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しおりを挟むマクシュミリアンはそんなくららを不思議な顔で見つめていた。
くららはとにかく家の中にマクシュミリアンを入れなければと彼を立ちあがらせる。
彼はふらふらしながらも1人で歩いて家に入ると、この家の中に初めて入ったような顔をして、周りのものを一つずつ眺めて行く。
くららは裏にはヤギもいると話すと、裏に出てヤギや鶏、畑などを見て回るとまた家の中に入ってきて頭を抱えた。
「わからない。ここはどこなんだ?僕はどうしてここに?」
くららはマクシュミリアンを椅子に座らせた。
くららは彼の向かいに座って話を始めた。
「落ち着いてください。ここはあなたの家ですわマクシュミリアン様。少し前に一緒に暮らされていた方が亡くなったと聞きました。ここはその方と住んでいらした家なんですよ」
「そうなんですか‥‥それで‥‥」
「わたしは神楽坂くららです。これはあなたから聞いたお話ですが…‥」
くららは彼が町に薪を売りに行って奴隷商人捕まった話や自分と知り合って王宮で仕事をしている人に買われた事や、その後国王の部屋で火事があって家事を消すために部屋に飛び込んだ事、そしてわたしを助けてくれてここに連れて来た事を話した。
「でも、どうして僕が人間の女性を?ここに連れてくるはずがない。君は…いや、くららさん嘘はやめてくれ」
くららの心臓は大きくバウンドした。
確かに最初はわたしを追い出そうとしてらっしゃいましたわ、でもお互いの気持ちが分かって、彼はそれからどうするつもりだったのでしょうか?
今の調子では本当の事をお話したら、マクシュミリアン様はきっとわたしをここには置いて下さらないわ。
「ええ、そうかも知れませんね。でもわたしたちはお互い思いあっていると分かって…それで逃げてここに一緒に連れて来て下さったのです。あなたはここで一緒に暮らそうとおしゃったじゃありませんか」
マクシュミリアンが驚きすぎて座っていた椅子から落ちそうになる。
彼はしばらく考えていたが突然くららの腕をつかんだ聞いた。
「そんなバカな…僕たちが思いあってるだって?一緒に暮らそうと言ったのか。僕が?」
マクシュミリアンはくららを穴が開くほどじっと見つめる。
彼のエメラルドのような瞳は、”噓をつくな、何もかも知っているんだ。”とでも言いたげにくららの黒い瞳を見つめる。
くららもここで逃げたらもう後がないです。とばかりに一ミリも顔を逸らさず、マクシュミリアンの顔を見つめた。
こうやって彼の顔を見るまじかで見ると薄い被毛で覆われてはいるが…
優雅なカーブを描いてまるで彫像のような彫の深い骨格、宝石のような煌めきをたたえた瞳。獣とは思えない高い鼻梁、美しい曲線を描いた唇、すっきりシャープな顎のライン…金色の髪が肩までなびいている。
ああ…彼は虎ではありませんわ。まさにイケメンの中でも最高ランクの部類に入るお顔立ちです。
くららはますますドキドキして来た。
「それで僕は君と‥‥もう?‥‥やったのか?」
「もう!あなたはそんな事を女性に聞かれるのですか?」
蜂に刺された後の行為を思い出すと恥ずかしくなる。
「失礼は承知だ。でも僕は何も覚えていないんだ。もし君に‥‥その…僕たちがそう言う関係になっていたとしたら、僕は責任をとるつもりだ。君と結婚する。まあ、君が望めばだけど…無理強いはしない」
マクシュミリアンが、こんなことを言ったのは今が発情期でそのせいで彼女を連れ去りそのような行為に及んだのではと思ったからだ。
今も彼女を見て、彼女の匂いを嗅いで欲情している。
自分が今までどのように暮らしてきたかもわからない。発情期をどのように過ごしてきたかもわからない。
ただ、無責任なことはしたくないと思った。もしそんなことをしたなら責任を取るつもりだと‥‥
それに僕たちは思いあっていると彼女は言った。
だから…もしくららさんが僕と一緒にいたいと言ってくれれば‥‥
でも彼女は人間だ。どうせ獣人の僕と何か暮らすのは迷惑がるかもしれない。
くららは困った。
彼と何かあったと言えばあったが、まだ本当の意味で深い関係ではない。
彼を騙すようなことはしたくはないが‥‥
彼はそうなったのなら結婚するとまで言いいましたわ。
これはチャンスではありませんか?
彼はわたしと結婚する気もなかったようですし、きっと関係があったとしても彼はわたしと一緒に暮らしたくはなかったのですもの。
くららは勇気を出してマクシュミリアンの目の前でそろりとドレスの裾を持ち上げた。
内ももには、蜂に刺されたところを彼が吸った後がはっきり残っている。
そのことを知っていれば、単なる赤い跡だが、知らなければこれが何の後か想像がつくはずのような跡だった。
それによく見るとくららの脚にはあちこちに彼が残した後が付いていた。
まあ…どうしましょう。こんなにたくさん跡が残っているなんて知りませんでしたわ。
「もう…マクシュミリアン様ったら、いつの間にこんなに‥‥」
彼は膝をついてくららの脚を見る。
その赤い跡を指でなぞりくららを見上げた。
「これ、全部僕が?」
くららはこくりとうなずく。
「これで納得していただけましたか?」
「ああ、何もない関係でいきなりドレスの裾をめくるなんて出来ないだろうし、僕が君になにをしたかはっきりわかった」
マクシュミリアンはなぜかうれしかった。
もし理性を失って野獣のように彼女を抱いたのではと思ったが、彼女の態度はまんざらでもなさそうなところも、僕との関係を認めてくれているのもうれしかった。
「それでベッドも一つなんだ。取りあえずこの家が僕の家でくららさんと僕は一緒に暮らすことになったという事なんだね?」
「ええ、そうです。良かったですわ。マクシュミリアン様にわかっていただいて‥‥」
くららはほっと胸をなで下ろす。
「くららさん、そのマクシュミリアン様はやめてくれないか。どうも調子が狂う。マクシュミリアンでもマクシュでも言い、様をつけるのはやめてくれ!」
「ええ、そうですわね。ではわたしもくららと呼んでいただけます?」
「ああ、そうしよう。くららおいで…」
マクシュミリアンはくららを引き寄せるとそっと顎を持ち上げた。
もどかしいような瞳は、一度ゆっくり閉じられて開かれた。
彼はゆっくりと唇を重ねてきた。
ぴたりと唇が重なると柔らかな感触が唇から伝わって来た。あまやかな痺れが背筋を伝うと脳まで快感が広がった。
彼の舌がふっと開いた唇の隙間から差し入れられると、熱い欲望が沸き上がった。
くららは思わず彼の舌を絡めとると、互いが引きあうように情熱的なキスが始まった。
くららは隠れている間ずっと彼の事を思っていた。そして帰って来ると彼は記憶をなくしていて、でもこんなふうに口づけをされて、自分がそれをどんなに待ち望んでいたかを思い知った。
ああ‥‥マクシュミリアンあなたが欲しい。あなたが欲しいんです。
彼の舌は落ち着きをなくした子供みたいに口腔内を暴れまわっていますね。
わたしの腰をつかんだあなたの腕は痛いほどわたしを捕えていますし、押し当てられた胸から伝わる心臓の鼓動の激しさは、胸から飛び出るのではないかと言うほど脈打っています。
くららの欲望はとめどなく加速する。
やっと唇が離されるとふたりは息をぐっと吸い込んだ。
「くらら、今すぐ確かめ合いたい。僕には記憶がない。だから僕たちが本当に愛し合っていることを…気を悪くしたなら謝る。だけど‥‥」
「…‥わたし…‥」
マクシュミリアンは焦るあまり話の途中で遮った。
「くらら、やはり強引過ぎた?」
「わたしも欲しいって言おうとしたんです」
「良かった‥‥」
マクシュミリアンはくららのドレスをすぐに脱がせ始めた。
「あの…ちょっと待っていただ‥‥」
「君の全部が見たい。もう知ってるはずなのに何も覚えてないんだ。くらら裸になって」
「いえ、まだそんなに暗くはないですし、それにあなたとそうなったのは暗かったですから裸を見たと言うのは違うと思いますけれど‥‥」
「そう?じゃあ今からすべてが見たい。これでいい?」
マクシュミリアンは薄汚れたシャツを脱ぎ捨てた。
彼の股間はズボンがはち切れそうなくらい膨らんでいる。
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