へ向かう。
そして、その途中に現れたのは小さく華やかな女性。ふわりと柔らかそうなワンピースを揺らし、通る声で呼びかけてくる。
「失礼!貴方、ラズ様達はどこにいらっしゃるか知りませんか?」
目の前で青の美しい瞳と金の絹のように艶やかな髪が揺れている。綺麗な人だ。
私にはこの人に見覚えがない。こんな無骨なところにこんな綺麗な人そうそう居ないし、高貴な見た目からしてこの女性は貴族なはず。ラズの知り合い?でも勇者パーティの中で貴族といったら王子くらいだろう。王子様でなくラズを呼んでいるようだし……
「えっと……すみません。貴方様は、どのような方でいらっしゃいますか?そもそも彼らはお疲れのようでして……」
「あぁ。そうでした。急いでしまって……私、ハーゲン公爵が娘、ペトラ・ハーゲンと申します。先に送っていたラリルカが仕えている主ですの。もし不安でありましたら彼女に本当か確認されてもよろしいのですが」
「え?」
この方は領主様の娘?主が偉い人だとは聞いていたけどラリルカさんってそこから来た人だったの?
「私、勇者様御一行をお迎えするよう仰せつかっておりますの。悪い人ではございませんわ。いきなりの訪問、申し訳ありません」
「おー、やっと迎え来たか。」
大階段の上から降りてきたのは大きな荷物を持っているラズと王子様だ。その手には大きな荷物が1、2、3?なんでそんなに?
「ラ、ラズ……今、どうなってるの?」
「あー、そういうのは向こう着いてからでいいか?とりあえず、エリナも俺らに着いてこい。なんかそいつの侍女だとか言うやつがもう準備してるって」
「ええっ!?」
王子様がスタスタと歩き、ペトラ様の目の前に立ちどまる。彼女を見つめる視線はキツく、見ているだけでさえ恐怖を煽った。
「……ペトラ、なんでここにいるんだ。ここはお前の領内とはいえ、辺境だぞ。命の危機があったっておかしくない。ハーゲン公は何を考えている」
ペトラはビクリと肩を揺らしたかと思うと視線を逸らす。口元を覆うように動かされた扇子は小さく震えていた。
「あら、嫌ですわ。私、ラリルカを勇者の守姫の元に先に遣っていましたのよ。そのような危機排除しているに決まっているでしょう?ですので、ここに来るまでの御者以外、ひとりで参りましたの。護衛は御者がしてくれましたのでここには私と御者2人の3人で来たのですわ。少ない人数といえ自衛はしております。だというのに、貴方様はわざわざお父様の事など。今は私達だけで出来ることは私達だけで済ませればよろしいのよ。貴方様は婚約者に怪我なんてあったらと思われているのでしょうけど、貴方様自身にはなんの影響はございませんでしょう……ね、ラズ様もそう思われません?」
「はぁ。まぁ、どうでもいいな。長ぇ話なんて聞いていられねぇよ。とりあえず行くぞ。まぁ、エリナは気にするな親父さんにはちゃんと言ってあるからな」
私はまた、ラズに抱き抱えられながら馬車まで連れられ彼女達と乗り合わせられる。
なんで私が公爵令嬢と、第二王子殿下とラズとはいえ勇者と同じ馬車に?私の仕事は?ラズのパーティーにいた他の人は?他の馬車もあるのなら私はなぜこっちにいるの?ご飯とかどうなってるの?そう思うのに、私は何も出来なかった。こんな状況で声を出すことが許されるのか分からなかったからだ。
ラズは私の腰を抱えながら堂々と柔らかな椅子に座っている。私は困惑して床を眺めるしかできない。
王子もペトラ様も喋らず、目を逸らしながら顔を顰めている。
私は何故こんなことになっているんだろう。
呆然とするしかない現実でぎゅうと体を縮こませた。
まだ日が上がったばかりで訓練後に朝食を配ることを考えると急がないと。女性用のお風呂場で体を手早く洗い、服を着替え、歯を磨き、髪を整えて、ドタバタと調理室へ向かう。
そして、その途中に現れたのは小さく華やかな女性。ふわりと柔らかそうなワンピースを揺らし、通る声で呼びかけてくる。
「失礼!貴方、ラズ様達はどこにいらっしゃるか知りませんか?」
目の前で青の美しい瞳と金の絹のように艶やかな髪が揺れている。綺麗な人だ。
私にはこの人に見覚えがない。こんな無骨なところにこんな綺麗な人そうそう居ないし、高貴な見た目からしてこの女性は貴族なはず。ラズの知り合い?でも勇者パーティの中で貴族といったら王子くらいだろう。王子様でなくラズを呼んでいるようだし……
「えっと……すみません。貴方様は、どのような方でいらっしゃいますか?そもそも彼らはお疲れのようでして……」
「あぁ。そうでした。急いでしまって……私、ハーゲン公爵が娘、ペトラ・ハーゲンと申します。先に送っていたラリルカが仕えている主ですの。もし不安でありましたら彼女に本当か確認されてもよろしいのですが」
「え?」
この方は領主様の娘?主が偉い人だとは聞いていたけどラリルカさんってそこから来た人だったの?
「私、勇者様御一行をお迎えするよう仰せつかっておりますの。悪い人ではございませんわ。いきなりの訪問、申し訳ありません」
「おー、やっと迎え来たか。」
大階段の上から降りてきたのは大きな荷物を持っているラズと王子様だ。その手には大きな荷物が1、2、3?なんでそんなに?
「ラ、ラズ……今、どうなってるの?」
「あー、そういうのは向こう着いてからでいいか?とりあえず、エリナも俺らに着いてこい。なんかそいつの侍女だとか言うやつがもう準備してるって」
「ええっ!?」
王子様がスタスタと歩き、ペトラ様の目の前に立ちどまる。彼女を見つめる視線はキツく、見ているだけでさえ恐怖を煽った。
「……ペトラ、なんでここにいるんだ。ここはお前の領内とはいえ、辺境だぞ。命の危機があったっておかしくない。ハーゲン公は何を考えている」
ペトラはビクリと肩を揺らしたかと思うと視線を逸らす。口元を覆うように動かされた扇子は小さく震えていた。
「あら、嫌ですわ。私、ラリルカを勇者の守姫の元に先に遣っていましたのよ。そのような危機排除しているに決まっているでしょう?ですので、ここに来るまでの御者以外、ひとりで参りましたの。護衛は御者がしてくれましたのでここには私と御者2人の3人で来たのですわ。少ない人数といえ自衛はしております。だというのに、貴方様はわざわざお父様の事など。今は私達だけで出来ることは私達だけで済ませればよろしいのよ。貴方様は婚約者に怪我なんてあったらと思われているのでしょうけど、貴方様自身にはなんの影響はございませんでしょう……ね、ラズ様もそう思われません?」
「はぁ。まぁ、どうでもいいな。長ぇ話なんて聞いていられねぇよ。とりあえず行くぞ。まぁ、エリナは気にするな親父さんにはちゃんと言ってあるからな」
私はまた、ラズに抱き抱えられながら馬車まで連れられ彼女達と乗り合わせられる。
なんで私が公爵令嬢と、第二王子殿下とラズとはいえ勇者と同じ馬車に?私の仕事は?ラズのパーティーにいた他の人は?他の馬車もあるのなら私はなぜこっちにいるの?ご飯とかどうなってるの?そう思うのに、私は何も出来なかった。こんな状況で声を出すことが許されるのか分からなかったからだ。
ラズは私の腰を抱えながら堂々と柔らかな椅子に座っている。私は困惑して床を眺めるしかできない。
王子もペトラ様も喋らず、目を逸らしながら顔を顰めている。
私は何故こんなことになっているんだろう。
呆然とするしかない現実でぎゅうと体を縮こませた。
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