続・陰陽神(いよかん)とポンの不思議な冒険

マシュー

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第六話

親子

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風早ノ里。ホウジョウ家屋敷。

バサッ!バサッ!ピャーッ!ピャーッ!と窓の外の遠くの方から鳥の鳴き声が聞こえてきた。社長室で書類確認の仕事の最中だったカイガンの耳にその声が聞こえると仕事の手を途中で止めた。「おっ!モンチチが帰って来たな!」カイガンはすぐに社長室を飛び出し外へと向かった。「おぉ!モンチチ~おかえり~。ご苦労だったな。」ドウゴは右腕に厚手の布を巻きつけた状態で肘を曲げている。そこへモンチチは舞い降りて来て羽根を羽ばたかせながら止まった。「おっ。無事手紙は受け取った様だな。モンチチさすがだな。良くやったぞ。」カイガンはモンチチの足に手紙が付いていないのを見て手紙が無事に届けられたことを確認したあとモンチチの頭を優しく二本指で掻くように撫でながら褒めた。そんなモンチチは頭を撫でられて気持ちいのか目を閉じ嬉しそうに身を委ねている。そこへカイガンを呼ぶ声が聞こえてきた。「ご主人様~!やはりこちらでしたか~。急いで屋敷から出てらしたのでもしやと思いましたが。モンチっちが戻って来たのですね~。」「あぁ。カシマさん。そうなんだよ。手紙も無事に受け取ったようだ。」「そうですかぁ。それは良かったです。これで後は先方が来られるのを待つばかりですね。」「あぁ。そうだね。でも多分もうすぐ来るんじゃないかな。」「えっ?もうすぐって。どう言う事ですか?先方は確か【にきたつノ里】に住まわれてると聞いてますが?あそこからですとこちらまで歩いて半日はかかるかと。」「あぁ。普通はそうだね。だけどわたしの友人ドウゴの息子達はとても優秀でね。長男のクウコウくんは父の後を継ぎ陰陽導師に。そして次男のソウコウくんは陰陽生物化学の研究者として、世の中のために日々頑張ってくれているんだよ。本当あの親子には感心するよ。」カイガンはどこか誇らしげな表情でカシマに話した。「ほっほ~~!それは存じ上げませんでした!」カシマは感心した表情をしながら言った。「そしてある日彼らはある発見をしたのです。」「えっ!?発見ですか??」「ああ。ある日の事、町で悪さを働いていた悪狐をドウゴとクウコウが捕らえた後、研究検査の為に解剖をしていた次男のソウコウは、悪狐の腹を切り開いた時に内臓の“ある異常”に気付いたそうです。それは・・・。」


【にきたつノ里・陰陽生物化学研究所】そこは小さな山の麓にある洞窟の中を進んで行くと研究所はその奥深くにひっそりとある。

「ソウコウ!ソウコウ!今戻ったぞ~!」「今日のは、なかなかの大物だったぞ!」と呼ぶ声は2つ。ドウゴとクウコウだった。2人は狐狩りの帰りのようだ。

すると研究所の扉がゆっくりと開いた。「お帰りなさい。父上、兄さん。お務めご苦労様でした。」【陰陽生物化学者・ソウコウ】

「では。これを宜しく頼んだぞ。」とクウコウがソウコウに手渡したのは【封印ノ書】と書かれた書物だった。その封印ノ書は簡単に開かないように紐で結ばれている。
「はい。兄さん。お預かりしますね。では早速、研究室で診てみましょう。」書物を受け取ったソウコウはそう言って奥の研究室と書かれた部屋の中に入って行った。

「ふぅ。少し休んでから次の依頼に向かおうか。クウコウ。」ドウゴは丁度そこにあったいい具合の岩を椅子代わりにしながら言った。
「はい。分かりました!」クウコウはニコッと口角を上げて返事をした。「それよりさっきの悪狐の事だが。ヤツを倒した後に喰われた犠牲者達を吐き出したかと思えばその犠牲者達が皆無事に生きていたのには驚いたなぁ!」「そうですよねぇ!普通は喰われたら死んでしまうのに。犠牲者の皆さんが無事だったから良かったものの。悪狐の身体の構造は一体どうなってるんでしょうねぇ。」「あぁ。だがまぁそれも含めて我が優秀なソウコウくんが謎を解明してくれるだろう。」「ええ。そうですね。後はソウコウに任せましょう。」


【研究室内】
研究室内は様々な医療機器やホルマリン漬けになったトカゲやカエルが入ったビーカーや顕微鏡などが並べられている。この研究室では、主に悪狐の生態調査や研究の為に解剖や実験がなされていてその研究が陰陽導術の開発に繋がっている。

ソウコウは、クウコウから受け取った封印ノ書を左手に持ち、右手で蝶々結びで結ばれた紐を解いた。そして目印で角の折られたページを開くと狐の絵が描かれている。それを確認したソウコウはそっと目を閉じた。
そして少し間を置くとパッと目を開けたその瞬間。「阿・解印(あ・げいん)!」と力強く術を叫んだ。すると開けた封印ノ書が突然光始めた。さらに続けて「解放!」と叫ぶとソウコウは両手で開けたページを診察台の方へと向けた。すると診察台の上に手足がはみ出る程の巨大な悪狐が横たわった姿で現れた「なんだ!?これは!これまでにもこんなに巨大な悪狐は見た事が無いな!兄さんが言ってた通りだ。ではこれから診察を始めます。合掌。」ソウコウは亡骸に手を合わせた。ソウコウのモットーとしているのは、『悪狐と言えども亡骸に対して敬い尊う心を重んじる』としているため毎回診察の前に必ず合掌をしてるのだ。ソウコウは悪狐の規格外の大きさに驚きながらも冷静な表情で診察台の周りを歩きながら悪狐の全身をくまなく診ている。「ふんふん。毛並みや骨格には異常は無さそうだ。眼球も異常は見当たらないな。では次は開腹してみましょうかね。」そう言ってメスを手に取り悪狐の腹に刃を入れていった。やっとの思いで開腹し終わると腹を広げて内臓を診ている時だった。
「えっ!?ちょっと待てよ。おかしいぞ!なんで胃が2つもあるんだ?」ソウコウは悪狐の胃が2つもある事に動揺とは反対に期待感が湧き上がっていた。早速、2つの胃を摘出した。「こっちの胃は通常の食べた物を消化する胃だな。なら、もう1つの胃は何なんだ?」巨大な悪狐の胃もまた規格外の大きさである。そのためソウコウが思い付いたのが『自分自身が実際に胃の中に入ってみよう。』と言う事だった。ソウコウは『思い立ったら即実行!』と言うのもモットーに掲げているため、もう胃の中に入りたくて仕方が無くなっていた。ソウコウは胃の入り口をググッと広げ頭を突っ込んだ。「では。お邪魔しますよ~。」と言いながら入り口をさらに広げた。
そして自らの腕、身体、足の順に胃の中に入って行った。
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