【神託】で選ばれた<真実の愛>の相手がくそなんですけど

はなまる

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83ドラゴンの王ヴァニタス

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 ドラゴンの住み家は北の魔の森をずっと北に行った切り立った山の渓谷にある。

 それにここには国の名前すらない。

 城は断崖絶壁のような崖を削り取ったような岸壁に沿って作られており、岩と大理石で出来た頑丈な建物だ。

 城と言っても大きな身体のドラゴンの出入りがあるため城の周りを岩や石で囲い中央には広い中庭があり相当のスペースがある。

 その奥に王の広間があり寝室以外はほとんどの部屋に扉がない。



 そこに君臨するドラゴンの王とは俺の事だ。名はヴァニタス。

 俺の身体はビーサンなど取るに足らないほど巨体で身体は銀色と紫色の鱗で覆われている。

 頭の上には尖った角がいくつも生えていて大きな口からは鋭い牙がむき出している。

 翼は折りたたむことが出来て二足の脚で立って腕は人間の手のように器用に食事もできる人の姿をする事も出来る。

 人間の姿になった時には服は着てはいないが腰には布を巻き付け背中にはマントを羽織っている。



 今日も俺は王の玉座にどっしりと座っていた。 

 もちろん人型になっている。

 「ヴァニタス王。ビーサンがもうすぐ帰っています」

 側近であろう黒色のドラゴンがそう伝える。

 「ああ、わかった。セリとか言う聖女。どうしてやろうか」

 俺は苛ついた様子でギシリと歯ぎしりをした。



 ドラゴンは長生きだが子はあまり生まれない。そのため数はそう多くはない。

 そんな中、プロシスタン国にはドラゴンを自由に使わせて来てやった。それにはある理由があったからだ。

 俺は王としてそれなりにプロシスタン国には礼を尽くしてきたつもりだった。

 だが、今回いきなり魔呪獣が獣人に戻って行った事に驚いている。

 ドラゴンにとって魔呪獣はとても重要な存在だと言うのに‥



 ドラゴンには元々身体に寄生する虫がいる。長い間身体の中に留まりじわじわと命を縮めていく。

 脳にまで達した寄生虫はやがてドラゴンを狂わせる、暴れ回り手が付けられなくなりどうしようもなくなって殺すしかなくなるのだ。

 だが、ずっと何が原因かわからなかった。

 でも、ある時腹を切られたドラゴンのお腹に無数の寄生虫がいることが分かりそれが恐ろしいリガキスという寄生虫だとわかる。

 ひょんなことから魔呪獣の血液がそのリガキスに効果がある事が分かり、それからは病気の完治は難しいものの進行を食い止める事が出来るようになった。

 今までは殺すしかなかったドラゴンを助ける事が出来るようになり完治までも遠くない話だろうと思っていた。



 だが、その事は絶対に秘密でプロシスタン国には話してはいない。

 ドラゴンがプロシスタン国に協力をするのはあくまで、今までの魔の森が鬱蒼としたジャングルだったのが、魔呪い獣が住み着いたおかげで結果的に魔の森の再生につながったと言う事に対しての友好の証として協力を申し出ただけのことであった。

 いわゆるこれからも魔の森に魔呪獣を住まわせろと言う事だったのだが。



 それがどうした事かいきなり魔の森に棲んでいた魔呪獣が獣人に戻って行ったと報告を受けた。

 魔の森という名前は獣人が勝手に着けた名称で魔物もいなければ恐い森でもない。

 ただ、鬱蒼とした森というだけの事だったのだが。



 それが一体どういうことなのかと調べたところ、セリとカイヤートというばかがふたつの国の呪いと浄化したと言うではないか。

 おまけにそれを手助けしたのがうちの若いドラゴンだと言うから、全く!!

 まあ、まさか魔呪獣の呪いが解けて獣人に戻ってしまうなどと考えられるはずもなかったのだろうが。

 だとしてもだ。これは由々しき事態に他ならない。

 こんな事が分かったのも定期的にあちこちの空を巡回して回るドラゴン監視部隊がいるからだ。

 それに加えてまた別に厄介なことが起きたが今はリガキスの事が最優先だ。



 俺は、もう二度とドラゴンたちをあんな辛い病で苦しませたくはないリガキスが再発すれば大変な事になる。

 そう、今一番大事なのは獣人たちを魔呪獣に、元に戻す事だ。

 頼みはあの聖女に浄化を無効果させる事。そうすればまた呪気がプロシスタン国を覆いつくす。

 そうすれば魔呪獣は今まで通り魔の森に住まう事になる。そしてドラゴンは時折魔呪獣魔の血液を貰えばいいと言う事だ。

 何の問題があるんだ?

 プロシスタン国はドラゴンを自由に使い、俺達は少しばかり魔呪獣の血液を貰う。

 そこにビーサンが到着した。

 あいつ~やっと帰って来たか!!!




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