枯渇聖女は婚約破棄され結婚絶対無理ランキング1位の辺境伯に言い寄られる

はなまる

文字の大きさ
1 / 31

1月の精霊

しおりを挟む

 私はニルス国の西にあるチェスナット辺境領の隣にある小さなグラマリン男爵領にある聖教会の神官の娘だ。

 まあ、娘と言っても母の連れ子だったので父は義理の父に当たるのだけど。

 母は隣国のキアラルダ帝国の人間だったが反乱がおき難を逃れてこのニルス国に逃れたと聞いている。

 私はまだ乳飲み子で命からがらこのグラマリンという土地の聖教会に辿り着いた。

 そこで優しくしてもらった今の義理父ローダンと結婚をした。



 そして幸せに暮らしていたが、私が10歳の時私と母が薬草を摘みに行った近くの森で魔物と遭遇。

 母は急いで私を連れてそばにあった月色樹に持っていた小さなナイフで傷をつけると言った。

 「いい?フレイシア。この木には月の精霊が宿るって言われているの。だからこの樹の樹液を飲めばきっと月の精霊が助けて下さるわ。安心して、さあ、あなたはこの祠の中に隠れて絶対に出て来てはだめよ。わかった?」

 「うん、早く母様もここに入って」

 「母様は大丈夫。いいから安心してここに隠れているのよ」

 「かあさま‥」

 母はそう言うと走って月色樹から走って距離を置いた。

 私は恐る恐る母の行く先を目で追った。

 「ぎゃおぉ~!!うがぁぁぁぁ~」

 大きな真っ黒い魔物が真っ赤な目を見開き大きな口を広げて母様に襲い掛かった。

 「かあさま~」

 私は祠から出ようとすると金色の光が私を包み込んだ。

 (今、出てはだめ。母様と約束したでしょ?)

 そんな言葉が脳内で響いた。

 「あなたは誰?お願い母様を守って‥」

 私はそう願ったが何の返答もなかった。

 ただ、目の前で魔物に襲われ倒れる母を目の当たりにして私はそのまま意識を失った。



 それから、魔物に引き裂かれ真っ赤に染まる母様の姿、ぎゃあぁあと母様と思えないような凄まじい悲鳴に目が覚めた。

はっと辺りを見回すと自分の部屋のベッドの上にいた。



 急いで起き上がり部屋を飛び出した。

 母様は無事だろうか?魔物は?私はどうやってここに?

 色々な事が脳内を駆け巡った。

 急いで教会の敷地にある屋敷の一階に駆け下りて(母様。どこ?かあさま~)と叫んで回った。

 母様の寝室の扉を叩くとすぐに父が寝室から出て来て私を抱きしめた。

 「フレイシア。母様はここだ。さあ、早く顔を見せてあげるんだ」

 寝室に入ると母様は頭や腕に包帯を巻かれて眠っていた。

 「‥‥(母様、しっかりして。フレイシアはここだよ。ねぇ、かあさま)」

 私は口をはくはくさせていたが声が出ていなかったらしい。

 「フレイシア、声が出ないのか?」

 「‥‥(えっ?)」

 「フレイシア?」

 「‥‥‥(父様?私‥声が出てない!)」

 やっとその時になって声が出ていない事に気づいた。

 「ああ、可愛そうにフレイシア。きっと魔物に襲われた母様を見てショックを受けたんだ。大丈夫。そのうち声は出るようになるから、さあ、母様の手を握ってあげるんだ」

 私はショックを受けながらも今は母様の方が大事だと気づき父様が置いてくれた椅子に座って母様の手を握りしめた。

 「(母様、どうか、どうか元気になって。月の精霊様、どうか私を助けてくれたように母様を助けて下さい)」

 心の中で何度も何度もそう祈った。

 すると淡い光が手のひらに現れた。

 これはもしかして月の精霊の?

 あの時母様が言っていた事が思い浮かぶ。

 私は急いでその光を母様の傷に当てた。傷はほんの少し治りかけたが私の治癒力が弱すぎて傷を治しきる事が出来ない。

 

 父様は私が発する光を見て驚いたので私は母様が月色樹の樹液を飲ませた事やあの樹には月の精霊が宿ったのではないかと教えた。

 「そうか。セピナが‥フレイシアいいかい。この力の事は誰にも知られてはいけないよ。このニルス国では魔法を使えるものは貴重なんだ。こんな力を持っていると分かればきっと王都の教会に連れていかれるからね。父様と約束してくれるね?」

 私はものすごく真剣な顔をしてそう言った父様の言うことを素直に受け入れた。



 何度も母様に魔力を注ぐが母様の具合はあまり回復しない。落ち込む私に父様が優しく教えてくれる。

 「いいかいフレイシア、魔物に受けた傷には悪い瘴気が含まれているんだ。その毒を取り除くにはものすごい魔力が必要で子供のフレイシアにはまだ無理なんだ。だからフレイシア‥きっと母様は元気になるから」

 「‥(うん、きっと助かるよね)」そう思いながら私は父様に抱きついて泣いた。

 

 そうこうしているうちに母様は身体中に毒が回りそれから数日後に帰らぬ人となった。

 泣きじゃくる私の脳内に小さな声が聞こえた。

 (私の力が弱くてお母様を助けれなくてごめんなさい)

 (あなたはだぁれ?)

 (私は月の精霊のキア。あなたが私を呼んだから‥)

 (じゃあ、月色樹の?)

 (ええ、でも、私すごく弱い加護しかあげれないから)

 (そうよ。あなたがお母様を殺したんだわ。私の中から出て行って!二度と私に話しかけないで!)

 私は母様を失った悲しみのあまりキアにひどいことを言ってしまった。



 それでも私には少しだけど人を癒す力を失わなかった。

 だからそれからも父様と一緒に教会で出来る限り怪我や病気の人の手助けをして来た。

 この力の事をこの辺りの村の人は誰にも漏らす人がいなかったので私は月の精霊キアの加護をみんなの為に使った。まあ、病気も怪我も相変わらず完全に治す事は出来なかったが傷の治りが良くなったり病気のひどくならないのでみんなからは有難がられていた。

 でも、あれからキアが話しかけてくることは一切なかった。

 私、精霊に嫌われたのかな‥でも、全く見限らわけでもないの?

 そのままキアは現れず私もどうしていいかもわからずそのままになってしまう。






 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結】私が誰だか、分かってますか?

美麗
恋愛
アスターテ皇国 時の皇太子は、皇太子妃とその侍女を妾妃とし他の妃を娶ることはなかった 出産時の出血により一時病床にあったもののゆっくり回復した。 皇太子は皇帝となり、皇太子妃は皇后となった。 そして、皇后との間に産まれた男児を皇太子とした。 以降の子は妾妃との娘のみであった。 表向きは皇帝と皇后の仲は睦まじく、皇后は妾妃を受け入れていた。 ただ、皇帝と皇后より、皇后と妾妃の仲はより睦まじくあったとの話もあるようだ。 残念ながら、この妾妃は産まれも育ちも定かではなかった。 また、後ろ盾も何もないために何故皇后の侍女となったかも不明であった。 そして、この妾妃の娘マリアーナははたしてどのような娘なのか… 17話完結予定です。 完結まで書き終わっております。 よろしくお願いいたします。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。 しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。 「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」 屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え―― 「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。 「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」 愛なき結婚、冷遇される王妃。 それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。 ――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。

赤毛の伯爵令嬢

もも野はち助
恋愛
【あらすじ】 幼少期、妹と同じ美しいプラチナブロンドだった伯爵令嬢のクレア。 しかし10歳頃から急に癖のある赤毛になってしまう。逆に美しいプラチナブロンドのまま自由奔放に育った妹ティアラは、その美貌で周囲を魅了していた。いつしかクレアの婚約者でもあるイアルでさえ、妹に好意を抱いている事を知ったクレアは、彼の為に婚約解消を考える様になる。そんな時、妹のもとに曰く付きの公爵から婚約を仄めかすような面会希望の話がやってくる。噂を鵜呑みにし嫌がる妹と、妹を公爵に面会させたくない両親から頼まれ、クレアが代理で公爵と面会する事になってしまったのだが……。 ※1:本編17話+番外編4話。 ※2:ざまぁは無し。ただし妹がイラッとさせる無自覚系KYキャラ。 ※3:全体的にヒロインへのヘイト管理が皆無の作品なので、読まれる際は自己責任でお願い致します。

【本編完結】召喚? 誘拐の間違いでは?

篠月珪霞
恋愛
「…え」 まず聞こえたのは、成功だー!!といういくつもの歓声。それ以降は幾人もの声が混じりあい、何を言っているのか分からなかった。 私、白井瑠璃は、いつものように、出勤するために自宅のドアを開けただけだった。 いつものように、起床し、準備して、仕事が終われば帰宅し、そうした普通の、変わりない毎日を過ごすはずだった。 過去形になったこの日を、きっと忘れることはない。

兄の婚約解消による支払うべき代償

美麗
恋愛
アスターテ皇国 皇帝 ヨハン=シュトラウス=アスターテ アスターテ皇国は周辺国との関係も良く、落ち着いた治世が続いていた。貴族も平民も良く働き、平和で豊かな暮らしをおくっている。 皇帝ヨハンには 皇妃に男の子が一人 妾妃に女の子が一人 二人の子どもがある。 皇妃の産んだ男の子が皇太子となり 妾妃の産んだ女の子は降嫁することが決まっている。 その皇女様の降嫁先だった侯爵家の とばっちりを受けた妹のお話。 始まります。 よろしくお願いします。

誰でもイイけど、お前は無いわw

猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。 同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。 見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、 「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」 と言われてしまう。

処理中です...