魔手 ~Magic Hands〜

マシュー

文字の大きさ
17 / 19
第16話

魔天界の国王

しおりを挟む
みんなで食事をしていたその時だった、コンコンコンとドアをノックする音が聞こえた。

「失礼するよ~。」
男性の低い声がするとドアはゆっくり開いた。

そこに現れたのは、マックと同じくらいの大きさの王冠をかぶった可愛らしいクマだった。

「あれ?マッくんにそっくりなクマちゃんじゃん!もしかしてマッくんの兄弟?」

「本当!そっくりなクマさん!可愛いわねぇ!」

「違うよ!」
マックはなぜか下を向いている。


「王様!どうかなされましたか?」
ピーシュは慌てた様子でドアまで出迎えた。

「えっ?ピーちゃん今、何て言った?」

「王様と申しました。」

「えーーー???王様って!マッくんのお父さん??」
勝利と香音はとても驚いた。

「そう、僕のお父様だよ。」
マックは相変わらず下を向いている。
それに気付いた勝利はマックの肩に手を回した。

「さっきからどーしたんだよ。元気無いじゃん。もしかしてお父さんに説教くらったの、まだ尾をひいてんの?」

「ちがうよ!ほっといて。」

「ほっとけるわけないだろ?友達が落ち込んでんのにさぁ。」

「そうよ、マックくん。どうして下を向いてるの?でもまぁ言い辛いのなら無理にとは言わないけど。」

「言いたくない。」

「分かった、じゃあ聞かないわ。でも、なんで言いたくないのかだけでも教えてくれないかな?」

「・・・言ったら、きっと2人に嫌われちゃうから。」

「嫌われるって?一体どういう事だよ?!めっちゃ気になるじゃんか‼︎もう俺我慢できねぇ‼︎マッくんが言えないならお父さんから聞く‼︎」

「ちょっと先輩‼︎マックくんは嫌われるから聞かれたくないって言ったんですよ?」

「香音ちゃん大丈夫!オレ、どんなことがあってもマッくんの事、ぜったいに嫌いにならないから‼︎」
勝利は親指を立ててにかっと笑顔を見せた。

「すっごい自信‼︎」
香音は勝利のあまりの自信に満ち溢れた笑顔を見てこれ以上言うのを諦めた。

勝利はマックの父親である王様に歩み寄った。



勝利が王様の前に立つと、小さな王様の目線に合わせるため低く屈むとその場で正座をした。


「はじめまして!オレはマックくんの友達の勝利と言います!」


「やぁ、はじめまして。ようこそ我が城へ。マックの父です。ピーシュからあらかた話は聞いていますよ。マックが世話になったようで、誠にありがとうございました。」


「いえいえ、ご丁寧にどうも。こちらこそお城にまでお邪魔させてもらっちゃいまして、ありがとうございます。」


「遠慮なくゆっくりとお過ごし下さいね。
あぁ、そう言えばあなたが『魔手』を装着されたカツどんさんですね。」


「いや、カツトシです。たしかにマッくんはカツ丼にハマっちゃいましたけども。」


「これは失礼、息子がカツ丼が美味しかったと言っていたものですから、私も一度食べてみたいものですね。」


「お父さんもカツ丼食べますか?良かったらあっちで一緒に食べながらお話しさせて頂いて良いですか?色々と聞きたい事あるんで。」


「それはありがたい。もちろんですよ。ご一緒させて下さい。」


王様と勝利はすっかり意気投合し、香音とマックの座るテーブルへと向かった。


「これはたまげました!あの2人めちゃくちゃ気が合っている。」
ピーシュは2人の会話を聞いて驚いた。


「ピーちゃんも一緒にカツ丼食おうぜ!」


「いえ、私は菜食主義ですので。」


「先輩!ピーシュさんは野菜サラダの方が良いんじゃないですか?」


「あぁ、そっかぁ。じゃぁピーちゃんには野菜サラダを出してあげるねー。」
勝利はテーブルに特盛りの野菜サラダを両手から出した。

「野菜サラダ?!」
ピーシュはゴクリと生唾を飲んだ。

「そこまでおっしゃるならお言葉に甘えてご一緒させて頂きま~す。」
ピーシュは嬉しそうにテーブルへとスキップしながら向かった。

こうして異色のメンバーによって食事会が催された。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...