大嫌いなんて言ってごめんと今さら言われても

はなまる

文字の大きさ
22 / 29

22ナイルの手紙

しおりを挟む

 
 ナイルの行動は早かった。

 すぐにオリヴィエ商会の宅配便特急コースで国の母に手紙を送った。

 ~母上へ~

 お変わりなくご健勝のことと存じます。

 実は母上、聞いてほしい事があります。

 僕にはついに将来を共にしたいと思える人が出来ました。

 前にアルロード国に来た時お会いした事のあるシルベスタ・オリヴィエと言う女性です。

 彼女は今、僕が留学している学園の生徒で同じクラスです。

 母上にもこちらに来る前にお話した通りカエルム国に来たのは彼女と再会するためでもありました。

 でも、こちらに来て自分の気持ちが少し揺らいだんです。この気持ちが本物がどうかと。

 そして僕はもう一度自分の気持ちを見直しました。

 シルベスタがどんな女性なのか真剣に知ろうとしました。そして僕は更に彼女が好きになりました。

 それでとうとうシルベスタも僕が好きだとお互いの気持ちを確かめ合うことも出来ました。

 ですが、困ったことが起きました。

 勘違い男がいて一つ上の学年の侯爵家の嫡男で、フェリオ・マーカスと言う男ですが、そいつは婚約者を決めるつもりで辺りをつけていた令嬢がいましたがその令嬢たちからことごとく袖にされてとうとうシルベスタに目をつけたんです。

 そう言う事情もあって僕は一日も早く彼女と正式に婚約したいのです。

 彼女の実家はオリヴィエ伯爵家で、偶然にも彼女との結婚はこれからの国のためにも非常に役に立つとも思います。

 僕は決して王族に関わるつもりはありませんがアルロード国の為に尽くしたいと思ってもいます。

 だからどうか父上に口添えしていただきたく思います。

 どうか、母上。取り急ぎ婚約の話を進めて頂きますようよろしくお願いします。

                             ~ナイル・アルロードより~


 驚いたのはナイルのは母親アナリスだった。彼女は国王から籠愛されていたが側妃なので立場も弱くナイルには肩身の狭い思いをさせている事を気にしていた。

 でも、そんな息子がこんなにもしっかり自分の考えを持っている事を知って嬉しかった。

 アナリスは早速国王ヴィストールに手紙を見せた。

 アルロード国は小さな国だった。特産は穀類や豆類それに革工芸や宝飾、陶芸などが主な産業で細かい作業が得意だった。

 そのために隣国で運輸業で成功をしていると聞いたオリヴィエ伯爵家と繋がりをもてないか思案していた。

 材料をたくさん仕入れることが出来ればそれを加工する技術はある。それを製品化して他国に売ることが出来れば国も潤うはずとそう考えた。

 それにはオリヴィエ家の持つ運輸業の手腕を借りれないかと思っていたのである。

 ナイルの話は願ってもない事で国王はすぐにオリヴィエ家に婚約の打診をするよう手配した。

 ナイルには同じくオリヴィエ商会の宅配便特急コースで返事を返した。

 
 ~ナイルへ~

 お父様もシルベスタ・オリヴィエ嬢とのお話すごく喜んでおられます。

 すぐにオリヴィエ家には婚約の話をお伝えするようにしました。

 一度オリヴィエ家にご挨拶に伺うべきかと思っています。

 あなたの都合はどうですか。

 週末に私と一緒に彼女の家に挨拶に伺えればと考えています。

 この特急コースってすごく便利ですね。驚きました。

 これなら返事も十分間に合うでしょう。

 どうかシルベスタにもよろしくと伝えておいて下さい。

                           ~アナリス・アルロードより~


 返事を受け取ったナイルは大喜びで週末にオリヴィエ家に挨拶に行く事にした。

 シルベスタとナイルは週末にオリヴィエ家に向かうことにした。

 もちろん前触れは父であるアルロード国、国王から出されている。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 殿下、婚姻前から愛人ですか? 

ヴァンドール
恋愛
婚姻前から愛人のいる王子に嫁げと王命が降る、執務は全て私達皆んなに押し付け、王子は今日も愛人と観劇ですか? どうぞお好きに。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

完結 女性に興味が無い侯爵様 私は自由に生きます。

ヴァンドール
恋愛
私は絵を描いて暮らせるならそれだけで幸せ! そんな私に好都合な相手が。 女性に興味が無く仕事一筋で冷徹と噂の侯爵様との縁談が。 ただ面倒くさい従妹という令嬢がもれなく付いてきました。

とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

だから、どうか、幸せに

基本二度寝
恋愛
話し合いもない。 王太子の一方的な発言で終わった。 「婚約を解消する」 王城の王太子の私室に呼びつけ、婚約者のエルセンシアに告げた。 彼女が成人する一年後に、婚姻は予定されていた。 王太子が彼女を見初めて十二年。 妃教育の為に親元から離されて十二年。 エルセンシアは、王家の鎖から解放される。 「かしこまりました」 反論はなかった。 何故かという質問もない。 いつも通り、命を持たぬ人形のような空っぽの瞳で王太子を見つめ、その言葉に従うだけ。 彼女が此処に連れて来られてからずっと同じ目をしていた。 それを不気味に思う侍従達は少なくない。 彼女が家族に会うときだけは人形から人へ息を吹き返す。 家族らだけに見せる花が咲きほころぶような笑顔に恋したのに、その笑顔を向けられたことは、十二年間一度もなかった。 王太子は好かれていない。 それはもう痛いほどわかっていたのに、言葉通り婚約解消を受け入れて部屋を出ていくエルセンシアに、王太子は傷付いた。 振り返り、「やはり嫌です」と泣いて縋ってくるエルセンシアを想像している内に、扉の閉じる音がした。 想像のようにはいかない。 王太子は部屋にいた側近らに退出を命じた。 今は一人で失恋の痛みを抱えていたい。

生命(きみ)を手放す

基本二度寝
恋愛
多くの貴族の前で婚約破棄を宣言した。 平凡な容姿の伯爵令嬢。 妃教育もままならない程に不健康で病弱な令嬢。 なぜこれが王太子の婚約者なのか。 伯爵令嬢は、王太子の宣言に呆然としていた。 ※現代の血清とお話の中の血清とは別物でござる。 にんにん。

処理中です...