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第五話
霊峰石鎚
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場所は変わり。
ここは四国霊峰石鎚山の中腹辺り。
空と海と町々が見渡せるこの場所には修験者や登山者が休憩をする為に立ち寄る事のできる神社がある。そして丁度この場所に2人の修験者が辿り着こうとしていた。
「大丈夫か?クウコウよ。やっと7合目まで辿り着いたな。では少しここで小休止しようか。」
白装束に笠を目深に被った男は右手の長い杖の様な棒を左手に持ち替え右手で笠を取り外すと笠で自分の顔を団扇のようにあおいだ。【陰陽導師範・ドウゴ】。
「はい!大丈夫です父上。ここまで来れば頂上の天狗岳まであともう少しですね!」【陰陽導師見習い・クウコウ青年】2人は修業の一環で、ドウゴの考えの元に自らを過酷な状況に追い込むことで心身共に強く清く美しくなると言う『山岳登山の行』の途中だったのである。2人が小休止をしている時だった、ドウゴは何かを察知し素早く立ちあがった。クウコウも慌てて立ちあがった。「父上。どうかしたんですか?突然立ち上がって。」とクウコウが言うと。「感じないか?何かがこちらに向かっている。人ではないな。」ドウゴは右手でアゴをつまみ摩りながら言った。「いえ。僕は何も感じませんねぇ。人ではないと言う事は動物ですか?」「あぁ。この空気の流れ、そして匂いは動物で間違いないな。私のこの指の方角からこちらへ何かが向かって来ているんだ。」そう言われて、クウコウは目を細めてその方角を凝視してみるが何も見えないでいた。「おぉ~!まさかとは思ったが。なんだアイツからの伝書鷹だったかぁ。」ドウゴは1人で納得していたがそれを見たクウコウは首を傾げ、再び同じ空を見てみるがやはり何も見えなかった。
「父上。何故そんなに視力が良いのですか?」とクウコウがドウゴに聞くと。「あぁそう言えば。お前にはまだ言ってなかったかな?私の目は実はな特別な目でな。千里眼なんだよ 。」ドウゴが自分の目に触れながらそう言うとクウコウはまた首を傾げた。「父上。目?ですか?それは腹が痛くなった時に飲む薬じゃ?」と言うクウコウにドウゴはヒザがガクッとコケそうになった。「おいおいクウコウよ。それはセイロガンだ!私が言っているのはセ・ン・リ・ガ・ンだ!良いか?千里眼と言うのはなぁ。」「あっ!父上!あそこに何か見えます。鳥でしょうか?こちらに向かって来ています。」とクウコウは話の途中で食い気味に話を変えた。「あぁ。だから私が言っていたのはあの鳥のことだ。まったく!千里眼の説明の途中で話の腰を折りおって!」ドウゴはムスッとした表情をしている。「あっ!父上、失礼しました!それで。先ほどの話の続きをお願いします。」クウコウは天然なのかわざとなのか何食わぬ表情でさっきの話に戻そうとしたが。「もうエエわ!」と案の定ドウゴは呆れ果てクウコウにツッコミを入れた。「そんなことはどうでも良い!伝書鷹がもうそこまで来ている。止まり木の代わりにこの杖を使おう。」ドウゴは右手に持っていた杖を横に寝かすように持った。すると「ピャーッ!ピャーッ!」と言う鳴き声と共にカイガンがドウゴへと送った伝書鷹のモンチチがドウゴとクウコウの頭上までやって来た。「お前はカイガンの愛鷹だな。よ~し!良い子だ。ここに止まりなさい。」ドウゴは杖を高く上げた。そこへモンチチはバサッバサッと舞い降りて来て止まり木の代わりの杖へと止まった。ドウゴはモンチチの足の手紙にすぐに気付きそれを取り外した。「父上。それは一体?」ドウゴは筒状に丸められた手紙を広げ中身に目を通した。「ふむふむ。なるほど。」「父上!一体何と書いているんですか?」クウコウは覗き見ようとしている。「喜べクウコウ。」「えっ?何ですか?」「私の友人のカイガンから仕事の依頼だ。お前の日頃の修行の成果を試す時が来たぞ。」ドウゴはクウコウを見て笑顔で言った。「本当ですか!?よっし!やっと仕事ができるんですね!」「最近ではなかなか依頼が無かったからなぁ。では小休止は終わりにして下山するぞ。頂上の天狗岳は次に登るとしよう。」「はい!」クウコウはドウゴに笑顔で返事をした。「モンチチ。こんな遠くまでご苦労だったな。さぁ主人の元に帰りなさい。」ドウゴはモンチチを空へと解き放った。モンチチはバサッバサッと羽音を立てピャーッピャーッ!と鳴きながらドウゴに別れを告げるかの様に飛び去って行った。モンチチの姿が見えなくなるまで見送った後ドウゴは右手の杖を地面にダンッと突き立てた。「では、行くぞ!クウコウ!」「はい!父上!」「いざ!風早ノ里へ!」こうして、ドウゴとクウコウは、カイガンの依頼の元風早ノ里へと向かったのだった。
ここは四国霊峰石鎚山の中腹辺り。
空と海と町々が見渡せるこの場所には修験者や登山者が休憩をする為に立ち寄る事のできる神社がある。そして丁度この場所に2人の修験者が辿り着こうとしていた。
「大丈夫か?クウコウよ。やっと7合目まで辿り着いたな。では少しここで小休止しようか。」
白装束に笠を目深に被った男は右手の長い杖の様な棒を左手に持ち替え右手で笠を取り外すと笠で自分の顔を団扇のようにあおいだ。【陰陽導師範・ドウゴ】。
「はい!大丈夫です父上。ここまで来れば頂上の天狗岳まであともう少しですね!」【陰陽導師見習い・クウコウ青年】2人は修業の一環で、ドウゴの考えの元に自らを過酷な状況に追い込むことで心身共に強く清く美しくなると言う『山岳登山の行』の途中だったのである。2人が小休止をしている時だった、ドウゴは何かを察知し素早く立ちあがった。クウコウも慌てて立ちあがった。「父上。どうかしたんですか?突然立ち上がって。」とクウコウが言うと。「感じないか?何かがこちらに向かっている。人ではないな。」ドウゴは右手でアゴをつまみ摩りながら言った。「いえ。僕は何も感じませんねぇ。人ではないと言う事は動物ですか?」「あぁ。この空気の流れ、そして匂いは動物で間違いないな。私のこの指の方角からこちらへ何かが向かって来ているんだ。」そう言われて、クウコウは目を細めてその方角を凝視してみるが何も見えないでいた。「おぉ~!まさかとは思ったが。なんだアイツからの伝書鷹だったかぁ。」ドウゴは1人で納得していたがそれを見たクウコウは首を傾げ、再び同じ空を見てみるがやはり何も見えなかった。
「父上。何故そんなに視力が良いのですか?」とクウコウがドウゴに聞くと。「あぁそう言えば。お前にはまだ言ってなかったかな?私の目は実はな特別な目でな。千里眼なんだよ 。」ドウゴが自分の目に触れながらそう言うとクウコウはまた首を傾げた。「父上。目?ですか?それは腹が痛くなった時に飲む薬じゃ?」と言うクウコウにドウゴはヒザがガクッとコケそうになった。「おいおいクウコウよ。それはセイロガンだ!私が言っているのはセ・ン・リ・ガ・ンだ!良いか?千里眼と言うのはなぁ。」「あっ!父上!あそこに何か見えます。鳥でしょうか?こちらに向かって来ています。」とクウコウは話の途中で食い気味に話を変えた。「あぁ。だから私が言っていたのはあの鳥のことだ。まったく!千里眼の説明の途中で話の腰を折りおって!」ドウゴはムスッとした表情をしている。「あっ!父上、失礼しました!それで。先ほどの話の続きをお願いします。」クウコウは天然なのかわざとなのか何食わぬ表情でさっきの話に戻そうとしたが。「もうエエわ!」と案の定ドウゴは呆れ果てクウコウにツッコミを入れた。「そんなことはどうでも良い!伝書鷹がもうそこまで来ている。止まり木の代わりにこの杖を使おう。」ドウゴは右手に持っていた杖を横に寝かすように持った。すると「ピャーッ!ピャーッ!」と言う鳴き声と共にカイガンがドウゴへと送った伝書鷹のモンチチがドウゴとクウコウの頭上までやって来た。「お前はカイガンの愛鷹だな。よ~し!良い子だ。ここに止まりなさい。」ドウゴは杖を高く上げた。そこへモンチチはバサッバサッと舞い降りて来て止まり木の代わりの杖へと止まった。ドウゴはモンチチの足の手紙にすぐに気付きそれを取り外した。「父上。それは一体?」ドウゴは筒状に丸められた手紙を広げ中身に目を通した。「ふむふむ。なるほど。」「父上!一体何と書いているんですか?」クウコウは覗き見ようとしている。「喜べクウコウ。」「えっ?何ですか?」「私の友人のカイガンから仕事の依頼だ。お前の日頃の修行の成果を試す時が来たぞ。」ドウゴはクウコウを見て笑顔で言った。「本当ですか!?よっし!やっと仕事ができるんですね!」「最近ではなかなか依頼が無かったからなぁ。では小休止は終わりにして下山するぞ。頂上の天狗岳は次に登るとしよう。」「はい!」クウコウはドウゴに笑顔で返事をした。「モンチチ。こんな遠くまでご苦労だったな。さぁ主人の元に帰りなさい。」ドウゴはモンチチを空へと解き放った。モンチチはバサッバサッと羽音を立てピャーッピャーッ!と鳴きながらドウゴに別れを告げるかの様に飛び去って行った。モンチチの姿が見えなくなるまで見送った後ドウゴは右手の杖を地面にダンッと突き立てた。「では、行くぞ!クウコウ!」「はい!父上!」「いざ!風早ノ里へ!」こうして、ドウゴとクウコウは、カイガンの依頼の元風早ノ里へと向かったのだった。
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