16 / 59
15魔樹海
しおりを挟む
魔樹海はキルベートの騎士隊や教会があるウルプの街を通り抜け険しい山を一つ越えたところ辺りから始まる。
山を越えなくてもすそ野に道があり魔樹海に行くのは思ったよりもたやすかった。
その険しい山のふもとには昔からパニア村がありそこでは貴重な薬草や山羊の放牧をしていた。
イエルハルド国がなくなった今でもそこに村人は住んでいた。
私は騎士隊と一緒に馬でその村がある場所までやって来た。
ひとりの騎士隊員が何度か経験があるらしく村長の家の前で馬を止めて家に入って行った。
「村長、黒翼騎士隊です。魔獣が出ました。危険ですので避難をお願いします。それから隊員の退避場所としてここをお借りしたいんですが」
「ああ、モービンか、また魔獣か。最近多いな…わかったみんなにはすぐ知らせる。ここは好きなように使ってくれ」
「助かります。非難は大丈夫ですか?何なら隊員を?」
「いや、慣れているから大丈夫じゃ。なに、山の中腹にある避難場所なら魔獣は登っては来れんからな」
「はい、すぐに終わらせます」
「ああ、気をつけてな」
騎士隊は20人ほどの集団だった。黒っぽい隊服と鎧。マントは鮮やかな朱色だった。
きっと深い森で間違って攻撃などないように見分けやすくするためだろう。
(そう言えば最初にガロンに乗った時のリント隊長のマントは銀色だった。あのとき隊長はマントを私に貸してくれた。
「空は冷えるからこれを巻きつけろって」でも、彼だってきっと寒いはずなのに…あの時寒くなかったのだろうか?…何思い出してるのよ。今はそんな時じゃないって‥それでも最初の態度を考えれば私を必要としてくれたことはうれしい)
騎士隊はほとんど無言できびきびと移動していく。
馬に乗って足早に走っているのでほとんど会話は無理だったが。
彼らはみな馬に騎乗してそれぞれ魔剣と言われる剣を帯同していた。
この国では魔力を使えるものは少ない。そのため魔獣と戦うときには剣に魔石をはめ込み魔剣とする。
その魔石に魔力を込めるのも騎士隊員が行うと聞いた。それだけで足りなければ聖女の力も借りるとも。
魔石をはめ込んだ剣の力は大幅にアップする。それに加えて炎を繰り出せたり氷や水での攻撃が出来る。
騎士隊員はすぐに村長の家の前にテントを張り始めた。
「えっ?家を使わせてもらうんじゃないんですか?」
「隊長や聖女様は家を使ってもらいますがとても全員は無理なので…」
「さあ、モービン。聖女様とイチャイチャなんかしてないで手を貸せ!」
彼はそう言われて慌てて走って行った。
そこにエクロートさんが到着した。
「エクロートさん、どうしてここに?」モービンが驚く。
「俺はこの辺りの出身なんだ。どうして俺にも声をかけてくれない?魔獣が出たんだろう?協力する」
「ありがとうございます。すぐに隊長が戻って来ると思いますのでしばらく休んでいてください」
どうやらリント隊長は上空から当たりの様子を探っているらしい。
「エクロートさん?」
「アリーシア?どうしてこんなところにいるんです?」
「私もお手伝いしようかと…」
「まあ、あなたがいてくれれば助かるが…」
「エクロートさんはこの辺りのお生まれなんですか?」
「ええ、イエルハルド国で生まれて育った。あんなことがあって国はなくなったが…」
エクロートさんは遠くを見るように視線を空に向けた。
「ええ、そうですね」
「そもそも魔樹海はもともとは魔獣などいなかった。そうですね…オークの森のようだったと言えばわかりますか?」
「はい、でもほんとに?」
「ええ、そもそも聖獣がいたのはあの樹海なんです。聖獣はイエルハルド国のものだったんです。それをコルプス国が奪った。大国を存続させるには聖獣のような存在が必要だったのでしょう。ザイアス国王は弱り始めた国の為に周りの属国を従えさせる力が欲しかったんですよ」
「そのためにたくさんの人々を殺したりしたんですか?」
「ええ、最初は聖獣を貸してほしいと言っていたのに、返す返さないと揉め初めて…結局女王は騙されたんですよ。多くの人々の血が流れ憎しみがこの地を襲った。そして魔樹海は生れたんです」
エクロートの顔が禍々しく歪んだ。
私はこの時初めて知った。魔樹海が元は美しい樹海だったことを…
「えっ?もしかしてガロンも元はイエルハルド国の?」
「ええ、王都にいる聖獣は全部です。ああ、生まれた赤ん坊は違いますけど」
私はガロンが言った事を思い出す。
(もしかしてガロンはイエルハルド国の女王の事を言っているのでは?)
「あのエクロートさん…イエルハルド国の女王の名前は?」
「確か…フローラ・イエルハルドだったかと…」
「フローラ…それで聖獣は女王の…」
「ええ、歴代の女王は女神イルヴァの加護を持っていると言われていました。聖獣は女王に仕えるものだとも言われていると聞いています」
「ああ…そうなんですね」
(ガロン。お前完全に勘違いしてるから…どうすればいいの?)
私はそれ以上話が出来なくなった。
山を越えなくてもすそ野に道があり魔樹海に行くのは思ったよりもたやすかった。
その険しい山のふもとには昔からパニア村がありそこでは貴重な薬草や山羊の放牧をしていた。
イエルハルド国がなくなった今でもそこに村人は住んでいた。
私は騎士隊と一緒に馬でその村がある場所までやって来た。
ひとりの騎士隊員が何度か経験があるらしく村長の家の前で馬を止めて家に入って行った。
「村長、黒翼騎士隊です。魔獣が出ました。危険ですので避難をお願いします。それから隊員の退避場所としてここをお借りしたいんですが」
「ああ、モービンか、また魔獣か。最近多いな…わかったみんなにはすぐ知らせる。ここは好きなように使ってくれ」
「助かります。非難は大丈夫ですか?何なら隊員を?」
「いや、慣れているから大丈夫じゃ。なに、山の中腹にある避難場所なら魔獣は登っては来れんからな」
「はい、すぐに終わらせます」
「ああ、気をつけてな」
騎士隊は20人ほどの集団だった。黒っぽい隊服と鎧。マントは鮮やかな朱色だった。
きっと深い森で間違って攻撃などないように見分けやすくするためだろう。
(そう言えば最初にガロンに乗った時のリント隊長のマントは銀色だった。あのとき隊長はマントを私に貸してくれた。
「空は冷えるからこれを巻きつけろって」でも、彼だってきっと寒いはずなのに…あの時寒くなかったのだろうか?…何思い出してるのよ。今はそんな時じゃないって‥それでも最初の態度を考えれば私を必要としてくれたことはうれしい)
騎士隊はほとんど無言できびきびと移動していく。
馬に乗って足早に走っているのでほとんど会話は無理だったが。
彼らはみな馬に騎乗してそれぞれ魔剣と言われる剣を帯同していた。
この国では魔力を使えるものは少ない。そのため魔獣と戦うときには剣に魔石をはめ込み魔剣とする。
その魔石に魔力を込めるのも騎士隊員が行うと聞いた。それだけで足りなければ聖女の力も借りるとも。
魔石をはめ込んだ剣の力は大幅にアップする。それに加えて炎を繰り出せたり氷や水での攻撃が出来る。
騎士隊員はすぐに村長の家の前にテントを張り始めた。
「えっ?家を使わせてもらうんじゃないんですか?」
「隊長や聖女様は家を使ってもらいますがとても全員は無理なので…」
「さあ、モービン。聖女様とイチャイチャなんかしてないで手を貸せ!」
彼はそう言われて慌てて走って行った。
そこにエクロートさんが到着した。
「エクロートさん、どうしてここに?」モービンが驚く。
「俺はこの辺りの出身なんだ。どうして俺にも声をかけてくれない?魔獣が出たんだろう?協力する」
「ありがとうございます。すぐに隊長が戻って来ると思いますのでしばらく休んでいてください」
どうやらリント隊長は上空から当たりの様子を探っているらしい。
「エクロートさん?」
「アリーシア?どうしてこんなところにいるんです?」
「私もお手伝いしようかと…」
「まあ、あなたがいてくれれば助かるが…」
「エクロートさんはこの辺りのお生まれなんですか?」
「ええ、イエルハルド国で生まれて育った。あんなことがあって国はなくなったが…」
エクロートさんは遠くを見るように視線を空に向けた。
「ええ、そうですね」
「そもそも魔樹海はもともとは魔獣などいなかった。そうですね…オークの森のようだったと言えばわかりますか?」
「はい、でもほんとに?」
「ええ、そもそも聖獣がいたのはあの樹海なんです。聖獣はイエルハルド国のものだったんです。それをコルプス国が奪った。大国を存続させるには聖獣のような存在が必要だったのでしょう。ザイアス国王は弱り始めた国の為に周りの属国を従えさせる力が欲しかったんですよ」
「そのためにたくさんの人々を殺したりしたんですか?」
「ええ、最初は聖獣を貸してほしいと言っていたのに、返す返さないと揉め初めて…結局女王は騙されたんですよ。多くの人々の血が流れ憎しみがこの地を襲った。そして魔樹海は生れたんです」
エクロートの顔が禍々しく歪んだ。
私はこの時初めて知った。魔樹海が元は美しい樹海だったことを…
「えっ?もしかしてガロンも元はイエルハルド国の?」
「ええ、王都にいる聖獣は全部です。ああ、生まれた赤ん坊は違いますけど」
私はガロンが言った事を思い出す。
(もしかしてガロンはイエルハルド国の女王の事を言っているのでは?)
「あのエクロートさん…イエルハルド国の女王の名前は?」
「確か…フローラ・イエルハルドだったかと…」
「フローラ…それで聖獣は女王の…」
「ええ、歴代の女王は女神イルヴァの加護を持っていると言われていました。聖獣は女王に仕えるものだとも言われていると聞いています」
「ああ…そうなんですね」
(ガロン。お前完全に勘違いしてるから…どうすればいいの?)
私はそれ以上話が出来なくなった。
19
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので
鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど?
――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」
自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。
ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。
ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、
「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。
むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが……
いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、
彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、
しまいには婚約が白紙になってしまって――!?
けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。
自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、
さあ、思い切り自由に愛されましょう!
……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか?
自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、
“白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる