我慢の限界が来たので反抗したら人生が変わりました

はなまる

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1朗報です。婚約者の裏切り発覚

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 「ソルティ嬢話がある」

 そう言って呼び止められた。

 相手は私の婚約者であるアルフォン第5王子殿下。

 それにしてもいつもと変わらない何とも素っ気ない言葉だ。

 思わずアルフォンそれが婚約者にかける言葉なの?まあいつもの事ね。と喉の奥で声が不服を唱える。

 私はお辞儀をしながら(何の用?さっきまで王妃教育だったのよ。言っとくけど一応。だから私疲れてるの…)と更に心の中でつぶやく。

 王子の妻となるからにはきっと王妃になる予定でなくても王族の一員としての教育があるらしい。

 無駄な事をと私は思っている。だってアルフォン殿下が王になることは…無理無理。


 それに彼が私を呼ぶ時と言ったらろくな用ではない。

 国王主催の夜会の出席だったり、隣国との晩餐会など、絶対に婚約者と同席するしかない催し事。

 まあ、これは私も仕方なく同席するがすぐに彼はいなくなる。

 酷いのは、デートと称してする彼の親しい女友達の誕生日プレゼント選びや世話になった友人の店がオープンするから一緒に出掛けようなどと言う誘い。

 もちろん相手は女性。関係はと聞くと学園時代のクラスメイト程度の相手。そんな相手でも私よりはよほど大切な相手らしく付き添った私の目の前でいちゃつく始末。

 それでも義務は果たしているって言うあの顔。許せない!!


 私はこんな愚男王子。アルフォン殿下と15歳の時に婚約している。

 もちろん政略的な要因でしかない。

 私はこの国の第4公爵家のひとつ。ヴィオレッテ公爵家の長女。

 見た目は灰白銀色の髪薄薄紫色の瞳。人は良く髪色を白金のようだけどよく見ると少し違うと言う。

 顔立ちは平凡。良くも悪くもないと言えばいいのだろうか。

 目が母親に似ているらしく目は大きいが少し垂れ目、笑うと可愛いと言われるが自分ではあまりいいとは思っていない。

 彼の婚約者に選ばれた理由も家柄と年令が彼と釣り合うかららしい。

 そんな理由かと言いたくなるが…何しろ王直々の頼みとあれば断ることは出来ない。

 父は第4王子との婚姻を期待していたがアルバート第4王子は結婚する気はないとはっきり断言していてさらに自身を鍛える旅に出ると他国を旅しているらしい。

 そんなわけでアルフォン殿下との婚約話が舞い込んだ来た。

 彼はこの国の第4王妃の子供で王位継承権5番目の王子だ。

 ただしお母様はジャスミンと言う平民出身の方。

 現国王はそれはそれは次から次に女性を渡り歩く蝶のような男性で正妃である第1王妃から第4王妃まで、そのほかにも諸々の呼び名の女性がいるが、さすがに側近たちからこれ以上王妃はと言われたらしく王妃と名がつくのはアルフォンを産んだ第4王妃のジャスミン様までだった。

 まあ、アルフォン殿下くらいになると婚約者選びも妥当な女性なら誰でもいいと思われたのだろう。

 彼はすでに19歳になっていた。

 今までの王子の婚約者選びはもっと早かったと聞いた。


 これまで生まれた王の子供はみな王族しか持たない白金の髪色を持っていた。

 これだけでも国王がどれだけ強い子種を持っているかわかるというものだろう。

 アルフォンも例外ではなく紛れもない白金の髪色に母親譲りの蒼翠色の瞳を持った見目麗しい男性だった。

 貴族のご令嬢からはその美しさからアルパード王国の至宝。神の最高傑作などと謳われている。

 見た目だけ。

 それにもまして彼は国王に似たらしい残念な下半身を持っていた。

 だからまたの名を女泣かせの王子とか残念な王子とかの呼び名もある。


 学園に通い始めると高位貴族の友人たちと遊び歩き、群がる女生徒と好き放題の付き合いを繰り広げたという伝説も聞いた。

 そのせいでこれまでどれほど私が嫌な思いや関係を持った女性からの嫌がらせを受けて来たか…

 だから私はアルフォン殿下を極力避けているしお茶会などもふたりきりになることはないようにしている。

 だからまだ口づけさえ許してはいない。

 いや、彼は義務のように近づいて来るが私が拒否している。

 女性にはお困りではないでしょうと言って。

 結婚はするけど白い結婚でもいいと思っている。

 子供はいなくても王族の跡取りには困らないし彼も子煩悩にはとても見えないからである。

 こちらから婚約破棄できない以上もう諦めるしかないのだから…




 「はい、何でしょうか?」

 王宮の廊下でそう言われてやっと渋々返事をする。

 「取りあえず部屋に入ってくれ」

 「はい、では、リルも一緒に入ってちょうだい」

 私は慌てて侍女のリルに同席を求める。

 「待ってくれ。話はふたりきりでしたい」

 「では、扉を開いたままでお願いします」

 「いや、聞かれたくない話だ。扉は締めてもらう。心配するな。ソルティ嬢君を襲ったりしない」

 ここまで言われるとそうするしかない。

 「わかりました。ではそうします」

 「ああ、すまない」

 (ああ、嫌だ。この男とふたりきりになるなんて…もし触られそうになったら大声出しますから)


 王子の私室である部屋にはすでにテーブルの上にお茶が用意されていた。

 「まあ、かけてくれ」

 「はい」

 向かい合わせにアルフォンが座る。少しほっとする。

 喉が渇いていたので早速用意されたお茶に手を伸ばしソーサーを手にするとお茶を口に運ぶ。


 「実は…婚約を解消したい」

 ぶっ!思わずお茶を吐き出しそうになった。

 それをぐっとこらえお茶を喉の奥にぐびりと流し落とす。そしてやっと声を上げた。

 「えっ?」(いいんですか?ほんとに?)

 「すまない。君の期待を裏切ることになってしまって…」

 驚いた様子を見せたせいでアルフォン殿下は勘違いしたらしい。

 (いえ、違います。私はうれしくて仕方ないんです)

 私はうれしくて頬が緩みそうになりとっさに俯く。

 「すまないソルティ…実は…言いにくいんだが…ジャネットが妊娠して」

 「げっ!にんしん?」

 思わず令嬢とは思えない声が出た。

 (そうだろう。貴様のだらしのない下半身はいずれそんな事を引き起こすだろうと思っていた。何てこと。すでに殿下を貴様呼びとは…)


 「驚かせてすまないソルティ」

 そこでアルフォン殿下は立ち上がり急いで私の隣に座り私の手を取った。

 はじめて彼にこんなふうに触れられた。いや、ダンスの時は仕方なく手を取られたか…

 だが、あまりのうれしさでそれも気にならない。

 「ああ…君の手が震えている。俺はなんてことを…」

 口ごもりその顔を傾け私の手に頬ずりさせる。

 「何するんです!放して!人を呼びますよ」

 「いや、そんなつもりはない。ただ、君を傷つけて悪いと思っただけだ」

 アルフォン殿下はすぐに離れてまた向かいの席に座る。

 「ソルティ…婚約解消をしてくれるか?」

 (はい、喜んで)と言いたかったがそれは出来ない。

 「私の一存ではどうにもなりません。殿下から国王にお話していただくしかないのでは?この婚約は王直々のお話でしたので」

 「ああ、父には話をするしかないだろう。何しろ子供が出来たのだ…はぁぁぁぁ気が重い…」

 アルフォン殿下は果てしないほど長いため息を落とした。

 「ええ、私も残念ですが婚約は解消するしかありませんね」

 「ああ、すまないソルティ嬢」

 「では、失礼します」

 私は俯き加減で静々と部屋を後にした。

 ただ、ただ私はにんまり頬が緩みそうになるのをこらえるのがすごく辛かった。

 部屋を出ると思いっきり頬をつねった。(痛い!夢じゃない)





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