大嫌いなんて言ってごめんと今さら言われても

はなまる

文字の大きさ
17 / 29

17どうして?(フェリオ)

しおりを挟む

 
 学園長室からでた俺フェリオは、クソみたいな気分になった。

 侯爵家の俺がどうして?俺が何をした?俺はどうして謹慎処分に?

 ???が連続で脳内に炸裂して、どうしようもないほど怒りが沸き上がった。

 誰のせいなんだ?

 シルベスタ。あいつだ。あいつがファンクラブに…いや、あいつが学園に入って来てからおかしくなった。

 最初はああ…短剣だ。あんなもの。それも最高級の鋼でエメラルドが輝いていた。

 これをどうしろと?まあ、父が気に入ったから良かったが…

 俺の両親は政略結婚だ。父は王宮貴族で領地を持っていない。母は侯爵家の長女で実家は財産があった。

 父は財大臣として政務をこなし、母は俺が生まれると役目は果たしたと社交に精を出した。お互い別に愛人を持って夫婦とは形ばかりだった。

 だが、息子は可愛かったらしく俺は嫡男と言うことで甘やかされて育った。

 何でも言うことを聞いてもらいそれが当たり前だと思うようになった。

 それはそうだろう。俺はマーカス侯爵家の跡取りなんだから。

 領地こそ持ってはいないがマーカス家は代々財務大臣としてつねに政務の中心にいた。

 財産は少なくてもその影響力は他の貴族に計り知れないほどの影響力を持っていた。

 だからこそ侯爵家から嫁を取り援助も受けて来たのだ。


 フェリオも学園に入る前に婚約の話が持ち上がった。

 だが、フェリオは自分がそれなりの美形だと思っていたし爵位も名誉もある家柄、こんな自分にふさわしい婚約者を焦って決めることはないと思った。

 両親もまだこれからいくらでも相手は見つかるはずと思っていたのだろう。マーカスの意見は難なく通った。

 そして学園に入って見れば思った通り女生徒が振り返り見惚れる始末。

 いつしかファンクラブと称するものまで出来上がり、マーカスはやっぱりとほくそ笑んでいた。

 2年生になりそろそろ婚約者の選定もと思っていてクララやナージャ、パメラに目をつけた。いずれも高位貴族で財産もそこそこ。これ以下はないだろうと。

 そこにシルベスタが入って来た。少々やり過ぎなところもあるが何しろオリヴィエ伯爵家だ。財力では国内でも5本の指に入ると噂もある。

 それに俺にかなり好意を寄せている事もわかる。

 妻にするには何より金持ちで俺の言うことを聞いて従順で反抗しないタイプの女がいいと思っていた。

 何しろ俺は結婚しても愛人も欲しいし娼館にだって行くつもりだから。


 クララはしっかりしているから俺に反抗するかもしれないと思っている。

 ナージャは優しくて従順だがいまいち好みではない。

 パメラも従順そうだし体型も好みだ。

 そこにシルベスタが現れた。俺は誰にするか迷っていた。

 その結果がこれだ。

 まったく。


 屋敷に帰って夕食後に両親に事情を説明した。

 リビングでソファーに座った父は言った。

 「フェリオ。お前は勘違いさせやすいんだ。その子もやり過ぎだろうがフェリオお前も自分に火の粉が降りかかるような事になる前に身を守るすべを身につけろ。これからはそれくらいの事は見極めろよ」

 父はお茶を飲みながらすでに本を開いている。

 「わかってる父さん。これからは気を付ける。心配かけてごめん」

 そこに母が入って来た。話を聞いていたらしい。

 「そうよフェリオ。でも、そろそろ婚約者を決めた方がいいんじゃない?」

 「ああ、俺もそう思ってるんだ。候補は3人ほどいるんだ。謹慎が終わったら話をしてみる」

 「3人もいるの?さすがね。でも、伯爵家以下じゃないわよね?」

 「もちろん、ひとりは公爵家。2人は侯爵家だ母さん」

 「そう、なるべく財産がある家のお嬢さんがいいわね」

 「ああ、俺もそう思ってる」


 俺は婚約を本格的に考え始めた。だから謹慎期間中にスッキリしておこうと思った。

 (娼館に行って発散して来るか)と。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。

ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ! そんな私に好都合な相手が。 女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。

とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

だから、どうか、幸せに

基本二度寝
恋愛
話し合いもない。 王太子の一方的な発言で終わった。 「婚約を解消する」 王城の王太子の私室に呼びつけ、婚約者のエルセンシアに告げた。 彼女が成人する一年後に、婚姻は予定されていた。 王太子が彼女を見初めて十二年。 妃教育の為に親元から離されて十二年。 エルセンシアは、王家の鎖から解放される。 「かしこまりました」 反論はなかった。 何故かという質問もない。 いつも通り、命を持たぬ人形のような空っぽの瞳で王太子を見つめ、その言葉に従うだけ。 彼女が此処に連れて来られてからずっと同じ目をしていた。 それを不気味に思う侍従達は少なくない。 彼女が家族に会うときだけは人形から人へ息を吹き返す。 家族らだけに見せる花が咲きほころぶような笑顔に恋したのに、その笑顔を向けられたことは、十二年間一度もなかった。 王太子は好かれていない。 それはもう痛いほどわかっていたのに、言葉通り婚約解消を受け入れて部屋を出ていくエルセンシアに、王太子は傷付いた。 振り返り、「やはり嫌です」と泣いて縋ってくるエルセンシアを想像している内に、扉の閉じる音がした。 想像のようにはいかない。 王太子は部屋にいた側近らに退出を命じた。 今は一人で失恋の痛みを抱えていたい。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

処理中です...