30 / 44
30ミーシャが来る。メリンダ妊娠報告(ネイト)
しおりを挟むミーシャから手紙が届いたのはそれから1か月後だった。
~ガストン侯爵様
突然こんなお手紙を出す事をお許しください。
契約がなくなり私がこんな手紙を出す事もおかしなお話だとお思いでしょう。ですがどうしてもご相談しなくてはならないことが出来ました。
どうか一度そちらに伺うことをお許しください。
お返事を待ってと言うようなお話ではないのです。
私はこの手紙送った翌日にはこちらを立とうと思います。
皆様には大変ご迷惑をおかけするかもしれなせん。どうかお許しください。
それではよろしくお願いします。
ミーシャ・ベルランド~
俺はミーシャとの契約を勝手に終わらせていた。父はその事を知らない。彼女の所に行ってもうしばらく実家にいるとみんなには伝えていた。
「ネイト一体どういうことだ?ミーシャは契約がなくなったと書いて来たぞ」
「ああ、1か月ほど前にミーシャのところに行ったと言っただろう。父さん実はあの時もう妾はいらないと断わったんだ。勝手なことをして済まない」
「それでいいんだな?」
父は怒らなかった。
それに父に内緒にしたせいでミーシャの荷物もまだ片付けていなかった。
来るならちょうどいい。荷物を持って帰らせよう。
これでほんとにお別れだ。
俺は何だか寂しい気持ちになるが、何でもないふうを装って言葉を吐きだした。
「ああ、だからミーシャがここに来る事はないはずなんだが…」
「だが、この様子だと何か困ったことが起きた様子だが?」
「子爵が病気にでもなったとか?」
「ああ、お前が妾の契約を切ったならそれくらいしかないな…まあ、出来る事はしてやるつもりだが…」
「ああ、頼むよ父さん。きっと家しか頼るところもないんだろう」
父がミーシャが来ることをみんなに伝えた。
俺は父と話をして少し安心した。
その夜の夕食時だった。
いつもは会話ひとつないメリンダが声を上げた。
「お父様。お母様。私やっとうれしいお知らせをお伝え出来ますわ」
氷のような冷たい雰囲気を醸し出しているメリンダが微笑みながら話す。
「まあ、一体何かしら?」当然母が聞いた。
「はい、お母様。私、どうも子が出来たらしいんです。いえ、まだお医者様に見て頂いたわけではないんです。でも、悪阻だと思うんです。それにきっちり来るはずの月のものもないですし…」
父が上ずった声を上げた。
「ね、ネイト?お前覚えはあるのか?」
「はっ?…」俺の脳裏に半月ほど前の嫌な記憶がちらついた。
「そ、そう言えば…あったかも」
「そうか。いつの間にお前たち…メリンダ明日にでも医者に行って来なさい。それから十分気を付けるんだぞ」父の顔が笑顔に変わった。
「ええ、メリンダ、気分は?まあ、あなたほとんど食べてないじゃない。料理長何か食べれそうなものを作ってやって!」母も急いで立ち上がり調理場に走った。
「はい、お父様。お母様。大丈夫ですから」
メリンダが笑った。
俺は地獄の光景を見た気がした。
(ミーシャがもうすぐここに来る。どうするんだ?って言うか何を慌てているんだ俺は…メリンダは妻だ。ミーシャとは子を成せないと決心した結果だろう?)
なのにこの焦燥感はなんだろう。
俺は狼狽えた。
父は嬉しそうに言った。
「まあ、とにかく明日メリンダの妊娠がはっきりするまでは待とう。すべてはそれからだ」
「ああ、でも、ほとんど決まりなんだろうメリンダ?」
「ええ、私絶対に自信があるの」
「そうか。俺は仕事があるからお先に…メリンダ子が出来て良かった。気を付けてな」
「はい、ネイトありがとう」
メリンダは勝ち誇ったように笑った。
そして翌日妊娠がはっきりした。
うそのように喜ぶメリンダに俺は違和感を覚えた。
そんなに子供好きだったか?
あんなに子供を作る行為も、子供も嫌だって言ってたのに。
俺は心から喜べない気持ちに悪者にでもなった気がしていた。
だって、俺の子だろう?
一応。
湧き上がる嫌悪感。
俺は生れてくる子供を可愛がれるのだろうか?
まあ、そんな事を今考えても…
明日はミーシャに会える。
今はそのことだけを考えていたかった。
ミーシャ。俺の唯一の女神。
343
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】初夜の晩からすれ違う夫婦は、ある雨の晩に心を交わす
春風由実
恋愛
公爵令嬢のリーナは、半年前に侯爵であるアーネストの元に嫁いできた。
所謂、政略結婚で、結婚式の後の義務的な初夜を終えてからは、二人は同じ邸内にありながらも顔も合わせない日々を過ごしていたのだが──
ある雨の晩に、それが一変する。
※六話で完結します。一万字に足りない短いお話。ざまぁとかありません。ただただ愛し合う夫婦の話となります。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載中です。
【完結】白い結婚成立まであと1カ月……なのに、急に家に帰ってきた旦那様の溺愛が止まりません!?
氷雨そら
恋愛
3年間放置された妻、カティリアは白い結婚を宣言し、この結婚を無効にしようと決意していた。
しかし白い結婚が認められる3年を目前にして戦地から帰ってきた夫は彼女を溺愛しはじめて……。
夫は妻が大好き。勘違いすれ違いからの溺愛物語。
小説家なろうにも投稿中
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。
【完結】あなたに抱きしめられたくてー。
彩華(あやはな)
恋愛
細い指が私の首を絞めた。泣く母の顔に、私は自分が生まれてきたことを後悔したー。
そして、母の言われるままに言われ孤児院にお世話になることになる。
やがて学園にいくことになるが、王子殿下にからまれるようになり・・・。
大きな秘密を抱えた私は、彼から逃げるのだった。
同時に母の事実も知ることになってゆく・・・。
*ヤバめの男あり。ヒーローの出現は遅め。
もやもや(いつもながら・・・)、ポロポロありになると思います。初めから重めです。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる