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「じゃあシャロン。明日迎えに来るから、いい子にしてろよ!」ジェリーは何度もシャロンにキスをして離れた。
シャロンはジェリーが振り返った時、突然自分を襲った犯人がまだ捕まっていないことを思い出した。
「ジェリーあの犯人まだ捕まってないんでしょう?」
彼はドアのノブをつかんだまま言った。
「ああ、そうみたいだけど、心配ない。僕のマンションはセキュリティが行き届いているから、でもあの時は君について入ったんだったよな?」
「ええ、そうよ。だからあなたも気を付けて。もしジュリーに何かあったら…」
「ああ、気を付けるよ。シャロンありがとう気遣ってくれて…じゃあな」ジェリーはそんなシャロンに愛しさが込み上げてきた。たまらなくなってもう一度引き返して来るとキスをした。
「ああ…早く明日になってほしいわ…もう早く帰ってジェリーこのままじゃ…」体がうずいてくる。ああ…彼が欲しくてたまらない。眠っていた感覚が呼び覚まされシャロンのショーツは濡れていた。
「ああ、僕もだよシャロン…僕も気が狂いそうだ君が欲しくて、でも明日まで我慢するよ…じゃあ」ジェリーは、苦しそうに息を吐きだすと、無理やりシャロンから体を離した。
ふたりの間には、たった今、稲妻が落ちて来たかのような、激しい電流がビリビリと流れているようだ。
ジェリーは稲妻が落ちて来ないうちに部屋を出て行った。
シャロンはあまりに幸せでしばらくこれが現実なのか夢なのか見分けがつかなかった。
頭の中でジェリーの言ったことを何度も思い出す。
彼が浮気していなかったなんて…よく考えればそうかも知れない。それに彼に確かめなかったわたしも悪かったわ。
この1週間の彼を見ていたら、とても彼の言っていることが嘘とは思えないもの。
シャロンは、こみ上げてくるうれしさで胸の中で花火が上がっていた。彼とまた一緒に暮らせるなんて…でも今度は失敗しない。不安なことは何でも彼に打ち明けよう。
明日からの事を考えると妄想がふくらみ頭が爆発しそうになる。
明日から新しい出発が待っているわ。きっとわたしたちはうまくいく。当り前じゃない。わたしたちは愛し合っているんだから…
ベッドに寝転がっても思わず含み笑いが漏れた。
その時ドアがノックされた。
「はい、どうぞ」シャロンはこんな時間に誰と思いながら返事をした。
「やあ、シャロン。傷はどうなんだ?」
「レックス。もう驚くじゃない。あなたもう具合はいいの?」わたしは彼と抱擁を交わした。
レックス・コッパーはウォルトブックスの2歳年上の先輩で、わたしがインターンとして入った時の担当者だった。
そもそもあのバーに連れて行ってくれたのも彼なのだ。その後もずっと彼はわたしの力になってくれている。レックスは今は企画部に所属していてわたしが編集部アシスタントになってからは、あまり顔を合わせることがなくなっていたが、連絡は常に取り合っていたし、たまに食事に誘われることもあった。
彼は優しくて頼もしくて、何事にも慎重で何より礼儀正しい人だった。シャロンはレックスを全面的に信頼していた。
彼は2週間ほど前に、虫垂炎で入院してわたしは術後にお見舞いに行って、それからあとは顔を出していなかった。
ジェリーの事でわたしはすっかり彼の事を忘れていた。
「ごめんなさい。あれから顔も出さなくて、体調はどうなんですか?」
「ああ、もうすっかり良くなったよ。君こそ大変だったらしいじゃないか。ジェームスから聞いて驚いたよ。それでいつ退院なんだ?」ああ聞いたよ。
レックスは、シャロンの見舞いに来るのを迷っていた。だが先ほどジェリーがシャロンの部屋から出てくるところを見ると、やはり来てよかったと思った。
それにしてもジェームスの奴…よりによって彼女をバクスターの担当者にしていたなんて…
彼は数日前に復帰してそのことを聞いた。そして彼女が暴漢に襲われたことも…もしジェリーがシャロンと?
急にそんなことを思い出すとますます気持ちが高ぶった。
レックスは、常に女性に振り向かれる。だが、シャロンだけは別だった。彼女は僕に一切興味を示さない。
いつもの彼なら、自分から女性を誘ったりする必要がないのだ。だから自分に振り向かないシャロンに興味が湧いて仕方がなかった。
それにレックスはジェリーがろくでもない奴だと知っていた。
だからまさかあのバーにあいつがいたことに驚いた。そしてシャロンがあいつの毒牙にかかってしまった事にも…でも僕は彼女がジュリーと別れたと知って安心していた。僕がシャロンにジェリーの本性を何度も話をしたからだろう。さすがにシャロンは賢明な女性だと思った。
だが…まさかシャロンはまたジェリーと?
やめてくれ!シャロンをものにするのは僕だ。ジェリーになんか手出しされてたまるもんか。ふたりが幸せになるなんて許せない!
いつになくはやる気持ちを無理に抑え込む。
「ありがとう、明日には帰れるのよ」
「良かった。もちろん君の家に帰るんだろう大丈夫か。ちょっと不便じゃないのか?」レックスの穏やかな茶色い瞳が心配そうに揺れている。そうだ。僕がしばらくシャロンのところに通うことにすればいいじゃないか。
「ええ、でも実は……」わたしは照れ臭かった。別れた夫とよりを戻すなんて…でもレックスならきっとわかってくれる。
さあ勇気を出して彼には本当のことを何でも話せるもの。
「実はねレックス。もと夫のジェリーが今回すごく良くしてくれて、レックスも知ってるわよね。わたしもう一度ジェリーを信じることにしたの。それで、わたしたち元に戻る事にしたのよ。だから明日は早速彼のところに行くつもりなの。だから心配ないわ」わたしはちょっと頬が熱くなった。でも悪い事ではないのだからと…
彼にはジェリーの事で色々愚痴を聞いてもらっていたし、別れた時自分を責めているわたしを元気づけてくれた。おかげでわたしは自分を追い込まずに済んだし、もしレックスがいなかったらわたしはきっとおかしくなっていたわ。それにレックスはジェリーと別れた後も、随分力になってくれたんだもの。きっとレックスも喜ぶはず…だってレックスはわたしの気持ちをわかってるはずだもの…
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