こんな仕打ち許せるわけありません。死に戻り令嬢は婚約破棄を所望する

はなまる

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37いきなりモテ期?

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  ムムム!私が気を失っているのをいいことに何というでたらめを誤解を与えたまま行かせるわけにはいかない。

 「ラセッタ辺境伯待って下さい。違うんです。私は彼の元婚約者になる予定なんです。この仕事が終われば名実ともに私たちは赤の他人になるんです。決してお間違えの無いようよろしくお願いします」


 話を言い終わるうちに彼の顔が満面の笑みに変わって行く。

 「それは本当か?婚約はなくなると?」

 「はい、そうです」

 「では、ではリンローズ嬢、俺が貴方を口説いてもいいと言う事なのか?」

 「えっ?それはどういう‥?」

 「実は俺は意識が戻って君を見た瞬間。惚れたんだ。こんな気持ちは生まれて初めてで。今まで女は媚ばかり売って来る嫌なものだと思っていたから…でも、君は違う。心から俺を助けようと私利私欲など関係なく‥俺はそんな君に心を打たれたんだ」

 「それは勘違いというものです。私は聖女です。どなたに対しても同じような治癒を行います。あの時ラセッタ辺境伯はかなり弱っていらっしゃったはず。だからそんな勘違いを「勘違いじゃない。あの場限りなら勘違いかもしれん。でも、あれからこの気持ちは膨れ上がるばかりで‥騎士に聞いたらそれは恋というものだと教えてくれたんだ!」いえ、それは勘違いですから!」


 何度も説明するが埒は飽かず。私はほとほと困る。

 確かに王家の血を引く彼は金色の髪に碧色の瞳。まさに王族カラーで野性的な魅力あふれる顔を持ってはいるが。

 そう言えば私、最近やたらともてる気が。モテ期というやつか?前世でお目にかかりたかったなぁ。

 でも、今世ではいいかも知れない。シュナウト殿下の婚約してその後の断罪があまりにも衝撃的すぎてとても王族関係者とはそんな気持ちにはなれそうにない気がした。


 「いいから休ませていただけませんか?私すご~く疲れてるので、それと何か食べるものをお願いします。但し、使用人の方に届けてもらって下さいね」

 「わかった。疲れている所を悪かった。ゆっくり休んでくれ。リンローズ君を諦めるつもりはない」

 ラセッタ辺境伯は更に元気になった気がした。


 その時脳内に声が響いた。

 【俺は本気でリンローズが好きだ。こんな気持ちは初めてだ。クッソ。俺は一体どうしたんだ?】

 な、何?今の声。でも彼はもう部屋から出て行った後だ。もう、きっと疲れてるんだ。いいからもう少し休んだ方がいい。

 私はそれからうとうとしたいたらしい。

 「リンローズ寝たのか?目が覚めたと聞いたが」

 「‥うん?誰?‥‥」

 いきなり身体を揺すられて目を開ける。

 「うわぁ!いきなり驚くじゃない。離れてよ!」

 シュナウト殿下が私の目の前にいた。そりゃ驚く。

 「なんだよ。そんなに言わなくても。せっかく心配して来てやったんだぞ!」

 彼は一歩後ろに下がって怒る。

 「あ、あなたに心配してもらいたくないわ!もう大丈夫だから」

 「ああ、そうだな。それだけ元気があればもう心配ないな。ほら、これおいておくからな。腹減っただろ?」

 言われた方を見ればトレイにスープや柔らかそうなパン。それにチキンやソーセージなどが乗った皿が見えた。

 「な、何よ。自分だけ平気だなんて。あなたどれだけ魔力持ってるのよ。ほんと、ばか魔力なんだから!」

 「悪かったな。ばかで。お前今日はほんとに頑張っただろ。いいから無理するな。俺達もここに宿泊するから心配せずにゆっくりやすめ。いいな」

 それだけ言うとシュナウトは出て行こうとした。


 突然ラセッタ辺境伯がふたりが婚約していると言っていたことが脳内に浮かんだ。

 がばっと起き上がって彼を指さす。

 「あぁぁぁ!あなた私と婚約してるって言ったでしょ!私達はもうすぐ婚約を解消するのよ。どうしてそんな余計な事を言ったのよ。おかげで変な誤解されたじゃない!」

 「なんでだよ?実際俺達は婚約してるじゃないか。本当の事を言って何が悪いんだ?」

 出て行きかけていた彼がくるりと向きを変えてこちらに向かってくる。

 私は彼の背中に怒りの波動を感じて思わず身体を縮こませる。

 「何よ。だって‥」

 「だってじゃない.。そっちが喧嘩吹っ掛けたんだろう?」

 シュナウト殿下は言いながら怒りを鎮めた。

 「いいかリンローズ。アシュリーの事は悪かったって言ってるだろう。お前が怒っているのは当然だと思う。俺だって‥でも、これからはちゃんとやるつもりなんだ。だから‥いいから少しでも食べろ」

 そう言うと私の目尻にそっと指を当てた。

 「ったく。心配したんだからな。もう無理はするな。変わりは俺がやる。だから」

 私はなぜか泣いていたらしい。

 涙を拭われて優しい言葉を掛けられて。

 つい。

 うるうるした紫水晶のような(きっと)瞳で彼を見上げたら。

 「‥くぅぅぅぅ‥‥」

 シュナウト殿下は唇を噛みしめてうめいた。

 どうして苦しそうな顔してるの?もしかしてまだ私の事を?

 勘違いしそうになりそうな刹那。

 くるりと彼は向きを変えるとそのまま出て行った。


 【チッ!リンローズの奴。こんなに心配してるのに、まだ気持ち変わらないのかよ。でもこの感じだと後一押しかな】

 また脳内で声がした。

 もう、一体何なのよ~気持ち悪い。でも、今のってシュナウトの本心?一応心配してくれてるって事。後一押しって‥私はそんなに軽くはありませんけど!

 ああ、そうかやっぱり無理してるんだ。わかってる。婚約は解消しないって言ってるけど本心は違うって。

 安心して。私だって断罪はいやだから。あなたとの婚約は解消するから。

 私は心新たにそう誓った。

 それにしても私の頭おかしくなった?

 
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