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17どうして?(フェリオ)
しおりを挟む学園長室からでた俺フェリオは、クソみたいな気分になった。
侯爵家の俺がどうして?俺が何をした?俺はどうして謹慎処分に?
???が連続で脳内に炸裂して、どうしようもないほど怒りが沸き上がった。
誰のせいなんだ?
シルベスタ。あいつだ。あいつがファンクラブに…いや、あいつが学園に入って来てからおかしくなった。
最初はああ…短剣だ。あんなもの。それも最高級の鋼でエメラルドが輝いていた。
これをどうしろと?まあ、父が気に入ったから良かったが…
俺の両親は政略結婚だ。父は王宮貴族で領地を持っていない。母は侯爵家の長女で実家は財産があった。
父は財大臣として政務をこなし、母は俺が生まれると役目は果たしたと社交に精を出した。お互い別に愛人を持って夫婦とは形ばかりだった。
だが、息子は可愛かったらしく俺は嫡男と言うことで甘やかされて育った。
何でも言うことを聞いてもらいそれが当たり前だと思うようになった。
それはそうだろう。俺はマーカス侯爵家の跡取りなんだから。
領地こそ持ってはいないがマーカス家は代々財務大臣としてつねに政務の中心にいた。
財産は少なくてもその影響力は他の貴族に計り知れないほどの影響力を持っていた。
だからこそ侯爵家から嫁を取り援助も受けて来たのだ。
フェリオも学園に入る前に婚約の話が持ち上がった。
だが、フェリオは自分がそれなりの美形だと思っていたし爵位も名誉もある家柄、こんな自分にふさわしい婚約者を焦って決めることはないと思った。
両親もまだこれからいくらでも相手は見つかるはずと思っていたのだろう。マーカスの意見は難なく通った。
そして学園に入って見れば思った通り女生徒が振り返り見惚れる始末。
いつしかファンクラブと称するものまで出来上がり、マーカスはやっぱりとほくそ笑んでいた。
2年生になりそろそろ婚約者の選定もと思っていてクララやナージャ、パメラに目をつけた。いずれも高位貴族で財産もそこそこ。これ以下はないだろうと。
そこにシルベスタが入って来た。少々やり過ぎなところもあるが何しろオリヴィエ伯爵家だ。財力では国内でも5本の指に入ると噂もある。
それに俺にかなり好意を寄せている事もわかる。
妻にするには何より金持ちで俺の言うことを聞いて従順で反抗しないタイプの女がいいと思っていた。
何しろ俺は結婚しても愛人も欲しいし娼館にだって行くつもりだから。
クララはしっかりしているから俺に反抗するかもしれないと思っている。
ナージャは優しくて従順だがいまいち好みではない。
パメラも従順そうだし体型も好みだ。
そこにシルベスタが現れた。俺は誰にするか迷っていた。
その結果がこれだ。
まったく。
屋敷に帰って夕食後に両親に事情を説明した。
リビングでソファーに座った父は言った。
「フェリオ。お前は勘違いさせやすいんだ。その子もやり過ぎだろうがフェリオお前も自分に火の粉が降りかかるような事になる前に身を守るすべを身につけろ。これからはそれくらいの事は見極めろよ」
父はお茶を飲みながらすでに本を開いている。
「わかってる父さん。これからは気を付ける。心配かけてごめん」
そこに母が入って来た。話を聞いていたらしい。
「そうよフェリオ。でも、そろそろ婚約者を決めた方がいいんじゃない?」
「ああ、俺もそう思ってるんだ。候補は3人ほどいるんだ。謹慎が終わったら話をしてみる」
「3人もいるの?さすがね。でも、伯爵家以下じゃないわよね?」
「もちろん、ひとりは公爵家。2人は侯爵家だ母さん」
「そう、なるべく財産がある家のお嬢さんがいいわね」
「ああ、俺もそう思ってる」
俺は婚約を本格的に考え始めた。だから謹慎期間中にスッキリしておこうと思った。
(娼館に行って発散して来るか)と。
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