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しおりを挟むふたりは甘く満ち足りた時間の中でまどろんでいた。瑠衣の唇を吸い上げるとレオナルドが蜜にまみれた分身を瑠衣の中から引きずり出した。
まだ物足りないとその分身が抗うように、瑠衣の蜜口を刺激した。
だが、レオナルドはこうしてはいられないと気づいていた。
ゆっくり起き上がるともう一度瑠衣にキスをしてベッドから立ち上がった。
「瑠衣ちょっと待ってて、そのままでいろ」
瑠衣はまだクリームのようなとろけた絶頂の余韻の中にいて朦朧とうなずいた。
しばらくしてレオナルドは濡らした布を持って来た。
瑠衣はまだぼんやりとしていて、レオナルドを見ると微笑んだ。気だるそうに横たわる瑠衣がまだあまり体調がよくなかったことを思い出して、もっとゆっくりさせてやりたいと思った。だが、そんなことをしている暇もないだろう。
何時、誰かに見られるかわからないのだ。
もちろん瑠衣とのことを隠すつもりはなかったが、今は時期が悪すぎる。
「瑠衣、疲れた?」
「ううん、でもこのまま寝てしまいそう。早く起きなくちゃ…」
「ちょっと待って、今きれいにするから」
レオナルドは瑠衣の太腿のあたりをきれいにふき取ってやる。
「るい…やっぱり君は初めてだった…」敷布には赤色の印があった。
「噓みたい…わたしやっぱり生まれ変わったのね。うれしいレオナルド。きれいな体であなたと結ばれて…」
散々、修仁の慰み者になっていただけに、レオナルドと結ばれることに少し気後れしていた瑠衣だったが、やっぱりあの痛みはそうだったんだと胸がいっぱいになった。
すると急にうれしくて涙があふれた。
「どうした?どこか痛い?俺が激しくしたからか?」
レオナルドはおろおろして瑠衣の髪をそっと撫ぜる。彼は下履きを着けていたが、布時越しからも雄茎は天を向いているとわかる。
瑠衣は微笑んでレオナルドの髪や耳に優しく撫ぜる。
「大丈夫よレオナルド、わたしは壊れたりしないわ。あなたと結ばれてうれしいのよ」
「そうか、ならよかった」
「それよりレオナルド…あなたまだ物足りないのね?」
「ばれた?ああ、もちろんだよ。もっともっと瑠衣とこうしていたい。でもそうも行かない。さあ、そろそろ支度をして」
そう言いながらもレオナルドは瑠衣の髪に、頬に額にキスを降らせる。
「もう、レオナルドったら、これじゃあ支度できない…ふっふ」
瑠衣のうれしそうな笑い声がすると、いきなり声がした。
「隊長!いらっしゃいますか?すみません。声をかけても返事がなかったので執務室の中まで入らせていただきました」
「ああ、悪かった。すぐに行く」
「あっ、はい。失礼しました。ロンダ副隊長が様子を見てくるようにと言われまして」
隊員の大きな声が聞こえた。
「ああ、もうすぐ支度できる。すぐに行くと伝えてくれ」
「はい、わかりました」
隊員はすぐに部屋を出て行った。
「さあ、急いで」
「ええ、レオナルドは先に行ってて」
レオナルドは先に服を着た。
「瑠衣、やっぱりもう一度明日に出発を遅らせて欲しいと頼んでみる。俺も一緒に行きたい」
「ええ、でもあまり無理はしないで、わたしが行くって言ったんだから」
「言わなくてもたぶん連れていかれるさ」
「そうかもね…」
瑠衣は下着を着けながら部屋を出て行くレオナルドを見送った。
今度は教えてもらった通りにシフトドレスを着てからコルセットを付けた。その上からワンピースを着ると、鏡の前に行って髪を整えた。
彼の付けたしるしをそっと鏡に映してみる。確かに彼の歯形がくいこんだあとがある。少し血が出たみたいだったが、もう出血はしていなかった。
きっとこの傷はあとが残るのだろう。瑠衣は襟をきちんと止めてその後が見えないか確かめてみる。
幸い肩口なので服を着ていれば、見えることはなさそうだ。
瑠衣はほっとした。もし国王に見つかればレオナルドに危害が及ぶかもしれないから‥‥
あっ!わたしったら‥‥なんてことを‥‥
あの言い伝えが、愛し合ったふたりがどうなるかわかってたくせに…どうしよう…
不意に不安が押し寄せてくる。レオナルドの身にもし何かあったら?
こうなったらどうしても国王に会いに行くしかないわ。
彼を守るのはわたしの指名だから。
瑠衣が執務室に入るとちょうどレオナルドが帰って来た。
「ああ。瑠衣すごくきれいだ」
レオナルドは瑠衣に近づいておくれ毛をすくいあげる。うなじに手をまわされて唇を奪われる。
あっという間に瑠衣は唇を開いた。レオナルドは素早く瑠衣の中に舌を滑り込ませ瑠衣の口腔内を探り始める。互いの舌はもつれあうように絡み合い、すぐに熱くとろけて行く。
瑠衣はとろけていく体とは逆に”ああ…レオナルド…あなたを愛してしまった。わたしはあなたを絶対に死なせたりしない。必ずあなたを守るから”
あまりに強い思いは彼の腕をしっかり掴んでいたらしく唇を離した時、瑠衣の手は痺れていた。
「それで、願いは聞き入れられたの?」
「いや、無理だった。ロンダは一度言い出したら聞かない。あいつはどうしようもないほど頑固なんだ。でもこっちが片付いたら俺もすぐ後を追うから心配するな。瑠衣は必ず守るから」
「いいのよ。わたしが言ったんだから、責任はとるわ。それに国王だってそんな無茶は出来ないはずでしょ」
「だといいんだが…そうだ!プリンツ王国との和解策を考えてみたんだ。これにまとめてあるから、これを国王に見て欲しいと渡してくれ。国王だって戦争は避けたいはずだ」
レオナルドは書簡を瑠衣に渡した。
「ええ、きっとそうだわ。この書簡を国王に渡して考えてもらうように話をするから」
「ああ、頼んだよ瑠衣」
ふたりはやっと執務室を出て表玄関に向かった。
玄関前ではロンダ副隊長が待っていた。
近衛隊の隊服である銀色のマントを羽織って出発はいつでもできると言わんばかりにピカピカのブーツを踏み鳴らしていた。
「ロンダ副隊長、お待たせして済まなかった」
「ああ、やっと支度が出来ましたか。聖女様、お加減はどうですか?」
レオナルドには見向きもせずロンダは瑠衣の方を見た。
「はい、おかげさまで医師も心配ないだろうと」
「それは良かった。なるべく馬車を揺らさないよう行くつもりです。今からだと、途中のエサムあたりで宿泊することになるかと思います。王宮のあるエルドラには明日の昼過ぎ頃に着く予定ですので、馬車の中でゆっくりなさってください」
「ありがとうございます。ロンダ副隊長、ではよろしくお願いします」
ロンダは手を出した。
瑠衣はあっと驚いたが、それが礼儀だと気づいた。彼の手の上に自分の手を乗せる。
ロンダは上機嫌で瑠衣を屋敷の前に止めてある馬車まで案内した。
馬車は黒い色で縁が金で縁取られているとても綺麗な馬車だった。
それに驚いたことにそのまわりには、馬にまたがった近衛隊の兵士が6人いた。どの兵士も騎士隊服を着て銀色のマントを羽織っている。
「これは?」
「大切な聖女様をご案内するのです。もしもの事を考えれば少ないくらいですが、安心してください。どれも優秀な兵士ですから」
「ええ、もちろんです」
レオナルドが瑠衣に近づいてきた。馬車のドアを開けて中に半分体を突っ込むようにして話をする。
「瑠衣くれぐれも気を付けて、部屋には鍵をかけて用心するんだ」
「ええ、あなたもねレオナルド」
「ああ、これは昼食だ。食べる暇もなかっただろう…」
レオナルドが籠に入った食事を渡すと顔が赤らんだ。
「ありがとう…」
瑠衣はレオナルドの頬にそっとキスをした。
レオナルドは瑠衣の手の甲をそっと握るとその上に熱い唇を押し付けるとドアを閉めた。
ああ、こんなに彼と離れるのが辛いなんて…
目指すは王宮のあるエルドラ。馬車で一日半ほどかかる。
「それではレオナルド隊長失礼する」
「ロンダ副隊長、道中お気をつけて」
馬車は6頭の馬に乗った兵士たちにぐるりと囲まれて出発した。
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