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22ナイルの手紙
しおりを挟むナイルの行動は早かった。
すぐにオリヴィエ商会の宅配便特急コースで国の母に手紙を送った。
~母上へ~
お変わりなくご健勝のことと存じます。
実は母上、聞いてほしい事があります。
僕にはついに将来を共にしたいと思える人が出来ました。
前にアルロード国に来た時お会いした事のあるシルベスタ・オリヴィエと言う女性です。
彼女は今、僕が留学している学園の生徒で同じクラスです。
母上にもこちらに来る前にお話した通りカエルム国に来たのは彼女と再会するためでもありました。
でも、こちらに来て自分の気持ちが少し揺らいだんです。この気持ちが本物がどうかと。
そして僕はもう一度自分の気持ちを見直しました。
シルベスタがどんな女性なのか真剣に知ろうとしました。そして僕は更に彼女が好きになりました。
それでとうとうシルベスタも僕が好きだとお互いの気持ちを確かめ合うことも出来ました。
ですが、困ったことが起きました。
勘違い男がいて一つ上の学年の侯爵家の嫡男で、フェリオ・マーカスと言う男ですが、そいつは婚約者を決めるつもりで辺りをつけていた令嬢がいましたがその令嬢たちからことごとく袖にされてとうとうシルベスタに目をつけたんです。
そう言う事情もあって僕は一日も早く彼女と正式に婚約したいのです。
彼女の実家はオリヴィエ伯爵家で、偶然にも彼女との結婚はこれからの国のためにも非常に役に立つとも思います。
僕は決して王族に関わるつもりはありませんがアルロード国の為に尽くしたいと思ってもいます。
だからどうか父上に口添えしていただきたく思います。
どうか、母上。取り急ぎ婚約の話を進めて頂きますようよろしくお願いします。
~ナイル・アルロードより~
驚いたのはナイルのは母親アナリスだった。彼女は国王から籠愛されていたが側妃なので立場も弱くナイルには肩身の狭い思いをさせている事を気にしていた。
でも、そんな息子がこんなにもしっかり自分の考えを持っている事を知って嬉しかった。
アナリスは早速国王ヴィストールに手紙を見せた。
アルロード国は小さな国だった。特産は穀類や豆類それに革工芸や宝飾、陶芸などが主な産業で細かい作業が得意だった。
そのために隣国で運輸業で成功をしていると聞いたオリヴィエ伯爵家と繋がりをもてないか思案していた。
材料をたくさん仕入れることが出来ればそれを加工する技術はある。それを製品化して他国に売ることが出来れば国も潤うはずとそう考えた。
それにはオリヴィエ家の持つ運輸業の手腕を借りれないかと思っていたのである。
ナイルの話は願ってもない事で国王はすぐにオリヴィエ家に婚約の打診をするよう手配した。
ナイルには同じくオリヴィエ商会の宅配便特急コースで返事を返した。
~ナイルへ~
お父様もシルベスタ・オリヴィエ嬢とのお話すごく喜んでおられます。
すぐにオリヴィエ家には婚約の話をお伝えするようにしました。
一度オリヴィエ家にご挨拶に伺うべきかと思っています。
あなたの都合はどうですか。
週末に私と一緒に彼女の家に挨拶に伺えればと考えています。
この特急コースってすごく便利ですね。驚きました。
これなら返事も十分間に合うでしょう。
どうかシルベスタにもよろしくと伝えておいて下さい。
~アナリス・アルロードより~
返事を受け取ったナイルは大喜びで週末にオリヴィエ家に挨拶に行く事にした。
シルベスタとナイルは週末にオリヴィエ家に向かうことにした。
もちろん前触れは父であるアルロード国、国王から出されている。
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