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第二十五話
女の覚悟
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コーコの案内で紅虎に会わせたいという者の元へと向かう2人。
道を歩いていると、コーコの足が急に止まった。
「この辺かな?」
コーコはそう言うと
「ユ~リ~ちゃん!コーコだよ!」
と誰かの名前を呼んだ。
「ユリちゃん?ミッちゃん、ユリって?」
「そう、会わせたい子の名前よ。この辺に隠れてるはずなの。」
すると、コーコの足元の地面が、と言ってもタマモの胃の中なので肉質の地面が、一部だけベロンッとめくれ上がった。めくれ上がったその中には人ひとりが入れる様な穴が開いており、その穴から尖った耳が付いた頭がみえている。
そこからその尖った耳の主がひょっこりと這い出てきた。
「ユリちゃん久しぶり。生きてくれてて良かった。」
「コーコちゃんも生きてくれてて良かった。」
「ミッちゃん?彼女がユリちゃん?」
「そう、ユリちゃんの本当の名前はシラユリ。私はユリちゃんの方が呼びやすいからそう呼んでるの。」
「そうなんだぁ。っていうかユリちゃんって狐だよね?なんでまたタマモの胃の中に?」
「実は、わたくし、タマモの妻なのです。」
「ええ!?タマモの奥さん?!こいつめ!自分の奥さんまで喰いやがって!熱地獄でこらしめてやる‼︎」
「ベニちゃん!ちょっと待って‼︎これにはね深い事情があるの。ユリちゃんの話を聞いてあげて?」
コーコは熱くなった紅虎をなだめながら冷静に言った。
「ミッちゃんゴメン。あたしすぐ熱くなっちゃうタイプで。ユリちゃんもゴメンね!詳しくお話を聞かせてくれる?」
「はい。実は彼には色々と良くしてもらった恩がありまして、もちろん周りには悪名が広まっているのも耳にしておりましたし、その兆候も感じておりました。
でもわたくしだけには何故か優しくしてくれていたのです。
その理由は分かっています。
わたくしは生まれつき両眼が見えないのです。
だからわたくしは、彼の顔を見ることがありません。
周りからは彼は怖い顔だと言われるそうですが、わたしにはその怖い顔すら見ることができないのです。
だから私が彼を知る事ができるのは、声と温もりとその優しさだけでした。あ、ごめんなさい、長々と喋ってしまって。」
「ぐすん、ぐすん。ええ話やないの~‼︎なんやアイツええヤツやったんかいなぁ‼︎」
紅虎はシラユリの話に鼻水を垂らしながら感動していた。
「ベニちゃん大丈夫?」
コーコが紅虎の頭を撫でている。
「それでここにいるのはどういう理由で?」
「実はわたくしたちには、ひとり娘がいまして、でもまだ娘が乳児の頃に訳あってある信頼できるお寺の住職さんに娘を預けたのです。」
「なるほど、幼い乳飲み子を預ける必要があった、その訳を聞かせて下さい。」
「どうやら悪狐は代々、子供に女の子が生まれたら子供の父親の第2の胃の中で育てるというしきたりがあるそうで、娘が生まれた事を知った彼は、そのしきたりに従って娘を守るために喰べると言い出したのです。しかし私はどうしてもそのしきたりが受け入れられなくて、^娘と離れるはとても辛かったけれど、わたくしも子供の頃両眼が見えないわたくしは親に捨てられ、その時に拾ってくれて大人になるまで育ててくれたその住職さんなら娘を託せると思い、泣く泣く娘と別れ、その代わりにわたくしが娘の代わりに喰べられるという提案をしたら、彼はしぶしぶ受け入れてくれました。だから私が自ら選んでここにいるので、彼は一切悪くないのです。どうか彼をお許し下さい。」
「そういう事なの、ベニちゃん、あなたは陰陽神、悪は退治するのは当然だけど、この話を聞いてどう思うかな?実はわたしも、ユリちゃんと同じで自らの意思でここにいる。2人の共通点は大切な家族のためにここにいるの。それをタマモは引き受けてくれたの。彼は一切悪くない!だから彼を助けてあげて?」
「よーく分かったよ。うん。コイツは、タマモは悪くない。悪狐にそんなしきたりがあったなんて知らなかった。あたしもここに来た甲斐があったわ!物事の核心ってちゃんと中まで入ってみないと分からないものね。」
「そうだね。ベニちゃんに分かってもらえて良かった。」
「で、あたしが今ここにいる事の意味を考えた時に、2人はこれからどうしたい?」
「わたくしたちはここで命を全うする気でいましたが、外に出られるのであればまた外の空気を吸いたい!そして大きくなった娘に会いたいです!」
「わたしも外に出て、家族に会いたい!」
「よし!そうと決まれば外に出ますか!」
「「やったーー‼︎」」
コーコとシラユリはとても喜んでいる。
・・・その頃、生き地獄ではある問題が起こっていたのだった。3人はまだその事を知る由もなかった。
道を歩いていると、コーコの足が急に止まった。
「この辺かな?」
コーコはそう言うと
「ユ~リ~ちゃん!コーコだよ!」
と誰かの名前を呼んだ。
「ユリちゃん?ミッちゃん、ユリって?」
「そう、会わせたい子の名前よ。この辺に隠れてるはずなの。」
すると、コーコの足元の地面が、と言ってもタマモの胃の中なので肉質の地面が、一部だけベロンッとめくれ上がった。めくれ上がったその中には人ひとりが入れる様な穴が開いており、その穴から尖った耳が付いた頭がみえている。
そこからその尖った耳の主がひょっこりと這い出てきた。
「ユリちゃん久しぶり。生きてくれてて良かった。」
「コーコちゃんも生きてくれてて良かった。」
「ミッちゃん?彼女がユリちゃん?」
「そう、ユリちゃんの本当の名前はシラユリ。私はユリちゃんの方が呼びやすいからそう呼んでるの。」
「そうなんだぁ。っていうかユリちゃんって狐だよね?なんでまたタマモの胃の中に?」
「実は、わたくし、タマモの妻なのです。」
「ええ!?タマモの奥さん?!こいつめ!自分の奥さんまで喰いやがって!熱地獄でこらしめてやる‼︎」
「ベニちゃん!ちょっと待って‼︎これにはね深い事情があるの。ユリちゃんの話を聞いてあげて?」
コーコは熱くなった紅虎をなだめながら冷静に言った。
「ミッちゃんゴメン。あたしすぐ熱くなっちゃうタイプで。ユリちゃんもゴメンね!詳しくお話を聞かせてくれる?」
「はい。実は彼には色々と良くしてもらった恩がありまして、もちろん周りには悪名が広まっているのも耳にしておりましたし、その兆候も感じておりました。
でもわたくしだけには何故か優しくしてくれていたのです。
その理由は分かっています。
わたくしは生まれつき両眼が見えないのです。
だからわたくしは、彼の顔を見ることがありません。
周りからは彼は怖い顔だと言われるそうですが、わたしにはその怖い顔すら見ることができないのです。
だから私が彼を知る事ができるのは、声と温もりとその優しさだけでした。あ、ごめんなさい、長々と喋ってしまって。」
「ぐすん、ぐすん。ええ話やないの~‼︎なんやアイツええヤツやったんかいなぁ‼︎」
紅虎はシラユリの話に鼻水を垂らしながら感動していた。
「ベニちゃん大丈夫?」
コーコが紅虎の頭を撫でている。
「それでここにいるのはどういう理由で?」
「実はわたくしたちには、ひとり娘がいまして、でもまだ娘が乳児の頃に訳あってある信頼できるお寺の住職さんに娘を預けたのです。」
「なるほど、幼い乳飲み子を預ける必要があった、その訳を聞かせて下さい。」
「どうやら悪狐は代々、子供に女の子が生まれたら子供の父親の第2の胃の中で育てるというしきたりがあるそうで、娘が生まれた事を知った彼は、そのしきたりに従って娘を守るために喰べると言い出したのです。しかし私はどうしてもそのしきたりが受け入れられなくて、^娘と離れるはとても辛かったけれど、わたくしも子供の頃両眼が見えないわたくしは親に捨てられ、その時に拾ってくれて大人になるまで育ててくれたその住職さんなら娘を託せると思い、泣く泣く娘と別れ、その代わりにわたくしが娘の代わりに喰べられるという提案をしたら、彼はしぶしぶ受け入れてくれました。だから私が自ら選んでここにいるので、彼は一切悪くないのです。どうか彼をお許し下さい。」
「そういう事なの、ベニちゃん、あなたは陰陽神、悪は退治するのは当然だけど、この話を聞いてどう思うかな?実はわたしも、ユリちゃんと同じで自らの意思でここにいる。2人の共通点は大切な家族のためにここにいるの。それをタマモは引き受けてくれたの。彼は一切悪くない!だから彼を助けてあげて?」
「よーく分かったよ。うん。コイツは、タマモは悪くない。悪狐にそんなしきたりがあったなんて知らなかった。あたしもここに来た甲斐があったわ!物事の核心ってちゃんと中まで入ってみないと分からないものね。」
「そうだね。ベニちゃんに分かってもらえて良かった。」
「で、あたしが今ここにいる事の意味を考えた時に、2人はこれからどうしたい?」
「わたくしたちはここで命を全うする気でいましたが、外に出られるのであればまた外の空気を吸いたい!そして大きくなった娘に会いたいです!」
「わたしも外に出て、家族に会いたい!」
「よし!そうと決まれば外に出ますか!」
「「やったーー‼︎」」
コーコとシラユリはとても喜んでいる。
・・・その頃、生き地獄ではある問題が起こっていたのだった。3人はまだその事を知る由もなかった。
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